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金か出世か? あなたの正当なお値段は

給料以外にも働いた報酬はある

2009年10月1日(木)

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 世の中すべては、カネなのか?
 「そうさ、カネだ。カネさえあれば何でもできる。人は裏切るけど、カネは裏切らない」
 「いいや、カネじゃない。カネで買えないものこそが、本当は大切だ」

 私には、「そうさ、カネだよ」と言い切るほどの度胸もないし、「いいや、カネじゃない」と言い切れるほど道徳的に生きていける自信もない。できればお金は欲しいし、「どれだけ欲しいか?」と聞かれれば、「できるだけたくさん」とおそらく答える。ただ、「カネ儲けして何が悪い」と平然と言い放つ人にはなりたくない、いや、なってはいけない、と自分の中の倫理感が歯止めをかける。

 たかがカネ、されどカネ。
 以前、「何のために働くのか?」の回で、「人間が働くことに求めているのは、“金儲け”だけではない。目の前の“お金”だけに奔走していると、働くことの真理を見失ってしまう」と書いたが、時代の趨勢は「やっぱりカネ」なのか。

 そこで質問です。
 「あなたは、自分の労働に対する正当な報酬は、いくらか?」と、考えたことはありますか?

 「若い頃、もらい過ぎだったといえばそれまでなのかもしれないですが、入社当時の年収とあまり変わってないのが現状です。会社は合併して人員削減を断行し、今じゃ切るところがないくらいの厳格なコスト管理。僕たちが入社した頃、当たり前のように使っていた接待費は、今じゃ無駄使い。おまけに残業代はカット。でも、9時5時で終わるわけがないからサービス残業だけじゃなく、フロシキ残業(家に仕事を持ち帰る)もするわけです。昔の3倍は働いているのに、給料は下がっている。どこにもぶつけようのない怒りを感じています」と語るのは、大手製造業に勤める40代のA氏だ。

 「今までバイトや派遣社員に任せていた仕事を僕たち正社員が埋めるわけで、当然、仕事量は増えます。もちろんそれだけじゃない。会社は生産性を向上させるよう今まで以上の高い要求をつきつけますから。それができないと、自分の身だって危うくなる。結局は会社の言いなりです。おまけに賃金20%カットだし…」。

 コスト削減やワークライフバランスというもっともらしい名目の下に、残業を禁止する会社は少なくない。

 厚生労働省が毎月行っている勤労統計調査でもその傾向は顕著で、平成20年の10月~12月の時点で残業時間は前年同期比マイナス20%、今年に入ってからは前年同月比マイナス45%程度で推移している(製造業)。

 普通、労働時間が減れば仕事は楽になるはず、だ。ところが、コスト削減が目的であるが故に
・生産性は高めよ
・リストラされた人の仕事を補え
と、会社からの要求は高まるばかりだ。

 その結果、A氏のようにサービス残業やフロシキ残業が増え、統計値には反映されない“長時間労働者”は後を絶たない。特に、会社にロイヤリティが高い、会社にとって“使い勝手のいい社員”ほど、不利益をこうむることになる。抗議の1つでもすれば、自分の身に“危険”が及ぶかもしれないわけで、いずれにしても、我慢するしかなくなってしまうのだ。

“中流”と断言できる安心感が崩壊した

 でも本当は、カネがもっと欲しい。これだけ頑張っているのだから、もっともらえていいはずだ。

 たとえ、労働者の平均収入が前の年を7万円余りも下回り、18年ぶりの低水準にとどまったとしても(国税庁調べ、民間企業で働く人の昨年の平均年収は約430万円)、「俺は、頑張っているのだから、もっともらえていいはずだ」と、声にならない不満が心に充満する。

 「若いころは、上とは言わないけれど、中の上くらいは稼いでるかなって思ってた。それはそれで自分の自信になるわけです。自分はそれだけ稼げる能力を持っている、とね。でも、今は中の中。いや、中の下かもしれない。どんなにやっても給料が上がらないと、なんだか自分の価値まで下がった気分になってくる。でも、カネがすべてだと思いたくないっていう、妙なプライドもあるし…。なんか自分の中で矛盾が起きているんですよ」。

 「自分が認められていないんじゃないか」という不安感。
 本当は自分はもっと稼げる“はず”なのに、稼げるどころか給料が下がっているという根拠なき屈辱感。期待する報酬がもらえないことで、傷つけられた自尊心。

 “中流”と断言できる安心感が、報酬で報われないことによって完全に崩壊してしまったのだ。

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「金か出世か? あなたの正当なお値段は」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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