「「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」」

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

2009年11月4日(水)

第7話「あいつらのねらいは電気自動車用のスイッチなんです」

1/3ページ

印刷ページ

■記事の最後に筆者の「特別ライブセミナー」のお知らせがあります。

これまでのあらすじ

 ジェピー長野工場のエンジニア、金子順平はジェピーを辞めた。親会社となったアメリカの大手電子部品会社UEPCの技術者たちが工場にやってきて、ロボットの知的財産を根こそぎアメリカ本国に持ち帰ったのを目の当たりにし、そのやり口に嫌気がさしたのだった。

 しかし、肝心のロボットの制御プログラムの核心は、金子自身が握っていた。金子は実家のある豊橋へ帰り、面識のあった会計士、西郷幸太の事務所を訪ねた。金子は達也に会いたいと西郷に告げた。

 ジェピーを辞めて新会社を立ち上げた団達也だったが、経営とは何かに思いを巡らす日々を送り、本格的なビジネスは始めていなかった。

達也の事務所

 「真理ちゃん。久しぶりに西郷さんと金子さんに会ってくるよ」

 新会社MTC(Management and Technology Consulting group)を立ち上げて半年が経とうとしていた。真理には教えていないが、達也の気持ちの中では、この会社の本当の名前は「Mari and Tatsuya & Company」なのだ。

 今日も自分の進む方向が見つからないまま晴耕雨読の日々を送っていた達也に、突然西郷からメールが届いた。

 そこには、金子がジェピーを辞めて実家のある豊橋に戻ってきたこと、一席もうけるから一度、3人で会えないか、と書かれていた。

 達也はジェピーに未練はなかった。だが、破綻寸前のジェピーをともに立て直した金子が退社したとなる話は別だ。しかも、達也はジェピーを去る際に、この2人にはプライベートのメールアドレスを伝えている。にもかかわらず、金子は直接、自分に連絡することはせず、西郷から連絡をさせているのだ。おそらくあの飄々とした青年は、自分だけでなく西郷にも伝えたいことがあるに違いない、と達也は直感した。

 達也は「いつでも豊橋に行く」と書いてメールを送った。すると、「では明日、午後5時に私の事務所にお越しください」という返信メールが届いた。

 「金子さん、どうして辞めたのかしら…」
 真理もその理由が気になっていた。あれほどロボット開発に情熱を燃やし、大学の研究者としての道を拒み、三沢とともに働く道を選んだ男が、なぜジェピーを去ったのか。真理には見当もつかなかった。

 「辞めた理由なら察しはつくよ。だが、ボクに会いたがっている理由が分からないんだ」

 そう言い残すと、達也は事務所を後にした。

ジェピー本社

 ジェピー社長のピーター・オルセンにUEPC生産技術部長のアンソニー・ホワイトから電話がかかった。アンソニーは焦った様子で、至急、金子と連絡を取りたいと伝えた。金子の設計図通りにロボットを作成したが精度が出ない。どうやらロボットを制御するソフトウエアにバグがあるのではないか、というのだ。言うまでもないが、バグとはコンピュータープログラムに含まれる誤りや不具合のことだ。

 「長野工場では何の問題もなく動いています。そちらのミスではないでしょうか」
 ピーターは取り合おうとしなかった。世界でもっとも優秀な技術者が大挙してやってきて、いとも簡単に根こそぎ知的財産を持ち帰ったのだ。しかもアンソニーは帰国に際して「カネコの発明はたいしたことはなかった」と言い残していたではないか。

 「そのことなんだが」
 アンソニーの口調が突然変わった。

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事



Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。


このコラムについて

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦めで中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。達也は、当時専務の間中隆三らによる不正が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、間中らを追放した。
 経理部長になった達也は、ジェピーCFOとして会社の再建に着手した。その直後から隠れ負債が発覚し、工場には仕掛かり在庫の山。資金繰りに窮したジェピーは、銀行からも見放され倒産寸前だった。
 ジェピーを救ったのは、かつての級友、ジェームス。ジェピーは、同じく級友のリンダが勤めるアメリカの大手電子部品会社UEPCの傘下に入って新たな道を歩み出した。
 創業者未亡人の大株主、財部ふみの遺言で達也の手にはジェピーの株式が渡ることになったが、達也はそれを手放し、自分の手で会社を立ち上げようと決心した――。
 管理会計が専門の現役会計士である著者による、“読む管理会計”シリーズの第3弾。ストーリーを追いながら、経営に役立つ管理会計の最新の理念と実践的な知識が身につきます。
第一シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」
第二シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

編集部よりお知らせ

日経ビジネスからのご案内