「すべては倉庫番が知っている」

格安PBは長続きしない

ブームの去った後には下請けメーカーが死屍累々

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2009年10月13日(火)

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 7月末、イオンとセブン&アイ・ホールディングスからビール系飲料のPB(プライベートブランド)が、同時発売されて話題を呼んだ。酒税の税率の低い「第3のビール」ではあるが、自動販売機の缶ジュースよりも安い。

 イオンが「トップバリュ 麦の薫り」、セブン&アイが「セブンプレミアム THE BREW」を、いずれも350ミリリットル缶で100円(THE BREWは初回出荷分6缶パックのお試し価格。バラ売りだと123円)という値段で販売している。

 両方とも製造元はブランド力のあるサントリーだ。そのため通常のPBと違って、商品には「SUNTORY」のロゴが目立つようにデザインされている。割安な値段に加え、品質面での安心感もある。初回出荷の売れ行きが好調だったというのも頷ける。

ある中堅スーパーの挫折

 しかし、ロジスティクスの視点で見ると、この格安PBには相当な無理がある。

 イオンのプレスリリースには、「麦の薫り」が低価格を実現できた理由として、サントリーの工場からイオンの物流センターに直接納品することによる配送費の低減や、事前計画に基づく生産効率の向上が挙げられている。

 しかし、缶ビールを大手量販店のセンターに納品する物流には、酒卸の拠点を経由しない直送が従来から広く行われている。PBだけ直送によって、物流コストが下がったという話は合点がいかない。

 効率のいい生産という説明も眉唾だ。サントリーは年間約6800万ケースのビール系飲料を生産している。2つのPBの生産を受け持つ「サントリー利根川ビール工場」だけでも、年間生産量は約2600万ケースに上る。

 それに対してPBの年間目標販売数は「麦の薫り」が125万ケース、「THE BREW」が150万ケースで、合わせても275万ケースだ。それだけの規模では生産計画をどう工夫しても、それほどコストダウンできるとは思えない。

 むしろ、生産アイテム数が増えることで、サントリー側のトータルコストは増加しているのではないかとさえ筆者は邪推している。

 多少古い話になるが、1990年代末に滋賀県を地盤とする中堅スーパーの平和堂で、「CRP(Continuous Replenishment Program:連続補充方式)」と呼ばれる大規模な流通効率化プロジェクトが実施されている。

 加工食品や日用雑貨品の有力メーカーに平和堂が販売情報を開示。特売計画も平和堂の本部が実施の3週間前までにメーカー側に通知するというルールを決め、商品補充の自動化に取り組んだ。

 CRPを導入することで、平和堂は在庫量を最適化すると同時に、発注作業や受け入れ検品の手間がなくなるので、接客や販促活動などの業務に集中できるようになる(正確には完全な自動補充ではなく、システムの計算した発注推奨情報をバイヤーが認証するというプロセスは残されたが、それでも発注に係わる作業負担は大幅に軽減される)。

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著者プロフィール

大矢 昌浩(おおや・まさひろ)氏

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。2004年4月〜2007年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。



このコラムについて

すべては倉庫番が知っている

原材料の調達から工場での加工、店舗までの配送と、企業や産業のあらゆる活動を“裏方”として支える物流。ここからは、表層からはうかがい知れない経営や経済の動きが浮かび上がってくる。そこから見えてくる課題は、単なる物流改善に伴うコスト削減にとどまらず、企業に構造改革を促すテーマである。10年以上も物流業界を取材してきた筆者が、“倉庫番”だから知り得る日本企業の実像をリポートする。

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