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働く“理由”―飲む、愚痴る、そして、働け!

「ソーシャル・キャピタル」の考え方が労働環境を変える

2009年10月22日(木)

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 「自分で口にするのも怖いから言わなかったけれど、『死にたい』と思うくらいしんどかった」
 高校時代の友人のA子がそう切り出した。

 死にたい…。決して本気ではないし、四六時中思いつめているわけではない。でも、そんなことを考えてしまうくらい、A子の心は疲れ果てていた。

 「死にたい」とまでは思わなくても、どうしてもブルーな気分が晴れず、前向きになれないことは私にもある。他人から見ればおそらく、“いつも通り元気”だし、“食欲がない”ほどではないし、“寝つきが悪い”わけでもない。たいていの場合は、あとから考えれば、さほど深刻ではないと思えるのだが、その時はとにかくシンドイ。自分だけにしかわからない閉塞感…。

 あなたも、そんな気持ちになったことはありませんか?

 前回のコラムでは、「自殺者が多い企業」の話に始まり、目に見えない力である「ソーシャル・キャピタル」についてお話しした(「ソーシャル・キャピタル」の詳細はこちら)。納得、賛成、諦めなど、たくさんのご意見ありがとうございました。前回は「自殺×経営者」という社会の大枠についての話だったので、今回は「死にたいという思い×自分」という、もっと身近な話からソーシャル・キャピタルの働きについてお話をします。

「管理職には声をかけないで、内緒の飲み会をやってみた」

 話は今から1年前にさかのぼる。
 A子は「管理職になれなかった」ため、かなりのショックを受けていた。社長賞を3回も受賞し、管理職への登竜門とも言われている(彼女の会社ではそうらしい)組合役員も務めていたので、管理職になるものだと信じていた。ところが同期の何人かは昇進したのに、自分には辞令が出ない。A子はどちらかと言えば、出世に興味があるタイプではない。でも、“管理職になれなかったことで自分が否定された”、そんな気分に陥ってしまったのだ。

 ただ、A子はもともと出世を目指していたのではなく、現場の仕事がやりたかったので、気分の切り替えは早かった。

 「ほかの仕事が増える管理職になって今の仕事ができなくなるよりも、良かったと思えるようになった。先輩からも『脂が乗ってきた時に、下手に管理職になるよりもいい。自分のやりたいことができる貴重な時間がもらえたと思ったほうがいい』と言われた。確かにそうだって自分でも納得できたから、今年は○×するよ!」と語っていたのである。

 ○×という、1年間の明確な目標を作ったA子は、管理職になれなかった悔しさなど忘れてしまうくらい仕事に集中した。そして、それなりの成果も上げ、春先に会った時にはいつにも増してエネルギッシュで、仕事が充実しているんだと私もうらやましく思ったほどだった。ただ、肉体的には疲れている様子が少しばかり気にはなった。

 そんな彼女が、その後「死にたい」などと思うなんて…。おそらく彼女自身がいちばん驚いたのではないだろうか。彼女が不本意にもそんな気分になったのは「今の上司の存在」が原因だった。

 「何をやっても否定されるし、とにかく肌が合わない。コミュニケーションも上手くとれないし、どんどん気分は滅入っていく。しかも、いちいち理不尽なクレームをつけてくる。いじめかと思うくらいにね。でも、それに反発すると、『こいつは面倒くさい』とか言われそうだし…」

 「それで、『死んじゃいたい』なんて思うくらいに疲れきった。でも、そんな風に思うなんて、自分でも相当危ない。だから気分転換にダンスに行ったり、いろいろしたんだけどスッキリしない。それで管理職には一切声をかけないで、内緒の飲み会をやってみた。うちの会社には、下の人だけで飲み会をやるのはよくないという雰囲気があるのね。だから本当に内緒で。管理職なしで、派遣社員の子も誘って6人で飲み会をやってみたんだ」

 「その会が想像以上に楽しかった。同じ部署なのに、お互い話したことがなかったんだと改めて感じてね。会社以外の人と飲むのとはまた違う。仕事も上司も、他の部署の人の話まで、みんなが知っている共通の話題で話すのが心地よかった。昔は、会社が終わってまで会社の人と飲むなんて馬鹿馬鹿しい、と思っていたのにね」

 A子が内緒の飲み会を計画したのには、その前段階があった。数カ月前、上司たちが関連会社とのゴルフのコンペで会社に来ない日があったそうだ。その時、「こっちは必死に仕事しているのに、やっていられない」と思った彼女は、近くのお菓子屋さんでケーキを買ってきて、みんなにふるまった。学校で先生が休みで自習になった時に、こっそりお菓子を食べたように、だ。

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「働く“理由”―飲む、愚痴る、そして、働け!」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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