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<私は貝になりたい>サリンBC級戦犯

――拘置所で再発防止に尽くすオウム死刑囚たち

2009年11月12日(木)

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 今回は、本来ならイスラエルのバイオリニスト、イヴリー・ギトリスと木野雅之さんとの「対論」後編を掲載する予定でした。が、編集部に無理にお願いして予定を変えさせてもらいました。

 11月6日、地下鉄サリン事件実行犯に対する最高裁判決が下されたからです。最高裁判所は同日、元オウム真理教幹部で、1995年3月20日、地下鉄サリン事件でサリンガスを車内に散布した廣瀬健一被告(45)、豊田亨被告(41)の2人に上告を棄却する判決を下しました。これにより、第二審で下された死刑判決が確定することになります。

 「さよなら、サイレント・ネイビー」

 2人の被告のうち、豊田亨君は私の大学、大学院時代の同級生で、現在も東京・小菅の拘置所で頻繁に接見している親友です。2005~2006年にかけては、サリン事件から10年を迎えるに当たって、どうしてもこの問題をきちんと明らかにして、広く世に問わねばならないと考えた私は『さよなら、サイレント・ネイビー』(集英社)という本を上梓しました。分かりにくい、変なタイトルの本だと多くの方から指摘されましたが、サイレント・ネイビーというのは大英帝国海軍(ネイビー)の軍人が、あれこれ言い訳をせず、黙って責任を取って命を投げ出すような「美風」を指す言葉で、同じように「あれこれ言い訳をせず、潔く罪を認めて刑に服そう」と覚悟を決めている豊田君に、本当にあったことは何なのか語ってくれないか、と問うまでを記したものです。

 オウム事件では、早稲田大学、慶応義塾大学、東京大学、大阪大学など、一流大学の在学生やOB、OGが多数、刑事責任を問われました。今回、最高裁判決の出た廣瀬健一君は早稲田大学理工学部、豊田亨君は東京大学理学部で、各々物理学を学び、大学院修士課程まで修了した後にオウムの「出家修行者」となり、犯罪行為の末端で、技術将校役や兵隊として働かされることになりました。

 この本を書く前も書いた後も、一貫して、私にできる限られた範囲ではありますが、こうした問題の再発を防止する取り組みを続けてきました。2000~2007年まで担当していた、東京大学教養学部の文理共通・全学必修「情報処理」(2006年度は「情報」)では、メディア・マインドコントロールの予防教育カリキュラムを構成し、合計3000人ほどの学生に個別指導を行いました。2007年以降は、単に東大生に授業するという以上に社会的な広がりのある予防策を検討するようにし、大学の別を問わず、有志の学生たちが、小菅の拘置所に豊田被告を訪ねて接見する課外実習なども行ってきました。

 実は今、この原稿は地下鉄日比谷線・北千住駅の「ドトールコーヒー」で打っています。本日、たぶんこれが最後になると思いますが、大学院生を連れて東京拘置所で豊田君と接見して、出てきたところでこの差し替え原稿を打っています。

写真1枚が全印象をひっくり返す

 11月7日の朝、私は出張先の長崎市、浦上教会横のカトリックセンターに逗留していました。産業技術総合研究所(大阪府池田市)との共同研究チームで、長崎教会群の音響調査に出ていたものですが、そこでA新聞の朝刊を手にして、大変に驚きました。

 豊田君と廣瀬君の最高裁判決の記事が出ていたのですが、ざっと見るなら「極悪人に死刑判決が下った」と読める内容になっていたからです。実はこの新聞には取材協力を求められ、私のみならず「拘置所接見実習」に参加した学生たち共々、記者の取材を受けていたのですが、九州で私が手にした版には、私たちの答えた内容も出ていなかったし、そもそも「再発予防のためにできることを尽くす大切さ」といった、本当に伝えたいと思った内容が一切盛り込まれていなかったからです。

 記事の見出しは

  元オウム幹部 死刑確定へ
  地下鉄サリン 散布役の2人
  遺族「避けられない判決」

 となっていました。とりわけ驚いたのは、記事の中に紹介されていた、事件被害者の方の「コメント」とされるものでした。その記事では、たまたま1995年3月20日、地下鉄丸の内線に乗っていてサリンガスの被害に逢った方のコメントとして「死刑」「大馬鹿」という2つの単語だけが紹介されていたのです。単語だけでは、何がなんだか分かりません。

コメント25件コメント/レビュー

オウムは軍隊ではない。オウムの信者は兵隊ではない。戦犯という言葉を使うのは不適切である。私は貝になりたい、というフレーズで、オウムおよび元信者のやったことを哀れな美談にしようとしているのか?それこそまさしくマインドコントロールですね。犯罪者と友達だからといって私情はさみすぎ。計画を立案したわけではなく、実行役だから罪ではないと?マインドコントロールされてたから無実だと?精神異常だから人を殺しても無罪、というのと同じ論理なのですかね。拘置所で名前が呼び捨てにされているのが衝撃って、そんなにめくじら立てることか?私は、犯罪者を「○○君」と親しげに読んでいることじたいが衝撃だ。罪を憎んで人を憎まず、という達観した姿勢には驚嘆するが、自分の親きょうだい、友人がサリンで殺されても同じことができるのか?あなたは、本当の意味で、この事件と罪を理解していない。(2009/11/13)

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オウムは軍隊ではない。オウムの信者は兵隊ではない。戦犯という言葉を使うのは不適切である。私は貝になりたい、というフレーズで、オウムおよび元信者のやったことを哀れな美談にしようとしているのか?それこそまさしくマインドコントロールですね。犯罪者と友達だからといって私情はさみすぎ。計画を立案したわけではなく、実行役だから罪ではないと?マインドコントロールされてたから無実だと?精神異常だから人を殺しても無罪、というのと同じ論理なのですかね。拘置所で名前が呼び捨てにされているのが衝撃って、そんなにめくじら立てることか?私は、犯罪者を「○○君」と親しげに読んでいることじたいが衝撃だ。罪を憎んで人を憎まず、という達観した姿勢には驚嘆するが、自分の親きょうだい、友人がサリンで殺されても同じことができるのか?あなたは、本当の意味で、この事件と罪を理解していない。(2009/11/13)

本題から逸れますが、前半のマスコミ記事に関してはご愁傷様です。特に取材に協力した学生諸君が強いショックを受けていないか心配なところです。 日本人は買うものに対して品質にうるさい国民ですが、日本のマスコミは昔から品質が不揃いなものの代表と言えます。品質保証のシステムが無いのです。昨今のマスコミ不況は一つには信用を毀損した結果だと思っています。 私も30数年前、小学生の頃に周囲で起こった複数の大きな事件(一つには抗争中の暴力団がカーチェイスの果てに、授業中の小学校の前で撃ち合いをやった事件)の報道に接して現場で得られる真の情報と報道の内容の乖離(印象操作目的の捏造もありました)に「大人は嘘をつくなと教えてるのに」と困らされたものでした。報道ではこんな事が日常茶飯事だということはインターネットが普及してから分かった事ですが。 実際、司法や立法の場に居る人たちも困っていると思います。正しい行動が正しく報道されなければ市民からのフィードバックも歪んでしまい、その歪みに巻き込まれて正しい行動が選べなくなるでしょう。司法・立法→マスコミ→市民→司法・立法というサイクルの一部が情報を歪めれば全体が正しい動きをしなくなります。「社会の木鐸」というスローガンだけではもう駄目なのだと思っています。(2009/11/13)

「慎重かつ精緻な思考に支えられた話し振り」で学生に感銘を与えた豊田さん。伊東さん以外の人に対しても「沈黙」を破り始められたのでしょうか。どんな方なのか、ますます興味を持ちました(『さよならサイレント・ネイビー』その他の本、新聞記事等で、少しは知っているつもりですが)。死刑確定前に、ぜひお会いしたい。伊東さんがお考えのように、「確定」すれば、私も実質、「死刑執行人の一人」になるわけですから・・執行前にお会いして、気持ちを整理したい。そんな気持ちが高まりました。(2009/11/13)

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後藤 忠治 セントラルスポーツ会長