「すべては倉庫番が知っている」

郵政民営化見直しが「第2のJAL」を生む

現場は混乱、事態は悪化の一途

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2009年9月29日(火)

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 郵政民営化の見直しを政策課題の“1丁目1番地”に掲げる国民新党の亀井静香代表が郵政・金融担当相に就いた。この組閣人事を最も喜んでいるのは、全国郵便局長会(全特)だろう。

 全特は先の衆院選で、反り目弘国専務理事を国民新党の北陸信越ブロック比例2位に送り込み、同1位の綿貫民輔国民新党前代表の支援に回ったが惨敗。しかし、選挙には負けても、政治的には勝ちを拾った格好だ。

 一方、筆者の知る限り、最も落胆しているのは、民間企業との市場競争に意欲を燃やしていた郵政内のスタッフたちだ。公社化以降6年余りにわたって積み上げてきた仕事を無にされる恐れが出てきた。政権交代で新政府への対応に追われながらも脱力感は否めない。

統合計画見送りが招く大きな損失

 日本郵便の「ゆうパック」と日本通運の「ペリカン便」を、両社が共同出資で設立したJPエクスプレス(JPEX)に統合するという計画も、白紙に戻される可能性を排除できなくなってきた。

 10月1日に予定されていたブランド名とオペレーションの統合は、前政権の佐藤勉総務相が選挙直後の9月8日に認可を見送っている。

 当然ながらJPEXでは、ゆうパックとペリカン便を10月1日から一緒に運営する前提で、情報システムの構築、物流拠点や配送網の手配、業務プロセスの整理などを進めてきた。

 関係者によると統合後のブランド名も、ゆうパックをそのまま使うことで決まっていたという。当初はペリカン便の名前だけが消えることに日通側が反発し、新しいブランド名を打ち出すと伝えられていたが、両者間の折り合いがついたようだ。

 「我々はヤマト運輸や佐川急便とも十分に戦える。具体的な戦略も練り上げてある」と、これまでJPEXの動向を悲観的に解説する記事が多かった筆者に対し、熱っぽく反論する内部関係者もいて、巻き返しに向けて士気は高まっているように感じていた。

 ところが、統合まで1カ月を切るタイミングで認可が見送られてしまったことで現場は今や大混乱に陥っている。

 佐藤前総務相としては、政権交代の直前に重要な判断を下し、後から責任を問われることを避けたかったのだろう。鳩山邦夫元総務相のドタバタの辞任劇を受けて急遽登板した立場を理解できないわけではない。

 しかし、判断の留保による先送りは責任逃れと言わざるを得ない。かつ最悪の選択だったと筆者は考えている。

 佐藤前総務相は、認可を見送った理由として、(1)準備不足による現場の混乱が避けられないこと、(2)郵便業務への影響が不明確であること、(3)JPEXの収支が計画よりも下振れした場合の対応に具体性が無いこと、の3つを挙げている。

 しかし、この時期に担当大臣が認可を見送ることが、どれだけ現場を混乱させ、郵便業務に悪影響を与え、JPEXの収支計画を下振れさせるか、ということは自覚していないようだ。

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著者プロフィール

大矢 昌浩(おおや・まさひろ)氏

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。2004年4月〜2007年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。



このコラムについて

すべては倉庫番が知っている

原材料の調達から工場での加工、店舗までの配送と、企業や産業のあらゆる活動を“裏方”として支える物流。ここからは、表層からはうかがい知れない経営や経済の動きが浮かび上がってくる。そこから見えてくる課題は、単なる物流改善に伴うコスト削減にとどまらず、企業に構造改革を促すテーマである。10年以上も物流業界を取材してきた筆者が、“倉庫番”だから知り得る日本企業の実像をリポートする。

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