「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

「松井MVP」はカネで買った?(上)

ヤンキース、札束攻勢で頂点へ

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2009年11月19日(木)

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 ニューヨーク・ヤンキースとフィラデルフィア・フィリーズとの間で戦われた米メジャーリーグ(MLB)のワールドシリーズは、4勝2敗でヤンキースがフィリーズを退け、9年ぶり27度目の全米チャンピオンに輝きました。優勝を決めた第6戦では、松井秀喜選手が先制の2点本塁打を含む6打点の大活躍で勝利に大きく貢献し(1試合6打点はワールドシリーズのタイ記録)、ワールドシリーズMVPに選出されました。この偉業に日本の野球ファンも大いに盛り上がったことでしょう。米国で観ていても、同じ日本人として誇らしい気持ちになりました。

 しかし、MLB球団で突出して年俸総額の高いヤンキースがプレーオフ進出を決め、MLB球団で唯一3ケタの勝ち星(103勝)を挙げてレギュラーシーズンを終えた前後から、米国では「勝利をカネで買った」「MLBの戦力均衡策は機能していない」という批判が再燃しています。果たしてこうした批判は的を射たものなのでしょうか?

勝利はカネで買える

 ヤンキースは、昨年オフにミルウォーキー・ブリュワーズのエース投手だったC・C・サバシア投手と7年総額1億6100万ドル(約144億円)、トロント・ブルージェイズのエースだったA.J.バーネット投手と5年総額8250万ドル(約75億円)の契約を結びました。総額2億ドルを超える投手補強は功を奏し、今シーズンはサバシア投手が19勝(8敗)、バーネット投手が13勝(9敗)と期待に違わぬ活躍を見せ、この2人だけで32勝の勝ち星をヤンキースにもたらしました。野球は守備が重要なスポーツですから、良い投手を獲得することが勝利への一番の近道になるわけです。

 この他にも、ヤンキースはロサンゼルス・エンゼルスのマーク・ティシェラ内野手と8年総額1億8000万ドル(約162億円)の契約を結ぶなど、結局2009年シーズンのチーム年俸総額がMLB全30球団中、唯一2億ドルを突破するほどの大型補強に踏み切りました。2009年のMLBのチーム平均年俸総額は約8834万ドル(約80億円)ですから、約2億145万ドル(約180億円)を注ぎ込んだヤンキースは、平均的なMLBチームの約2.3倍のカネを選手に注ぎ込んだことになります。

 このように、ヤンキースはMLBの中でも「カネ持ちチーム」の象徴的な存在です。特に今シーズンは、カネ持ち球団が多くの勝ち星を挙げました。以下は、今シーズンのMLB30球団の年俸総額をグラフにしたものですが、プレーオフに進出した8チーム(青)のうち、6チームが年俸総額で上位半分にランクインしているチームでした。リーグ優勝決定戦に進出した4チームはいずれも年俸総額が1億ドル以上のチーム(年俸上位9位以上)でした。逆に、各地区の最下位だった6チーム(赤)は、全て年俸総額が下位半分のチームです。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)



このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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