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不況だからこそ、手に入る“シアワセ”

「ニューノーマル」な時代の会社人生の処し方

2009年11月26日(木)

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 不況、不況で暗い話題ばかりと思っていたら、どうやらこれが“新しい常識”になるかもしれない。「ニューノーマル」とは、米国の債券運用会社ピムコのCEO、モハメド・エラリアン氏がサブプライム危機を予言した著書の中で、その後の「別の経済状況」を表現する言葉だ。景気が回復しても元通りの国際経済の水準にはならず、以前の経済とは別物になっているという。

 先の見えない閉塞感が続いている。そこで今回は少しばかり視点を変え、この世知辛い世の中だからこそ得ることができる“ストレスに対峙する傘”についてお話ししようと思う。

 そこで質問です。
 あなたは1日の仕事の中で、『小さな幸せ』を感じる瞬間がありますか? 

 私がA君(27歳)に出会ったのは、3カ月ほど前のこと。大手企業が取り入れたワークライフバランスの効果を検証するために、20代の若手社員と40代の管理職の取材を行うなかで出会った1人だった(この内容については機会がある時にお話しします)。

 A君は地方の有名国立大学を卒業後、大手通信企業に勤務している、今時の、草食系っぽい好青年である。

 私はいつものように名刺を取り出し「河合薫です。よろしくお願いいたします」と頭を下げた。すると、彼も「こちらこそお願いします」といって名刺を受け取った。その瞬間、彼が両手に障害をもっていることに気がついた。「事故にでもあったのかな」と私は思った。私の友人の中に、子供の時に自転車のペダルに手を引き込まれ、手に障害を抱えていた人がいたからである。

あの大きな出来事が、彼の“生きる力”を高めた

 そんなA君が自分の障害について話しだしたのは、2時間近くの取材が終わり、一緒にご飯を食べに行った時だった。

 「僕、手がほら、障害あるんです」
 「うん、さっき気がついたけど、事故か何か?」
 「いえ、僕のは病気です。小さい頃はすごく悩んだこともあったんですが、今はよかったなって思ってるんです」と語った。

 そして、子供の時にいじめられたこと、親が話してくれたこと、さらに、彼の人生で大きな転機となった出来事について語り始めたのである。

 彼はどうやら、私が取材中に「生きる力とは、質のいい環境で様々な経験を通して育まれる力であり、生きる力を高めている人は困難を成長の糧にできる」という話をしていたことに興味をもち、自身の転機となった出来事にどんな意味があったのか、を知りたくて話しだしたようだった。

 「僕、小学校に行くまでは、手の障害のことを全く気にしていなかったんです。母親が『大変な病気になったけど、元気になってよかった。本当によかった』といつも言っていたので、どんな病気だったかも、子供なりにわかっていたし、障害をもつことになった理由も子供なりに理解していた。それに特に不自由することもなかったし、幼なじみは何も言わなかった。なので、あまり気にしなかったんですよね。でも、小学校に行くようになったら、いじめられるようになっちゃったんです」

 「小学校2年生の時、からかわれて大泣きしたことがあったんです。その時の担任の先生に理由を聞かれて話すと、先生も一緒に泣いちゃって―。みんなに話せるんだったら、今の気持ちと自分のこと、みんなに話したらどうかと言われたんです。みんなにA君のこと、知ってもらうきっかけになるからって」

 子供の世界は時に残酷である。それまでの母親や幼なじみと慣れ親しんだ世界から外へ出て、たくさんの見知らぬ子供たちと出会い、同級生から浴びせられた言葉で、傷つき、苦しんだ。そんな時、一緒に泣いてくれた先生に『みんなに話してごらん』と言われた。大人だって自分のつらい経験や自分自身のことをみんなに語るなんて躊躇する。ところが、彼は勇気を出して話した。

 「先生が『みんなに伝えたいこと、思いつくままでいいから話しなさい』と、国語の時間をまるまる僕にくれたんです。それで、もう言うしかないと思い、みんなに僕の病気のこと、僕は全く不自由してないということ、からかわれると悲しいということを話しました。

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「不況だからこそ、手に入る“シアワセ”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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