(前回から読む)
今回から実存する企業の財務諸表を分析していきましょう。まずは日本航空(JAL)の分析です。第1回と第2回のコラムで、会計の初心者が財務分析をする場合は、同業他社比較や期間比較が不可欠だと言いました。JALの競合会社である全日本空輸(ANA)のデータと同業他社比較をしながら期間比較をしてみましょう。まずは損益計算書(PL)からです。
図1はJALとANAの最近の5年間の売上高を比較したものです。JALは2007年をピークに売上高が下がっています。一方ANAは2009年3月期を除けば、概ね増加傾向にあったことがわかります。

両社の「営業総利益」を比較してみましょう(図2)。この営業総利益というのは一般の会社では「売上総利益」といっているもので、私たちが通常「粗利」と呼んでいるものです。一貫してANAの粗利の方が高いのがわかります。営業総利益率(粗利率)を表にしたのが表1です。最近の5年間平均の粗利率はJALが17.9%でANAが24.2%。粗利率で約6%の開きがあるわけです。
この具体的な原因については有価証券報告書に記載されているPLだけからではわかりませんが、新聞等で報道されているように、不採算路線の多さや大型のジャンボジェット機による効率の悪さなどが影響しているのでしょう。

表1 JALとANAの営業利益比較表
営業利益(粗利) (単位:億円)
| 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 5年計・平均 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| JAL | 4442 | 3602 | 4167 | 4534 | 2633 | 19378 |
| ANA | 3349 | 3517 | 3749 | 3737 | 2678 | 17030 |
| JAL(%) | 20.9 | 16.4 | 18.1 | 20.3 | 13.5 | 17.9 |
| ANA(%) | 25.9 | 25.7 | 25.2 | 25.1 | 19.2 | 24.2 |
当期純利益率を比較してみましょう(図3と表2)。ANAは2009年3月期だけがわずかに赤字ですがそれ以外の4年間はずっと黒字です。一方、JALは過去5年のうちの3年が赤字で、それもかなりの額の赤字を計上しています。

表2 JALとANAの当期純利益比較表
(単位:億円)
| 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 5年計・平均 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| JAL | 301 | -472 | -163 | 169 | -632 | -797 |
| ANA | 270 | 267 | 327 | 641 | -43 | 1462 |
| JAL(%) | 1.4 | -2.1 | -0.7 | 0.8 | -3.2 | -0.7 |
| ANA(%) | 2.1 | 2.0 | 2.2 | 4.3 | -0.3 | 2.1 |
JALとANAのPLを見比べた時にすぐに気が付くことがあります。それはJALの人件費率の高さです。表3を見てください。JALの売上高に占める人件費は最近の5年間平均で4.7%であり、ANAは2.7%しかありません。JALとANAのPLを比較すれば、JALはANAより高コスト体質の企業であることがわかります。
表3 JALとANAの人件費率比較表
(単位:%)
| 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 5年計・平均 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| JAL | 5.5 | 5.1 | 4.6 | 4.1 | 4.1 | 4.7 |
| ANA | 2.8 | 2.7 | 2.6 | 2.6 | 2.5 | 2.7 |
PLとBSはつながっている
次はPLとBS(貸借対照表)の図解分析をするのですが、まだPLとBSのつながりについて説明していなかったので次ページで説明しておきましょう。
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