麻生太郎前総理が提唱し、賛否両論を呼んだ「アニメの殿堂」の建設はどうやら見送りとなるようだ。だが日本の文化としての「アニメ」に注目し、産業としても育てていこうという方向性そのものに反対する人は少ないのではないか。
社会が成熟する中で、これから重要な役割を担うのがアニメ、ゲーム、日本映画、クラシック音楽などの分野だ。これをビジネスととらえるならば、「文化産業(クリエーティブ産業)」と名づけることができる。製造業が弱体化する中で、こうした産業は日本の次の成長の糧の1つとして期待される。
文化産業自体は昔から存在する。だがきちんと利益をあげる事業形態、つまりビジネスモデルの構築に成功したものは少ない。映像、アニメなど芸術文化のビジネスモデルは、まだ完成度が低い。こうしたビジネスでいかにモデルを構築していくのか。まず、アニメから考察していく。
(このコラムは慶應義塾大学総合政策学部の上山信一教授が監修・編集し、上山教授のゼミである「クリエーティブ産業研究会」のメンバーが執筆を担当します)
8月31日、東京・お台場に立つ全長18メートルの実物大「ガンダム」の展示が静かに幕を下ろした。人気アニメ「機動戦士ガンダム」の放映30周年を記念して開かれたこのイベントは、子供連れからサラリーマンまで幅広い来場者を集めた。7月11日からこの日までの約2カ月間の来場者数は415万人と当初目標150万人の約2.8倍に及んだ。
「ガンダム」だけではない。神戸市では「鉄人28号」の実物大モデルの製作プロジェクトが進行中だ。昔の日本人は奈良の大仏や長谷の観音像を拝むべく巡礼の旅をした。今やアニメのキャラクターがこれに変わりつつあるようだ。アニメのキャラクターは現代日本の国民的シンボルになりつつある。
だが、実際のアニメ産業を取り巻く状況は楽観視できない。
「アニメバブル崩壊」。2009年5月4日の朝日新聞は、扇動的な見出しとともに我が国のアニメ産業は右肩下がりの時代に入ったと報じた。アニメ業界の市場規模は1985年の261億円から2006年の2588億円へ急成長した。それが2007年には2396億円となり縮小に転じた。記事はこれを受けたものだった。
だがアニメはもう伸びないのか。そもそも「アニメバブル」は本当にバブルだったのか。アニメ産業の未来を考えてみたい。
本数ベースで25%の子供向けで稼ぐ
アニメ産業の売り上げはテレビの放映料金のほか、DVDや周辺グッズの売り上げから構成される。また市場は2種類に分かれる。ひとつは「ドラえもん」「サザエさん」「アンパンマン」など子供・親子向けのテレビアニメである(以下「メジャー系」と呼ぶ)。
これらはゴールデンタイムに放映される。年間放映本数は約80本(2005年)だが、グッズなど派生商品の収益が大きく市場全体のおよそ6割を占める(『アニメビジネスがわかる』増田弘道著)。
もうひとつは「深夜枠アニメ」である(以下「ニッチ系」とよぶ)。ニッチ系は主にテレビの深夜枠を使って年間300本近く放映される(日本動画協会集計2005年実績)。販売収入はテレビ放送よりもDVDなどのパッケージ販売のウエイトが高い。全体の市場規模の4割程を占める。ターゲットはいわゆる「アニメオタク」と呼ばれるニッチ層である。
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