小売業のプライベートブランド(PB)ブームが大変な勢いである。不況の影響で消費者の低価格志向が強くなっている中で、価格が安いPBの人気が上がっているのである。2008年頃の原材料価格の高騰によりメーカー各社が価格を上げたが、その頃を境に価格を抑えたPBが勢いづき、2009年に入ってさらに勢いを増している。
大手小売業でPBに力を入れているところでは、PBのアイテム数は急激に増加し、1000アイテムを超えるところも出てきたし、5000アイテムを超えるという恐ろしいほどのアイテム数になっている大手小売業もある。売り上げの拡大も進み、売上構成比は10%を超える小売業も珍しくなくなってきた。
価格差20%以下ならNB優位
このPBブームは今後どうなるであろうか。短期的な見込みでは、そう遠くない将来に売り上げが頭打ちとなり、ブームは終焉していくと予想する。過去にもPBブームは何回かあり、そう長続きせずにブームは終焉していった。今回は不況の影響によるかなり強い追い風が吹いているが、今までと同様の結末を迎えると思う。
その根拠を説明しよう。今PBが売れているのはなぜだろう。価格が安いのが一番の要因だ。しかし価格が安いというインパクトは最初は強くても、同じ価格を継続すると次第にインパクトが弱くなり、売り上げは低下していく。
ナショナルブランド(NB)メーカーも黙っていないであろう。PBに売り上げを奪われたNBメーカーの反撃が始まる。価格でも対抗してくるであろう。今までの経験で言うと、NBとPBの価格差が20%以下になるとNBへの回帰が始まる。
日本人はブランド好きである。できれば現状ではPBよりもNBを買いたいと思っている人は多い。20〜30%ある価格差は、次第に縮まり15%や10%になれば、PBの売り上げは低下していくと予想する。
もう1つPBが売れている理由は、新規性や話題性だと思う。新規商品や話題商品が売れる時代である。マスコミも随分と騒いだ。新しさや話題に引かれて買ったお客様は、時間とともに魅力が薄れてくるから、売り上げは低下していく。
今回のPBブームで、小売業は安易にPBを作りすぎた。そんな短期間に魅力のあるPBができるはずがない。わずか数カ月で何百アイテムものPBを開発したりしている。1つひとつの商品を吟味していない。今まである商品のラベルを張り替えるだけで出来上がったPBも多いはずである。これでは魅力ある商品にはならない。魅力のない商品は長期的には売れないのである。
粗利率も上がっていない
PBブームとなり、PBの売り上げが急増していると伝えられている。それで、その小売業の売り上げは増えたのか。決算データを見ると、売り上げは伸びていないようだ。むしろ下がっている小売業が多い。
PBの売り上げが増えても、それはNB商品からのスイッチがほとんどだから売り上げは伸びないのである。PBは安いから商品単価は低下する。販売数量が同じならば、売り上げは低下する。安いからといってたくさん食べたり、ムダに使ったりする人はいないから、売り上げは低下していくのである。マスコミにもてはやされて華々しいニュースになっているが、騙されてはいけない。
粗利率も上がっていない。PBの粗利率は、本来は高いものである。商品開発するわけだから、開発要員がいる。作業すれば、人件費がかかってくる。開発した商品は原則として全部引き取るから、売れ残った場合にはロスが出るというリスクが発生する。在庫を置いておくスペースコストもかかるし、在庫管理の人件費もかかる。そういった経費やリスクを負う分、粗利率が高いのが通常である。
メーカーも工場の遊休設備を有効活用したり、営業費用がかからなかったりする分、安い価格で小売業に納入することができるから、メーカーの都合からもPBの粗利率は高くなることが多い。ではPBの売上構成比が高くなって小売業の粗利率が上がったかというと、決算データでは上がっていない企業が多かった。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



成城石井相談役。1956年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年にイトーヨーカ堂入社。経営トップ直結の「業務改革」の主要メンバーとして構造改革に取り組む。その後、プライスウォーターハウスコンサルティングのシニアコンサルタント、財団法人流通経済研究所の研究員を経て、90年7月、流通コンサルティングを手がけるリテイルサイエンスを設立。ファーストリテイリング(ユニクロ)や良品計画の経営改革を担当する。2003年9月にドラッグイレブン代表に就任、2007年1月から成城石井社長を務め、2010年9月から現職。

からのご案内




