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自殺者が多い職場-経営者が置き去りにした“もの”

「ソーシャル・キャピタル」の考え方が経営を変える

2009年10月15日(木)

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 今回は、10月7日付けで毎日新聞が報じたニュース「フランス:最大手の電話会社、リストラ苦で社員24人自殺 大半、職場で…社会に衝撃」からご覧いただきたい。

 フランス最大手の電話会社「フランス・テレコム」(社員約10万人)で、過去20カ月の間に組織改編に伴うリストラなどを理由に24人の自殺者が出たため、同社の組織改編の担当重役(60)が5日、引責辞任した。最近でも顧客サービスの電話センターに異動した男性社員(51)が高速道路の陸橋から「仕事の重圧」を理由とする遺書を残して投身自殺したほか、降格を知って会議中に腹に刃物を刺して自殺を図る男性社員(49)も出ていた。
 担当重役は06年に就任。「近代化のためには手段を選ばない恐怖政治を行う」(同社労組幹部)とされていた。

(毎日新聞2009年10月7日東京朝刊)

 わずか1年8カ月の間に、同じ会社の従業員が24人も自殺。しかも、その背景にあるのが会社の“恐怖政治”。なんと言っていいのか、適当な言葉が思い浮かばないほどショッキングなニュースだ。と、同時に「えっ、フランス人も自殺するんだ」などと、問題の本質とは全く関係ない素朴な疑問を抱いてしまった。「欧米人は自殺しない」という勝手な思い込みだ。

 そこで、世界保健機関(WHO)のデータに基づく世界の自殺率を調べたところ、自殺率がいちばん高いのはリトアニアで人口10万人に対し38.6人、2位ベラルーシ、3位ロシアと続き、日本は8位(同23.7人)、韓国11位(同21.9人)で、フランスは19位(同17.6人)、米国42位(同11人)、英国65位(同6.7人)だった。つまり、フランス人の自殺率は日本ほど高くはないが、世界的には決して低くはないのである。

 素朴な疑問が解決したところで、本題に戻ろう。

 フランス・テレコムはもともと国営の独占企業で、90年代後半から民営化を進めた。2002年にフランス国家が、手持ち株の一部を売却して株保有率を50%未満としたことに伴い、一般私企業となり、通信市場の競争下に置かれるようになった。その後、経営状況が悪化。急激なダウンサイジング(=リストラ策)を実行している。

 報道によれば、自殺者の大半が職場で自殺し、労働環境の急変を嘆く遺書を残す人もいたそうだ。23人目の自殺者となった社員は自殺直前に父親に、「今夜オフィスで命を断つつもり。もちろん上司には言ってない」とのメールを送り、自殺理由について「部署の再編成が許せない。新たな上司のもとで働くくらいなら死んだほうがマシ」と記したという(9月19日付 AFP)。また、未遂者も13人いるとの報道もあり、その数字からだけでも、従業員が過酷な状況に追いやられていることは容易に推測できる。

「銃弾を放っているのは自分たち」との認識がない経営陣

 重い。実に、重いケースである。でもこれは海の向こうの出来事であって、海の向こうの出来事ではない。

 自殺者の増加は、年間3万人となった日本でも社会問題になっているし、自殺が個人の問題ではなく、不況や雇用不安など、社会の問題であることは失業率と自殺者の相関関係の高さが物語っている。

 自殺者の多くは、リストラや配置転換がきっかけとなり、過労、人間関係の悪化、うつ病、生活苦など、いくつかの要因が重なり自殺に至る。また、リストラに遭わず嵐を生き延びた人にも、社会不安は大きな影を落としている。

 職場に残った人たちの多くはギリギリの人員で仕事が増え過労になり、「いつか自分も…」と不安を感じ、職場の人間関係が悪化し、うつ病になり、そして自殺、という“悪のスパイラル”に入り込む。冒頭のフランス・テレコムも、「社員の自殺」となっているので、後者の事例に相当すると言えるだろう。

 でも、このショッキングなニュース以上にショックを受けたのが、組織改編の担当重役が辞任する前の、経営側の対応である。組合側の批判に対し、経営側の労働対策責任者は「リストラの数値目標はない」「従業員の自殺は、家族にとって悲劇だが、数として増えているわけではない」「われわれは、顧客のサービス向上の要求に常に応えなければならない」などと発言したそうだ。組合側がストを実施すると経営側は対応を迫られ、人事担当者は、配置転換の10月末までの凍結、職場ストレスに関する協議の開催、労働相談ポストの増設、産業医の新規採用などを約束したという。

 いったいこの経営側の対応は、何なのだろう。

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「自殺者が多い職場-経営者が置き去りにした“もの”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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