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「グリーン」と「原発」はコインの表裏・・・「東京演説」を読む

――オバマ核軍縮ビジネスモデルと原発産業(その2)

2009年12月1日(火)

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その1から読む)

 文部科学省の事業仕分けで、研究開発費の類がほとんど議論をされずバッサリ切られているようで、学術側からアレルギー的な反応も起きていると聞きました。

 11月27日には東京大学理学部内で自然科学研究機構が主催者となってジャーナリストの立花隆氏を筆頭に各地の研究所長が集まって決起集会を開いたとのこと。

 このコラムをずっと読んで下さっている方は、こうした基礎研究費の問題、私も「守れ!」と論陣を張るだろうと思われるかもしれません。が、実は今回の動きに対して私はとても冷静です。その理由は、よくも悪しくも今、私が、こうした官費の研究開発費の世話になっておらず、関係者も全くその恩恵に浴していないことが大きいと思います。実際、利害がほとんどないので、極めて公平に事態の推移を観察しています。

 日本の基礎科学を守るべきであること。これは言うまでもありません。また、中身の意味も分からずにカットしている政治屋も、その受け答えをしている役人も、あまりに論外で語る価値も見いだしません。ただ、実際に研究予算がブラックボックス化していて、無駄な研究費というべきものがないか? と問われれば、かなりの金額があることが懸念される、というのも、内部を垣間見る個人として、正直なところです。

 もっと言うなら、研究者サイドのみんなに問いたい。あなたが研究費(この場合は特に、ポスト・ドクトリアル・フェローの人件費や機材の運転費などが問題になると思いますが)がなければ研究をしないのか? 君は金で買われてする程度の研究しかしないのか?

 そんな研究であれば、企業でやればよろしい。企業研究費が底をついている現状はもちろん認識しています。しかし大学国研の類は、憲法も保障する学術研究の自由に基づいて、本当に価値ある基礎科学を、ゼロから立ち上げるのが本道でしょう。いったい、今プロジェクト・マネーで動いているものどれほどが、それに本当に値するのか、今回のような乱暴なことを契機とするにしても、一度研究者共同体側も、胸に手を当てて真剣に再検討、議論してみる必要があるのではないか? 既得権益が危ないとなると、いきなり糾合して反対、という反応だけで良いとは、正直なところ全く私は思わないのです。

 私は10年前に音楽実技の初代教官として大学に着任しました。ピアノ1台ない環境で、ゼロから積み上げていきましたが、私の本当の専門には、実は既存の国の研究開発予算は馴染まないのです。現状では私が大して売れない本を書いて、その印税、所得を割いて10数人の研究グループが、なんとか必要な仕事ができるよう、超零細の経営で、でも世界のどこの追随でもないオリジナルの仕事を積み上げています。私が30歳を過ぎる辺り(1995年頃)には、バブルがはじけて音楽家の生活で本当に食えなくなりましたが、半ば飢えながらテレビ番組「題名のない音楽会」などで食いつないで、自腹で博士論文の仕事を仕上げました。そういう経験から率直に言わせてもらうなら「事業仕分けで研究費の見直し」くらいでピーピーいうのがだらしないというのです。

 歴代のノーベル賞業績を見て、金にモノを言わせて取ったものが何割くらいか数えてみると良いでしょう。少なくとも理論家に必要なのは鉛筆と紙と少しの雑誌、あとは鋭利な頭脳と固い信念程度であって、今の時代、苦難の時期を過ごしたとしても、本当に残る仕事、未来に可能性を開く仕事を精選推敲する、むしろ好機ぐらいに考えた方が、精神衛生には良いのではないかと思います。

 研究者が金で魂を売るような時代になったら、科学はもうおしまいです。

 明記しておきますが、私は国の研究開発費の総量削減には大反対です。しかし、今の愚かな「仕分け」に対して、どの程度知的に上等な反応を学術界ができているかについては、判断を留保せざるをえない、と申しています。

 科学者の思考全般が、この国では非常に脆弱である、という印象を私は強く持っています。1968~69年頃「専門バカ」というような言葉で、当時の大学教授をつるし上げた世代の人たちが、今大学の責任あるはずの立場に立って完全に同じ言葉で糾弾されざるを得ない状況にあるような気がしてなりません。

 前回・今回のような話題を取り上げる時、とみにこれを痛感せざるを得ないのです。

軍縮期、非核三原則はどうなってゆくのか?

 例えば冷戦中期の1968年に出された「非核三原則」には「持ち込まintroductionせず」という表現があります。ソ連が仮想的だった当事の「原則」ですが、今、世界的に核軍縮を(産業としても)進めようという時、核弾頭やその構成要素を、平和利用のための核種転換のために国際間移動させる時、日本はどのような役割を果たすのか、果たさないのか、ということが、至るところ言外に問われています。

 政治家は選挙が心配ですから、マイナスイメージにつながる言葉を口にしたがりません。そういう時、ポリティカル・アポインティー、政治任用されるプロフェッショナルが、良薬は口に苦し、という部分をきちんと言ってゆかねばならない。管直人さんの国家戦略局にもいろんな参与がいるようですが、果たして科学技術を理解しているはずの人が、どれだけこういう現実を、ハッキリ口にして公器でコメントしているでしょうか?

 そういう意味も込めて、分かりやすく書きましょう。

コメント7件コメント/レビュー

伊東さんのコラム「常識の源流探訪」はいつも頷きながら愛読しておりました。わたくしは古希を過ぎた老残のもと科学者です。以前芸術系物理学者と自己揶揄的に名乗っておられましたね。わたくしは敢えて申します、芸術系化学者でした。それから今回の貴台の設問、カネが(研究費)がなければ研究をしないのか、金で買われた研究をやっているのか、全面的に賛同します、わたくしの研究室は実に貧乏でした。ビッグサイエンスとスモールサイエンスと仕分けされましたね、私の所はプアーサイエンスpoor science でしたのでしょう。それでもなにがしかの成果はあげられたと信じています。その過程でわたくしの脳裏に染み込んだ命題(というほどでもないけれど)研究費は少し足らないぐらいがいい。世にはカネはいくらでも、あればあるほどよい、と思い込んでいる愚かな輩も沢山いますけれども。 多くの場合、研究費があると、どう使っていいか分からない、ろくな使い方つまりムダ使いをする、よくあることです。今回の事態につき、伊東さんは冷静だと書いておられるけれども、本当は激昂されているのじゃないかな。事業仕分けに携わった政治家たち、識者(?)たち、そうして群がるジャーナリストたち、全部ではないけれどどうにも手がつけられない愚昧な人たちも多かった、それに相対した批判者たち、これもどうしようもない、ヒステリックな反論に終始して、例えばノーベル賞受賞者の品格を大幅に貶めた例もあったと思います。受賞者は全知全能ではない。(2009/12/02)

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伊東さんのコラム「常識の源流探訪」はいつも頷きながら愛読しておりました。わたくしは古希を過ぎた老残のもと科学者です。以前芸術系物理学者と自己揶揄的に名乗っておられましたね。わたくしは敢えて申します、芸術系化学者でした。それから今回の貴台の設問、カネが(研究費)がなければ研究をしないのか、金で買われた研究をやっているのか、全面的に賛同します、わたくしの研究室は実に貧乏でした。ビッグサイエンスとスモールサイエンスと仕分けされましたね、私の所はプアーサイエンスpoor science でしたのでしょう。それでもなにがしかの成果はあげられたと信じています。その過程でわたくしの脳裏に染み込んだ命題(というほどでもないけれど)研究費は少し足らないぐらいがいい。世にはカネはいくらでも、あればあるほどよい、と思い込んでいる愚かな輩も沢山いますけれども。 多くの場合、研究費があると、どう使っていいか分からない、ろくな使い方つまりムダ使いをする、よくあることです。今回の事態につき、伊東さんは冷静だと書いておられるけれども、本当は激昂されているのじゃないかな。事業仕分けに携わった政治家たち、識者(?)たち、そうして群がるジャーナリストたち、全部ではないけれどどうにも手がつけられない愚昧な人たちも多かった、それに相対した批判者たち、これもどうしようもない、ヒステリックな反論に終始して、例えばノーベル賞受賞者の品格を大幅に貶めた例もあったと思います。受賞者は全知全能ではない。(2009/12/02)

日本が、何故、筆者のいうような状況に陥ってしまったのか?どうすれば、改善できるか?の議論が欲しいところです。(2009/12/02)

なぜこういう解説が日本にこれまで存在しなかったのかと思わせられる秀逸な記事でした。ただ、>ノンポリの物理学者の観点でこれは無いでしょう。総選挙前のスポーツ紙並の煽り文句を披露しての露骨な民主党プッシュを忘れてしまったのでしょうか?(2009/12/02)

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三品 和広 神戸大学教授