「小売業に夢を翔けて」

ディスカウント合戦で生き残れるのか?

話題になっても、長続きしないカラクリ

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2009年10月19日(月)

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 景気低迷で消費者の低価格志向が強くなっていく中で、小売業はディスカウント傾向を強くしている。リーマンショック後、売り上げが低迷している小売業は、ディスカウントすることによって売り上げを増やそうとしているのである。

 しかし、その結果は悲惨である。ディスカウントにより売上数量は増えたが、商品単価が下がり、売上金額は伸びなかった。ディスカウントしたので、売値から仕入値を差し引いた粗利額が減少し、売上数量が増えたので作業が増加し、経費が削減できず、大幅な減益になる小売業が続出している。

 ディスカウントにより一時的に少し売り上げが伸びた小売業あったが、ここへ来て多くの小売業の売り上げが低下傾向になってきている。ディスカウント合戦になり、一部の小売業を除いて、ほとんどの小売業が泥沼でもがいている状況になっている。

 ディスカウントしているのに、なぜ売り上げが増えないのだろう。私はコンサルタントや経営者として数多くの事例を知っているが、私の経験で言うと、ディスカウントして売り上げが増えた経験はない。一時的に売り上げが伸びることはあったが、だいたい3カ月か6カ月もすると売り上げが低迷してくる。何回も経験したから身にしみている。

身を蝕む「麻薬」のようなもの

 なぜだろう。具体的な話で説明してみよう。あるお客様が「濃口醤油」1リットルを158円で特売をしていたから買ったとしよう。定価価格が238円、普通の特売では178〜198円だった。

 このお客様が買った理由が、いくつか考えられる。まだ家に在庫はあるけど、特別に安いから買った。これは、需要の先食いである。将来売れる需要が、今発生して売れただけ。だから、将来の売り上げと合わせて考えると、売り上げが増えたとは言えない。

 むしろ、将来の時点で家の醤油が切れそうになったから買いに来たとしたら・・・、198円でも買ったかもしれないのが158円になったのであれば、売り上げは減少することになる。

 小売業は固定客からの売り上げが大半である。基本的には固定客からの売り上げを増やさないと、全体の売上金額は伸びない。158円で安く醤油を買ったからといって、多めに醤油をかける人はいない。1人当たりの醤油の消費量は同じだから、単価が下がった分、売り上げは下がるのである。

 それ以外の買った理由として、いつもは丸大豆醤油が好きで買っているけれども、あんまり安いから今回は158円の特売の醤油を買った人もいるかもしれない。これはスイッチである。

 もっとも、商品単価は丸大豆醤油の方が、濃口醤油よりも高い。固定客で使う量が同じであるから、スイッチによって単価が下がっただけ、売り上げは減少する。

 競争相手から売り上げを奪うのだという考え方もできる。これなら売り上げが増えたことになる。チラシで安い価格をアピールし、お客様がいつもは行かない店で商品を買えば、競争相手の売り上げを奪って自店の売り上げにつなげたことになる。

 しかし、残念なことに、これも長続きしないことが多い。競争相手が黙っていないからである。他店がディスカウントして自店の売り上げが落ちたとなると、対抗してディスカウントしてくる。価格で奪ったお客様は、価格で奪い返される。こちらの店が気にいって買っていただいたのではなく安いから買っただけだから、他店で安売りをしていればそちらに行ってしまうのだ。

 店舗をディスカウント業態に変換した時にも、一時的には売り上げは伸びても、1年ぐらいすると売り上げが低迷することが多い。

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著者プロフィール

大久保 恒夫(おおくぼ・つねお)

大久保 恒夫成城石井相談役。1956年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年にイトーヨーカ堂入社。経営トップ直結の「業務改革」の主要メンバーとして構造改革に取り組む。その後、プライスウォーターハウスコンサルティングのシニアコンサルタント、財団法人流通経済研究所の研究員を経て、90年7月、流通コンサルティングを手がけるリテイルサイエンスを設立。ファーストリテイリング(ユニクロ)や良品計画の経営改革を担当する。2003年9月にドラッグイレブン代表に就任、2007年1月から成城石井社長を務め、2010年9月から現職。



このコラムについて

小売業に夢を翔けて

終わりのない低価格競争に疲弊する日本の小売業。もはや規模を追求するだけでは、消費者の満足は得られず、企業の成長も見えなくなってしまった。本コラムでは、イトーヨーカ堂、ユニクロ、良品計画などで小売業の改革を手がけてきた大久保恒夫・成城石井社長がモノを売る喜びと可能性を解き明かしていく。

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