儲かっている小売業は、決して規模の大きな企業でない。かつての売り上げ日本一だったダイエーは、利益では日本一にはなれなかった。
営業利益率で言うと、もっと鮮明である。業態別に営業利益率をランキングすると、規模の大小と利益率の間には相関はなく、むしろ規模の大きい企業が営業利益率が低い傾向になっていることが多い。
これはメーカーなどの他産業と大きな違いである。メーカーではマーケットシェアが生産効率に影響し、規模が大きな企業ほど利益率も高く、利益額では大きな差がつくことが多いように感じる。小売業はそれがないのである。
顧客満足は規模ではない
私は、「売り場がお客様に満足されているか」が利益の差になっていると思っている。1店舗1店舗の売り場であり、1人ひとりのお客様の問題である。企業規模とは関係ない。
問題は現場である。売り場という現場での実態が問題なのである。経営者の考えていることが現場で具体的に実行されているか、本部の指示が売り場で個々の店舗の実情に合わせて実行されているか、それがお客様の満足につながっているかが、小売業の利益を決めているのである。
これはマネジメントレベルが高いか低いかの問題である。私は、経営者の言っていることがどれだけ現場で実行されているか、本部の指示が売り場でどれだけ実行できているかの度合いがマネジメントレベルであると思っている。マネジメントレベルの高さが小売業の利益に大きく影響していると思っている。
かつて私はイトーヨーカ堂グループの経営戦略を担当する部署にいた。当時イトーヨーカ堂は利益日本一であり、グループ各社の経常利益率も高かった。外部から、どうして経常利益率が高いのかと質問されることが多かった。
評論家はいろいろ言っていたが、内部にいた私は違う見方をしていた。私はイトーヨーカ堂グループの経常利益率が高いのはマネジメントレベルが高いからだと思っていた。
その理由はこうである。小売業の経営者はみんな同じようなことを言っている。イトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんは「お客様第一だ」と言っていたし、ダイエーの中内イサオ(エに刀)さんも「フォア・ザ・カスタマー」と言っていた。西友の堤清二さんも、ジャスコ(現・イオン)の岡田卓也さんも、言っていることに大きな差はなかった。
小売業は当たり前のことをきちんとすること、継続し続けることが大事であり、経営者が言っていることはどれも同じようになる。
しかし小売業で差がつくのは現場での実行レベルである。経営者は同じようなことを言っていても、現場で実行している企業と、していない企業の差が大きいのである。マネジメントレベルの高い会社は現場、売り場での実行レベルが高いから利益が上がっているのである。マネジメントレベルは規模が大きくなると上げにくくなり、一般的に規模の大きい小売業は利益が上げにくくなるという現実につながっていると考えている。
イトーヨーカ堂を退職し、コンサルタントとして他社の実態を見るにつけ、マネジメントレベルの差が利益につながるという思いは強くなった。
例えば、マスコミ関係者と一緒に店舗での状況を取材することがあった。本部から許可をもらい、店舗に連絡してもらい、実際に店舗に行くと、受付で聞いていないから許可できないとか判断できないとか言われ混乱することが何回もあった。
結局は誰かには通達は出されていたのがうまく伝わっていないだけで、何とか事なきを得ることがほとんどだったが、イトーヨーカ堂ではこんなことは一切なかった。受付に行くと、「聞いています」「腕章はこれです」「写真を撮る時にはこういうことに注意してください」といった準備万端な状況であった。マネジメントレベルの差は大きいなと感じた。
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成城石井相談役。1956年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、79年にイトーヨーカ堂入社。経営トップ直結の「業務改革」の主要メンバーとして構造改革に取り組む。その後、プライスウォーターハウスコンサルティングのシニアコンサルタント、財団法人流通経済研究所の研究員を経て、90年7月、流通コンサルティングを手がけるリテイルサイエンスを設立。ファーストリテイリング(ユニクロ)や良品計画の経営改革を担当する。2003年9月にドラッグイレブン代表に就任、2007年1月から成城石井社長を務め、2010年9月から現職。







