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日本の産業界は20年をムダにした

『ザ・ゴール』ゴールドラット博士の教え(その1)

  • 大矢 昌浩

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2009年12月1日(火)

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 「私のやっていることは(トヨタ生産方式を生み出した)大野耐一氏の続きに過ぎない」と、エリヤフ・ゴールドラット博士は言った。

 サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)の理論を小説形式で解説し、世界で1000万部超を売り上げた大ベストセラー『ザ・ゴール』(ダイヤモンド社)の著者だ。

 新刊『ザ・クリスタルボール』(ダイヤモンド社、原題『Isn't It Obvious?』)の出版キャンペーンで11月末に来日し、東京で行った講演での発言だ。

ベースはトヨタ生産方式

 『ザ・ゴール』が製造業向けに制約理論(TOC:Theory of Constraints)を説いた本だったのに対し、新刊では小売業向けにロジスティクスを解説している。

 「『ザ・ゴール』が世界のものづくりの世界を変えてしまったとするなら、本書『ザ・クリスタルボール』は、小売業のあり方を変えてしまったと後世語られることになるだろう」と出版社はぶち上げる。

 もっとも、新刊の内容は、『ザ・ゴール』で描いた製造業向けの理論を小売業に転用したものであって、そのベースが日本のトヨタ生産方式にあるのは変わらない。

 『ザ・ゴール』は米国では1984年に出版されているが、その邦訳をゴールドラット博士は2001年まで許さなかった。

 理由は日本企業の国際競争力が抜きん出ており、そのギャップを埋めて貿易不均衡を解消する必要があると考えていたからだ。つまり、日本はSCMの目標だった。

 「日本はほかの国とは違う。特別な国だ」とゴールドラット博士は言う。海外のSCMの専門家から、そう持ち上げられて違和感を持つ日本人は筆者だけではないだろう。

 バブル崩壊以降、我々は日本企業が負ける姿しか見ていない。しかも、SCMは1990年代後半にERP(Enterprise Resource Planning=統合基幹業務システム)やSCP(Supply Chain Planning=サプライ・チェーン計画システム)と呼ばれる需要予測ソフトの外資系ベンダーが日本に持ち込んだ米国由来の経営コンセプトだ。

 そのオリジナルが実は日本企業にあり、日本企業に追いつくことを目的に米国の産業界が開発した経営手法を、再び日本が輸入して学んでいるという、ややこしい構図になっている。

 これはゴールドラット博士のTOCに限ったことではなく、SCMの関連資料には、3文字英略語やカタカナ言葉のキーワードがうんざりするほど登場するが、それらのほとんどは米国の産業界が日本企業をキャッチアップするために開発したものだ。

 こうしたキーワードは“バズワード”(ビジネス分野の流行語)として非難されることも多いが、コンサルタントやIT(情報技術)ベンダーにとってはメシの種になってきた。

 ロジスティクス専門誌を発行する筆者としても無視するわけにはいかないので、何とか覚えようとするのだが、容易に頭に入らない。

米国には「流通」の概念がなかった

 そこで一連のキーワードを時系列で並べて登場した背景を整理してみたところ、いくらか忘れにくくなった。自己流の解説ではあるが、この機会に簡単に紹介しておきたい。

 そもそも米国でSCMという言葉が生まれ、広く普及していった最大の原動力が、米国市場における日系メーカーの台頭だった。

 SCMの誕生について、ジーン・ティンドール氏という米国のベテランコンサルタントに次のように聞かされたことがある。1999年のことで、当時彼は米アーンスト&ヤングのシニアパートナーを務めていた。

 その彼いわく「1980年代初頭に米ゼロックスのロジスティクス改革で初めてSCMという言葉を使った。原材料の調達から末端の消費者に至る事象の連鎖(チェーン・オブ・イベント)を管理しようという、それまでにないアプローチの改革だった。ここからサプライチェーンという言葉が自然に浮かんできた」。

 それが本当にSCMという言葉が使われた最初なのかどうか、筆者には確認ができていないが、日米貿易摩擦の時代に突入した1980年代初頭に米国でSCMという言葉が使われるようになったのは間違いないようだ。

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