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権力暴走のからくり、社長の“甘い蜜”

上司に服従する部下は“思考停止”に

2009年12月3日(木)

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 「やっぱり社長は楽しい。だって、自分ですべて決められる。大変だとか、孤独だとか、いろいろ言うけど、自分で決められるのは、何事にも替え難い喜びです」

 これは以前、世界に通じるワザを持つ中小企業を取材する番組で出会った、ある会社の社長が語っていた言葉である。社長という立場がもたらす喜び――。おそらくこのトップは、それがいかに“危険な感情”なのか、気づいていなかったのではないだろうか。

 知人のA氏がトップの座についたのは、昨年の春。先代の社長は会長になり、A氏も社長の喜びに浸れるはず……だった。

 「こんなことを言ったら罰が当たるかもしれないけれど、どこか悪くなって入院して欲しいとも思ってしまう。役員面接もセットしてやっと中途採用を決めたのに、会長は突然NGを出した。一度はOKを出し、やっぱりダメと言い出した。内定を通知していたから既に相手も退職届を出していて、結局、違約金を払うことになったんです。本当にたまらない。訳がわからない」。A氏は取り乱した様子でそう語りだした。

 A氏の会社は200人規模のオーナー会社。先代の社長は75歳まで陣頭指揮をとっていたが、昨年、高齢を理由に会長職に退いた。A氏によれば、本当は、多くのオーナー社長がそうであるように、子供に社長職を任せたかったらしい。ところが、そのジュニアは“社長の息子”という肩書きだけで存在しているような人であり、二代目となって継ぐ器量も実績もなかった。そこで、社長のイスを社内ナンバー2だったA氏に譲り、自身は会長職に退いた。ただし、会長は息子を社長室に送り込み、A氏を間接的に見張ったのだった(あくまでもA氏の解釈です)。

 そして、今回の採用中止の一件である。

社長はその座を退いても影響力を与えたい

 その採用でA氏は熟慮を重ね、「やっと見つけた人材」だったそうだ。新しい人材を採用するにはコストもかかれば、労力もかかる。ましてや即戦力を期待する中途採用なのだから、安易な気持ちでは採用などできやしない。

 「よし、あとは役員会の承諾を得るだけだ」とホッとしたところで、突然のNG。しかも、説得すればするほど、頑なまでにNGを出す。採用された人材に問題があるのなら、まだ納得もできるのだが、どうやらそういうわけでもないらしい。ただ単に、「なんで、キミが勝手に決めるんだ」と、A氏の権限で採用を決めたことに不快感を示したそうだ。

 「代表権をもったまま会長になったから、無視するわけにはいかない。今回の件も違約金が発生したから、一度はNGを取り下げた。ところが、占いで何か言われたようで、やっぱりダメと言い出した。社長時代から、何かを決める際は占い師に相談しているようなんです。おまけに、今回の人事問題を皮切りに色んなことに口を出し始め、院政が始まった。入院でもして欲しいと本気で思えてきます」

 A氏のケースだけでなく、社長の座を退いた後でも影響力を行使し続けるトップは実に多い。特に一代で築き上げたオーナー会社のトップは、「会社は俺のもの。俺が守らなくて誰が守る。俺が作った会社を壊されてなるものか」などと、自分ですべて管理し、自分の判断こそがすべてだと思い込む。それでも迷いが生じるのが人間だ。そこで、占い師に占ってもらったりするわけだ。

 「大切な決断を高校生でもあるまいし……」とも思うが、実際にそういうトップは少なくない。ただし、「〇×なんですが、どうしたらいいでしょうか?」などと、ある特定の出来事に関する解を求める人生相談とは異なり、「今、行動を起こすべきか? とどまるべきか?」と、星回りなどから自分の状態を占ってもらい、自身の決断を下すのだとか。

 いずれにしても、自分の権力を再構築させるために人事を利用するのは常套手段の1つである。新しくリーダーに任命された人が、自分の下の重要なポジションにいる人物を外し、自分が外部から連れてきた人と交代させることで、「自分のカラー」を出そうとすることもある。A氏の上の会長も、自分の存在感を示したいが故のNGだったのかもしれない。

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「権力暴走のからくり、社長の“甘い蜜”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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