• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

第3話「赤字になった途端貸し剥がしが始まる。だから中小企業は粉飾をするんです」

2009年10月7日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

これまでのあらすじ

 再建前のジェピーで、当時経理課長だった団達也とともに数々の不正会計を明るみに出した公認会計士の西郷幸太は、日野原工業創業者の日野原五郎に呼ばれていた。

 この老経営者は自らがガンに侵されていることを西郷に告げ、会社をも安楽死させてほしいと西郷に依頼した。

 日野原工業は、自動車の電子部品を作る会社だったが、新工場を建設した途端に経済危機に襲われ、経営が行き詰まっていたのだった。

 達也はジェピーを辞め、経理課長だった細谷真理と一緒に新しい会社を立ち上げた。しかしその会社は開店休業状態。達也は自分が本当にやりたいことが分からなくなっていた。

 ジェピーには米国のUEPC社からやってきた新社長がリストラを進めていた。本社CEOのマイケル・ウッズは日本での新たなビジネスチャンスの可能性を感じていた。

日野原工業

 「会社を安楽死させる…つまり日野原工業を清算するおつもりですか」
 西郷がこう聞くと、日野原は深く頷いた。

 「なぜなんですか…?」
 「夢がなくなったんですよ。この会社は私の『分身』なんです。いまの不景気は間違いなく1年は続きます。もっと続くかもしれない。うちの会社には、それまで持ちこたえられる体力はもう残っていません。私はね、『分身』が破綻する姿を見たくないんです。

 もし、いま清算すれば、借金はすべて返して、従業員たちにも多少退職金を支払えます。300人の従業員や、協力会社には大変申し訳ないとは思いますよ。でも、いまを逃したら、もうチャンスはありません」

 老人は日野原工業が破綻するものと確信していた。西郷にはそんな日野原の心の中が見えていない。

 「社長はこれまで何度も危機を乗り越えられてきたのではありませんか。今回だって、きっと乗り越えられます。それに、日野原工業はもはや社長個人のものではありません」

 ここで働く300人の従業員だけではない。彼らの家族。協力会社、仕入先などの多くの人たちが、日野原工業から生活の糧を得ているのだ。だから生き延びることを考えるのが経営者の務めだと、西郷は思っている。

 すると日野原は孫に語りかけるような口調で、こんな話を始めた。

 「あなたはまだ若いから、人生の終わりについて考えたこともないでしょう。人はいずれ死ぬんです。でも、ほとんどの人はその時がいつ来るかを知らない。90歳の人も、100歳の人も、来年のことを考えている。それが人間というものです。だが、私は医師から余命1年と宣告されたんですよ。来年の誕生日は来ないのです。誤解しないでください。だから自暴自棄になって『会社を清算する』と言っているのではありません。覚悟はできていますよ。人は必ず死ぬのですから」

 ここまで話すと、日野原は大きく深呼吸した。それはため息のようにも見えた。

「「熱血!会計物語 ~社長、団達也が行く」」のバックナンバー

一覧

「第3話「赤字になった途端貸し剥がしが始まる。だから中小企業は粉飾をするんです」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

店長や売り場主任などの管理職は、パートを含む社員の声を吸い上げて戦略を立てることが重要だ。

川野 幸夫 ヤオコー会長