「ニッポン「文化産業」復活への処方箋」

現代美術、難解だから売れないのか、売れないから難解なのか

目が利く消費者はどこに?

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2009年11月27日(金)

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 景気低迷の影響からブランド品の売れ行きが落ち込んでいる。だが一方で金の価格は高騰している。美術品はどうか。ケースバイケースである。金と同じく景気に左右されない安定資産として評価されるのが理想だが、本当の姿はどうなのか。

 美術もビジネスである。作家や作品への投資、作品の購入・転売の流れがあり、さらに周辺には美術展、関連グッズ、そして批評・評論などの仕事がある。これらが一体となって業界を育てていく仕組みを作り上げなければ、美術品の価格は株式市場に翻弄され続けるのではないか。今回は今後の成長が見込まれる「現代美術」市場について考える。

脚光を浴びつつある現代美術

 美術といえば「日本画」、あるいは、ゴッホ、モネ、ルノアールなどの「近代美術」が一般的だ。「現代美術」の影はまだまだ薄い。確かに一見難解な作品が多い。しかも抽象画や落書きのように見える作品(三角や丸の殴り書きなど誰でも書けそうなものもある)、あるいはオタク文化を題材にするなどいろいろなスタイルがある。いずれにしても美しさや写実性だけでは評価しにくい。

 現代美術は20世紀初頭、米国で生まれた。日本では1950年代に始まり、特に1990年代以降、世界から注目を集める。草間彌生や奈良美智、村上隆などの日本人作家が海外で活躍したためだ。

 昨今は国内でも次第に脚光を浴び始めている。2007年以降は多くの雑誌が現代アート特集を組んでいる。国内最大のオークション、シンワアートオークションも2005年からこれまでに現代美術オークションを3回開催している。このように現代アートは昨今注目を浴びるが、市場はどのように形成されているのか。

まだまだ小さい現代美術市場

 美術品全体で見ると、この分野には2つの市場がある。1つは「プライマリー市場」。これは作家が作ったばかりの作品にギャラリーが値段をつけて売る、最初の売買市場である。2つ目に、それが転売される市場があり、これを「セカンダリー市場」という。

日本では現代美術の裾野はまだ狭い(写真提供:小山登美夫ギャラリー)
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 両方あわせた日本の美術市場規模は1000億円といわれる(Art Trendy.net調べ)。国内オークション、交換会、百貨店美術部、美術商の取引の合計である。このうち現代美術は約1割、約100億円程度と見込まれるが、これは世界の美術取引市場のわずか1〜2%程度でしかない。

 ある画廊経営者は海外の同業者からいつもこう言われるそうだ。「日本に足りないのは顧客。とにかく日本人は現代美術を買わない」。

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著者プロフィール

上山 信一(うえやま・しんいち)

慶應義塾大学総合政策学部教授
1957年大阪市生まれ。京都大学法学部、米プリンストン大学大学院(公共経営学修士)卒。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)などを経て2007年から現職。専門は企業・行政機関の経営改革。大学での本務のほか各種企業の改革アドバイザー、大阪府特別顧問、新潟市都市政策研究所長等を兼務。著書に『だから、改革は成功する』(ランダムハウス講談社)、『ミュージアムが都市を再生する』(日本経済新聞社)、『行政の経営分析―大阪市の挑戦』(時事通信出版局)、『政策連携の時代』(日本評論社)などがある。

深澤 瑠衣子(ふかざわ・るいこ)

慶應義塾大学、クリエーティブ産業研究会

村井 裕実子(むらい・ゆみこ)

慶應義塾大学、クリエーティブ産業研究会

戸沢 百合絵(とざわ・ゆりえ)

慶應義塾大学、クリエーティブ産業研究会



このコラムについて

ニッポン「文化産業」復活への処方箋

 社会が成熟する中で、これから重要な役割を担うのがアニメ、ゲーム、日本映画、クラシック音楽などの分野だ。これをビジネスと捉えるならば、「文化産業」と名づけることができる。製造業が弱体化する中で、こうした産業は日本の次の成長の糧の1つとして期待される。これらのビジネス自体は昔から存在する。だが、きちんと儲かる事業形態、つまりビジネスモデルの構築に成功したものは少ない。映画、アニメ、現代美術、和文化などさまざまな分野を例にとってビジネスモデルを評価していく。
 慶応義塾大学総合政策学部上山信一ゼミとのコラボレーション企画。
 監修・編集=上山信一教授

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