疲弊する日本の小売業。イトーヨーカ堂は2009年8月中間決算で営業損益が43億円、イオンも2009年2月期決算で総合小売事業の営業利益が約2割減と、大手が落ち込んでいる。これまでのような規模拡大の追求は限界を迎え、終わりのない低価格競争に突入した様相を呈している。
ところが、昨年秋のリーマンショックをもろともせず、増益基調にある食品スーパーマーケットがある。関東・中部・近畿に約50店舗を抱える成城石井だ。その取り組みを紹介した「不況下でも利益を2倍にする売り方」は、多くの読者の関心を集めた。
本コラムでは、その成城石井を率いる大久保恒夫社長が自ら筆を執る。大久保社長は、イトーヨーカ堂で業務改革を担当し、「ユニクロ」のファーストリテイリングや「無印ブランド」の良品計画などの快進撃をコンサルティングとして支え、九州の大手ドラッグストアであるドラッグイレブン(福岡県大野城市)の事業再生に携わった経験の持ち主だ。モノを売る喜びと、そこに潜むビジネスチャンスを解き明かしていく。
米国では予想外の業種の就職人気が高い。驚くなかれ、米国では小売業の就職人気が高いのである。米ビジネス誌『フォーチュン』がアメリカで最も働きたい企業100を毎年調査し発表しているが、2008年にはベスト20に小売業が3社も入っている。小売業は金融機関にもヒケをとらない人気である。
その小売業の中でも人気が高いのが食品スーパーマーケットである。ニューヨーク州を中心に地域密着と顧客ニーズへの対応を徹底するウェグマンズが第3位、サンフランシスコ周辺でたった10店舗しか出店していないナゲットマーケットが第12位、健康志向で違いを出して成長しているホールフーズが第16位である。
日本の売り場は世界に誇れるのに・・・
では、日本はどうだろう。小売業の就職人気は惨憺たるものである。景気が良くなり、他業種の採用が増加すると小売業は採用人数を確保するのに苦労する。就職しても、小売業なんかに就職するのか、といった目で見られることもある。
なぜ日本の小売業は人気がないんだろう。「給与が安い」「仕事がきつい」「土日に休めない」とかいろいろ考えられるが、私は「社会的評価が低い」ことが一番の問題だと思っている。
生産から物流、在庫、販売に至る流通構造の中で、小売業の果たしている価値は何だろう。小売業は販売業である。かつての高度成長期は消費者の需要が大きく、まだまだ小売業が発展途上で、メーカーがどんどん生産する商品を販売する売り場面積が足りなかった。
売り場面積を持っていることに価値があり、ダイエーに代表される総合スーパーなどがどんどん出店し、売り上げ、利益を拡大させていった。しかし、成熟社会となり、消費者の需要は縮小していく中で、小売業は出店を繰り返し、売り場面積は拡大した。
売り場面積はもう余っている。売り場面積を持っている価値は大幅に低下しているのである。
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成城石井社長。1956年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年にイトーヨーカ堂入社。経営トップ直結の「業務改革」の主要メンバーとして構造改革に取り組む。その後、プライスウォーターハウスコンサルティングのシニアコンサルタント、財団法人流通経済研究所の研究員を経て、90年7月、流通コンサルティングを手がけるリテイルサイエンスを設立。ファーストリテイリング(ユニクロ)や良品計画の経営改革を担当する。2003年9月にドラッグイレブン代表に就任、2007年1月から現職。







