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これまでのあらすじ
ジェピー長野工場のエンジニア、金子順平はジェピーを辞めた。親会社となったアメリカの大手電子部品会社UEPCの技術者たちが工場にやってきて、ロボットの知的財産を根こそぎアメリカ本国に持ち帰ったのを目の当たりにし、そのやり口に嫌気がさしたのだった。
しかし、肝心のロボットの制御プログラムの核心は、金子自身が握っていた。金子は実家のある豊橋へ帰り、面識のあった会計士、西郷幸太の事務所を訪ねた。金子は達也に会いたいと西郷に告げた。
ジェピーを辞めて新会社を立ち上げた団達也だったが、経営とは何かに思いを巡らす日々を送り、本格的なビジネスは始めていなかった。
達也の事務所
「真理ちゃん。久しぶりに西郷さんと金子さんに会ってくるよ」
新会社MTC(Management and Technology Consulting group)を立ち上げて半年が経とうとしていた。真理には教えていないが、達也の気持ちの中では、この会社の本当の名前は「Mari and Tatsuya & Company」なのだ。
今日も自分の進む方向が見つからないまま晴耕雨読の日々を送っていた達也に、突然西郷からメールが届いた。
そこには、金子がジェピーを辞めて実家のある豊橋に戻ってきたこと、一席もうけるから一度、3人で会えないか、と書かれていた。
達也はジェピーに未練はなかった。だが、破綻寸前のジェピーをともに立て直した金子が退社したとなる話は別だ。しかも、達也はジェピーを去る際に、この2人にはプライベートのメールアドレスを伝えている。にもかかわらず、金子は直接、自分に連絡することはせず、西郷から連絡をさせているのだ。おそらくあの飄々とした青年は、自分だけでなく西郷にも伝えたいことがあるに違いない、と達也は直感した。
達也は「いつでも豊橋に行く」と書いてメールを送った。すると、「では明日、午後5時に私の事務所にお越しください」という返信メールが届いた。
「金子さん、どうして辞めたのかしら…」
真理もその理由が気になっていた。あれほどロボット開発に情熱を燃やし、大学の研究者としての道を拒み、三沢とともに働く道を選んだ男が、なぜジェピーを去ったのか。真理には見当もつかなかった。
「辞めた理由なら察しはつくよ。だが、ボクに会いたがっている理由が分からないんだ」
そう言い残すと、達也は事務所を後にした。
ジェピー本社
ジェピー社長のピーター・オルセンにUEPC生産技術部長のアンソニー・ホワイトから電話がかかった。アンソニーは焦った様子で、至急、金子と連絡を取りたいと伝えた。金子の設計図通りにロボットを作成したが精度が出ない。どうやらロボットを制御するソフトウエアにバグがあるのではないか、というのだ。言うまでもないが、バグとはコンピュータープログラムに含まれる誤りや不具合のことだ。
「長野工場では何の問題もなく動いています。そちらのミスではないでしょうか」
ピーターは取り合おうとしなかった。世界でもっとも優秀な技術者が大挙してやってきて、いとも簡単に根こそぎ知的財産を持ち帰ったのだ。しかもアンソニーは帰国に際して「カネコの発明はたいしたことはなかった」と言い残していたではないか。
「そのことなんだが」
アンソニーの口調が突然変わった。
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