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アメリカは少し優しい国になる

ポール・クルーグマン教授の予言

  • 水野 博泰

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2009年9月28日(月)

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自他ともに認めるリベラル左派。現代アメリカを代表するケインジアンである。ジョージ・W・ブッシュ政権時代には容赦なき批判の急先鋒に立った。バラク・オバマ大統領の誕生を喜ぶが、政治的バランスを取らざるを得ない新政権を強い口調で叱咤激励し、左側に引き寄せる役を買って出る。「金融危機後のアメリカ」は、「ロナルド・レーガンの亡霊」からようやく解放され、少し優しい国になれると期待する。

(聞き手は、ニューヨーク支局長=水野 博泰)

―― バラク・オバマ政権の経済政策に対して、かなり厳しい注文をつけていますね。オバマ大統領は間違っているのですか。

ポール・クルーグマン(Paul Krugman)氏
米プリンストン大学教授。1953年生まれ。77年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号を取得。米スタンフォード大学、MIT教授を経て2000年から現職。1999年から米ニューヨーク・タイムズ紙でコラムニストとしても活躍している。2008年ノーベル経済学賞を受賞した。
(写真:常盤 武彦 以下同)

クルーグマン:いえ、オバマの経済政策はほぼ正しい方向に向かっています。ただし、もっと強化すべきです。それが私の主張です。

 オバマ政権がバカでもなく狂ってもいないことは朗報で、前政権からの大きな進歩です。経済の仕組みについてはそこそこ理解し、何をすべきかも分かっています。ただし、必要な政策の半分しか実行できていない。まあ、これが政治というものですが、やろうとしていることのすべてに対して議会の承認を得られないのです。

 もっと野心的に取り組むべきですが、方向性は悪くない。医療保険制度改革に成功し、金融規制の強化を成し遂げれば快挙です。個人的には、医療保険制度改革は実現するけれども金融規制強化は中途半端に終わると見ています。

環境政策への過信は禁物

―― 「自分はオバマ政権を左側(リベラル)から引っ張っているのだ」と言っていますね。(参考記事:「ノーベル賞学者が謝罪?」)

 オバマ政権に対しては常に「自由な競争」「自由な市場」を求める(右側からの)圧力がかかっています。景気刺激策を打ち出した時、メディアの論調は「巨額すぎる」という批判一色で染まりました。しかし、経済学的に見れば「少額すぎる」のです。私はニューヨーク・タイムズ紙に持っている自分のコラムで「こんな額では全く足らない」と逆の批判をしましたが、大新聞のコラムとしては異色だったと思います。医療保険制度改革への逆風も強いのですが、これも断行すべきです。

―― 前政権からは自動車産業の問題も引き継ぎましたが、クライスラーとゼネラル・モータース(GM)の救済処理に至る手腕は「お見事」だったと言えるのではないでしょうか。

 その通りです。「壊滅」は避けられましたし、国民の税負担も実はそれほど大きくなさそうです。数十万人を雇用する大企業が景気後退の最中に経営破綻するのを黙って放置するわけにはいきません。少なくとも生き残るチャンスは与えるべきです。あの状況ならば、クライスラーとGMの再生に賭けてみる価値はあったと思います。

 今のところ、うまくいっています。データを見ると、これから2~3カ月の間に自動車販売が回復に向かう兆しがあります。時間を稼ぐという点では成功したと言っていいでしょう。

―― グリーン・ニューディールについてはどうですか。

 過大評価は禁物です。環境政策によってすべての問題を解決できるわけではありません。

 公共投資の対象としては効果的です。旧来通りの道路や橋の建設よりもましです。二酸化炭素排出のキャップ・アンド・トレード制度を確立できれば、経済に良い効果をもたらすでしょう。制度が明確になれば、企業は今から投資を始めます。今、投資が増えることは非常に重要です。グリーン・ニューディールで経済を回復させようというのはあまりにも楽観的ですが、環境対策とマクロ経済政策を組み合わせることで相乗効果を上げることはできます。

巨額ボーナスが生み出した“見せかけの利益”

―― 金融機関への規制強化でウォール街は変わるでしょうか。

 今のところ、全く変わっていないですね。それこそが問題です。企業が利益を追求することは悪いことではない。しかし、常識外れの巨額ボーナスが良くない。

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