バイオの研究は、「成熟商品」を「成長商品」に変身させる力を持つ。山口県下関市にある老舗の醤油醸造、ヤマカ醤油は、フグ、クジラ、ウニを原料にした“かつてない醤油”を開発し、都内で開催したフェアで大人気を博した。
特長は、まさしくバイオの研究を重ねて、抗酸化機能の高い商品として完成させたことだ。地元の水産大学校と共同開発し、分析には東京大学や浜松ホトニクスも協力している。ヤマカ醤油の河村幸恵常務と小俣文登研究室長に、バイオ研究に踏み込んだ背景と展望を聞いた。
―― ヤマカ醤油は2009年6月、フグ、クジラ、ウニを原料にした醤油を発売した。消費者からの反響はどうか。

河村 6月に都内の高島屋新宿店で開催したフェアでは、フグ醤油は用意した300個をすべて売り切った。ウニやクジラの醤油も同様にすべてが売れた。
100ミリリットルの価格は950円から1000円ほどで、量産されている一般の醤油と比べると単価は30倍もするが、買い求める方は多く、消費者の関心の高さを肌で感じた。
醤油離れの壁を超えたい
―― 老舗の醤油醸造会社が、大学と共同開発したところがポイントだが、踏み込んだ研究に力を注ぐことにしたのは、なぜなのか。
河村 背景にあるのは、醤油離れだ。今や、普通の醤油を持っていって、量販店に「これ店頭に置いてくれませんか」とお願いするだけでは取り合ってくれない。大豆と小麦を原料に今までと同じ醤油を作っていては限界がある。
―― 醤油業界では、地場企業が全国にあり、それぞれが地域で一定のシェアを占めてきた。地元の嗜好に合わせた醤油作りの強みがあっても、地場企業の置かれた事業環境は厳しいということか。
河村 実際、状況はかなり厳しい。家庭向けならば地域の醤油メーカーの商品は売れるが、加工食品メーカーや弁当の製造業者、スーパーなどは、大手メーカーの醤油しか取り扱わない。
家庭向けでも、直接、食品に振りかけられるタイプの商品が増えている。つまり、従来は醤油をかけていた総菜に、新しいタイプの麺つゆやポン酢、ドレッシングを使う場面が増えている。醤油メーカーとしては、付加価値のある商品開発をしないと勝負できない。
―― フグ醤油やクジラ醤油の開発には、バイオ領域の研究者が参加した。その狙いも、まさしく付加価値を生み出そうという点にあったのか。
小俣 そういうことだ。地元の水産大学校食品科学科で食品の抗酸化機能を研究している原田和樹教授が醤油の研究を始めようとして、当社との付き合いが始まった。
当社も2004年から、山口県秋穂(あいお)で養殖されたエビを使った醤油の研究を進めていた。酵素処理をして塩で漬け込んだところ、面白い味になることを発見していた。水産大学校との共同研究話はちょうどいいタイミングで舞い込んできた。
当社は醤油醸造用の麹を利用して、生産技術の面で貢献できると考えた。そして2007年にフグ、クジラ、ウニの素材を使った新しい醤油の開発に着手した。
魚醤の進化を狙う
―― 取り組んだ研究とはどういったものなのか。
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