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第7回 景気回復を遅らせている日本の「あうん」経営

  • 武田 斉紀

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2009年11月16日(月)

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 今回の世界的不況からの脱出には、政府や日銀、多くの経済評論家の方々が予想していたよりも時間がかかりそうです。米国で長年蓄積、内在していた雇用格差と経済格差の問題が一気に噴き出したわけですが、日本も米国型経営を追随してしまったために、同じ問題を抱えてしまったのです。

 モノを買うのが大好きだったアメリカ人の多くが、雇用格差と経済格差によって購買力を失い、「買いたくても買えない」ためにモノが売れなくなった。日本でも「1億総中流」という言葉は死語となり、多くの人がかつての値段ではモノを買えなくなってしまった。では輸出すればと考えますが、米国発の不況が世界に蔓延しているために、海外でも売れない。

 格安ジーンズの価格競争は限界を超え、デパートまでもが野菜やスーツの安売り競争に参戦しています。ウォルマートのように事業戦略としてイチ抜けするためにやっているのではなく、しないと生き残れないから参戦しているのです。短期間でブランドを構築した優等生スターバックスが、低価格のインスタントコーヒーの販売に乗り出すなんて誰が想像したでしょう(関連記事)。

 中小の経営者の中には、報酬を全額返上したうえで、さらに資産まで持ち出して生き残りをかけている人も少なくないでしょうから、「経営者全員が」とは言いません。経営者の一部を含む巨額の報酬を得ている人たちに申し上げたいのは、「あなたが世の中にもたらした価値の分だけ儲けるのはいいですが、残りは頑張ったみんなで分かち合わないと、世の中はどんどん悪くなる一方ですよ」ということです。

 「経営者は従業員とともにあり、お客様や社会のために一生懸命汗を流して働き、儲かったらみんなと社会で分かち合う」。これがかつての日本企業の伝統でした。「自分さえ儲かっていればいい、従業員に払う賃金は少なければ少ないほどいい」と考える経営者も少なからずいたでしょうが、そんな経営者ばかりだったら日本に「1億総中流」は生まれなかったはずです。

老舗大国・日本の強さの秘訣

 帝国データバンク著の『百年続く企業の条件』(朝日新書)によれば、日本には100年以上続く“老舗”企業が、同社が把握しているだけで約2万社、200年以上の老舗も約1000社あるそうです。別の調査によれば、世界中で250年続いている企業の3社に2社は日本企業だとか。日本は世界一の「老舗大国」なのです。

 帝国データバンクの調査によると、老舗企業の77.6%、すなわち4社に3社が企業理念に当たる家訓・社是・社訓を持っていて、これらを大切にしてきたことが長生きの秘訣のようです。伝承共有の仕方は、「明文化している」と「口伝されている」が半々。明文がある会社にも、別に口伝されている内容もあることでしょう。

 「老舗企業として大事なことを漢字1字で表すと?」の質問に対し、圧倒的な支持を集めて1位だったのは「信」だそうです。2位以下は、「誠」「継」「心」「真」と続きます。各社はそれぞれの考え方や経験をもとに、独自に大切にしていくべきことを言葉にまとめ、社内に浸透、伝承してきました。

 経営者はこれらの言葉を、日々幹部と従業員に伝え、顧客や社会に向けて自ら率先して実践してきたのです。各社にほぼ共通しているのは、「経営者は従業員とともにあり、お客様や社会のために一生懸命汗を流して働き、儲かったらみんなと社会で分かち合う」という基本姿勢。だからこそ顧客や社会に認められ、従業員の雇用を守って長く生きながらえることができたのです。

 今回の不況は100年に1度と呼ばれていますが、100年続く企業にとっては、世界不況や2回の戦争など、もっと大変なことを乗り越えてきたわけで、驚くほどのことではないと言います。日本の老舗企業の強さが改めて注目を浴びているわけですが、今こそ私たちは彼らにならって、各社の理念のもとに経営者と従業員、顧客、社会が共に繁栄できる道を、見つめ直すべきではないでしょうか。

 老舗企業に学ぶべきことは学ぶとして、実は私自身は、今回の不況のタイミングと同じくして起こっているもう1つの問題が気になっています。それは、会社として大切にしていくべき考え方、企業理念が、顧客や社会はもちろん、社内にさえも伝わりにくくなってきていることです。

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