「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

「松井MVP」はカネで買った?(中)

チームを甘やかす分配金

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2009年12月3日(木)

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 前回のコラムでは、今年のMLBシーズンで、プレーオフに進出したチームのほとんどがカネ持ち球団だったことを解説しました。全30球団中、唯一2億ドルを突破する年俸予算を組み、唯一3ケタの勝ち星(103勝)を挙げたニューヨーク・ヤンキースが象徴です。プレーオフ進出の8チーム中、実に6チームが年俸予算に1億ドル以上を注ぎ込んでいました。平均年俸総額は8833万ドルだったので、「カネを使わなければ勝てない」という現実が見て取れます。

 ヤンキースは、年俸総額が3681万ドルで最下位のフロリダ・マーリンズに比べ、実に約5.5倍のカネを選手年俸につぎ込んでいました。ヤンキースは特別だとしても、年俸総額上位4分の1(7チーム)の平均(約1億3382万ドル)と、下位4分の1のそれ(約5408万ドル)を比べると、約2.5倍の開きがあります。米国で戦力均衡を最も上手く達成していると言われるNFL(米プロフットボールリーグ)では、この数値が1.5倍を超えることはありません。

 年俸総額に大きな差が出るのは、チーム収入の格差が開いているからです。大きな原因は、前回も指摘したように、多額のローカルテレビ放映権料がチームの収入となるためです。1980年代に入ってテレビ放映権料が高騰していくと、大都市チームと地方都市チームの収入格差が拡大していきました。収益分配制度が導入される直前の1995年の球団別のメディア収入(ローカルテレビ放映権収入とラジオ放送権収入の合計)を見ると、ニューヨークやロサンゼルス、シカゴなど、人口の多い都市にフランチャイズを置くチームのメディア収入が大きいことが分かります(ここでもヤンキースの収入が突出しています)。

 しかし、MLBはこうした構造的な収入格差を、長期にわたって是正しませんでした。いや、できなかったと言った方が正確かもしれません。ローカルテレビ放映権収入は、チームにとって収益の柱となっていました。この巨額の既得権益を、チームが手放すはずがありません。そして、MLBは「百万長者と億万長者の喧嘩」と揶揄された史上最悪のストライキに突入し、観客動員数(1試合平均)が2割以上も減るという痛手を被るわけです。

 そんな窮地に立って、やっとチームの既得権にメスが入りました。1996年、収益分配制度と課徴金制度が導入されたのです。その時、MLBは設立から90年以上がたっていました。

貧乏球団の救済制度

 前回も少し触れましたが、収益分配制度とは、高収入チームから低収入チームに収益を再分配することです。それがチーム間の収入格差を縮小し、戦力バランスを均衡させるわけです。その手法は、スポーツリーグによって微妙に違いますが、1996年にMLBが導入したのは「スプリット・プール方式」と呼ばれるものでした。これは、チームから徴収したカネをリーグがプールし、その一部を全チームに均等に配分した後、残りを低収入チームを対象に傾斜分配するというものです。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)



このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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