「統計学者吉田耕作教授の統計学的思考術」

評価とは正当な業績測定と誤差が重なったものと肝に銘ずること

人事評価制度の問題点

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2009年11月12日(木)

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 前回は現行の人事評価制度、特に成果主義、にはいろいろな問題があることを述べた。その問題をもう少し違う観点から考えてみよう。

 図1のような業務成績を残している2人の従業員がいる時、AとBのどちらが先に昇進するのだろうか。もちろんAであろう。

 図2は図1におけるAとBの成績をもっと長い30年ほどの長期にわたって比較したものを示している。この図では、初期の時点ではAはBより上でAはBより良い仕事をしたということで、Aは昇給し、Bは足踏みする。

人間の評価はばらつきでしか表すことができない

 ところが後の時点では、BはAより成績が良く、Bは昇給しAは足踏みすることになる。いわばA’とかA”は、Aという人の真の評価ではなく、常に変わる値の一観察点でしかないのだ。

 どの人にとっても人間の評価はばらつきでしか表すことができず、ひとつの数字で評価すること自体に無理がある。これらの時系列を右側に投影すると、AとBの分布ができる。AとBの場合、結局どちらの成績が上だったのかは、長期的に見れば大差ない(図2の右端のばらつきを参照)。

 非常に多くの人々にとって、これに似た状況があてはまると考えられる。つまり、観察点ごとに評価を下すことにあまり意味がない場合が多い。

 自分にとって不公平と思われる人事評価に対して激怒したり傷ついたりする人は、米国では非常に多い。私が米国にいたころ、郵便局で働いていた職員が、高圧的な経営に従ってノルマに追いまくられた上、目標に達せず勤務評定を下げられ頭にきて、機関銃を持って局内に乱入し、何人も殺したという事件が1回ならず起きた。

 この例ほど大々的に社会に取り上げられたわけではないが、毎年何人かの管理職は年次評価の不満から部下に銃で殺されているようだ。

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著者プロフィール

吉田 耕作(よしだ・こうさく)

カリフォルニア州立大学名誉教授、ジョイ・オブ・ワーク推進協会理事長。経営学博士。1938年東京生まれ。1962年早稲田大学商学部卒業。68年モンタナ大学で修士号(ファイナンス)を取得。75年ニューヨーク大学でデミング博士、モルゲンシュタイン博士に学び、博士号(統計学)を取得。75年からカリフォルニア州立大学で教鞭をとる。99年青山学院大学国際政治経済学部教授。2001年から2007年まで同大学院国際マネジメント研究科教授。86年から93年まで、デミング4日間セミナー「質と生産性と競争力」でデミング博士の助手を務めた。統計的な考え方をベースとして、米国連邦政府、ヒューズ航空機、メキシコ石油公社、NTTコムウエア、NTTデータ、NECなどを指導。著書に『国際競争力の再生』『経営のための直感的統計学』、『直感的統計学』、『ジョイ・オブ・ワーク――組織再生のマネジメント』、『統計的思考による経営 』など



このコラムについて

統計学者吉田耕作教授の統計学的思考術

「統計学」と聞くと、難しい数式とグラフを思い浮かべ、抵抗感を持っている人が多いでしょう。とくに文科系の人であればその思いは強いはず。でも、一度、統計学の視点で世の中を見渡してみると、物事は大きく違って見えてきます。数学が苦手だった人でも吉田教授の“講義”なら大丈夫。難しいことはありません。経営とビジネス、そして人生に役立つ統計学です。

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