前回、リーダーの役割として「変化を起こすこと」を挙げました。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、サスティナブルグロース(持続可能な成長)を非常に重要視しています。これが何によってもたらされるのかというと、決してベストウェイの繰り返しではなく、常に革新によってなされていくと考えています。チェンジが大事なのです。
具体的な話としては、2001年にジャック・ウェルチがジェフ・イメルトを次のCEO(最高経営責任者)に選んだことです。その理由は、「最後に残った3人の中で、彼が一番変革を起こす素質を持っているから」だったのではないかと、私は思っています。

現実に彼がCEOに選ばれてから、世界は大きく変わりました。CEOに就任したのが9月7日で、その後すぐに9・11(アメリカ同時多発テロ事件)が起きます。また、米国でエンロンやタイコといった大企業の会計不祥事が発覚したのもこの頃でした。
一方で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)といった新興国が台頭してきました。原油価格の急騰など、資源高の問題も出てきました。それまでの枠組みでは収まらないような出来事が同時並行で進み、世界が変わっていくわけですね。
それよりも早いペースで個人を変えられるか、組織を変えられるか、会社を変えられるか、戦略を変えられるか。これを「一番できるのがイメルト」と、ウェルチは判断したのではないでしょうか。
イメルトの変革は、ウェルチはやらない
もっともウェルチ自身、2001年に会長を辞めた時は、世界がこんなに変わるとは全く思ってなかったんじゃないかな。ましてや、2008年のように、リーマンショックによる金融不安なんて、もうみじんも考えてなかったでしょう。でも、ウェルチは何が起こるか分からない社会において、変化に対応でき、なおかつ自ら変化を起こしていくようなリーダーがGEには必要だと考えたのではないかと。
実際、イメルトが取り組んでいる変革というのは、ウェルチでは絶対やらなかったような変革だと私は感じています。例えば、GE傘下の放送局NBCによる、仏ビベンディ・ユニバーサルの米娯楽部門買収が挙げられます。2005年から、メディアやエンターテイメントを総合的に手がけるNBCユニバーサルとして出発しました。
これは、ウェルチであれば、絶対に起こり得なかったでしょう。ウェルチは、持っている核をものすごく信じます。つまり、NBCが競争する土俵において、絶対的な強さで1番か2番になることを戦略として作っていたんですね。
ところが、NBCにユニバーサルを取り込むことは、いわゆる今までの絶対に強い核から、いったん外に出ていくことを意味します。すると、新しい競争が生まれますから、戦略も変えていかなければならない。こういうやり方をウェルチは好みません。
イメルトは、強い核から1〜2歩外の枠に出ていきます。そこで新しい競争、新しい相手を定義して、今までよりも大きく飛躍しようとする。これがイメルトの成長戦略なんです。ウェルチの成長戦略は、絶対的に強い核の中でシェアを伸ばしていく。比較すると、イメルトの成長戦略は、危険性を伴うわけですね。
では、イメルトはなぜユニバーサルを買ったのか。NBCのような放送局モデルは、今までは非常に強かった。でも、将来は全く違ったモデルになってくると思ったんですね。イメルトの考えた将来モデルは何かと言うと、コンテンツと流通の組み合わせです。コンテンツをいかに多くして、テレビ局だけでなく、ケーブルやサテライト、インターネットなどマルチプルな流通に乗せていく。
こう考えると、今のNBC体制では、将来は耐えられない。自分たちの行動範囲をもっと広くして、コンテンツに入り、さらに大きな流通に入らない限り、このNBCのビジネスモデルはできないと考えたわけですね。イメルトは10年ぐらい先のことを読んだ。コンテンツと流通の動きを見ていると、実際にそうなってきていますよね。
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日本GE社長兼CEO(最高経営責任者)、米GEシニア・バイス・プレジデント。東京大学工学部卒業、米カーネギーメロン大学でMBA(経営学修士)を取得。日商岩井を経て1986年に日本GE入社。1997年10月にGEメディカル・システムズ・アジア プレジデント兼CEOに就任、日本人で初めて米GEのコーポレート・オフィサー(本社役員)になる。2001年から米GEのシニア・バイス・プレジデント及びCEC (執行役員会議) メンバー。2005年1月から日本GE会長及びGEマネーアジア プレジデント兼CEO。2008年10月より日本GE社長を兼任、2009年1月より現職。







