「財務3表で読み解くニュースな企業」

JALの“問題”を財務3表から読み解く

【実践講座その1】JALとANAを比較してみよう

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2009年12月10日(木)

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 今回から実存する企業の財務諸表を分析していきましょう。まずは日本航空(JAL)の分析です。第1回第2回のコラムで、会計の初心者が財務分析をする場合は、同業他社比較や期間比較が不可欠だと言いました。JALの競合会社である全日本空輸(ANA)のデータと同業他社比較をしながら期間比較をしてみましょう。まずは損益計算書(PL)からです。

 図1はJALとANAの最近の5年間の売上高を比較したものです。JALは2007年をピークに売上高が下がっています。一方ANAは2009年3月期を除けば、概ね増加傾向にあったことがわかります。

 両社の「営業総利益」を比較してみましょう(図2)。この営業総利益というのは一般の会社では「売上総利益」といっているもので、私たちが通常「粗利」と呼んでいるものです。一貫してANAの粗利の方が高いのがわかります。営業総利益率(粗利率)を表にしたのが表1です。最近の5年間平均の粗利率はJALが17.9%でANAが24.2%。粗利率で約6%の開きがあるわけです。

 この具体的な原因については有価証券報告書に記載されているPLだけからではわかりませんが、新聞等で報道されているように、不採算路線の多さや大型のジャンボジェット機による効率の悪さなどが影響しているのでしょう。

表1 JALとANAの営業利益比較表
営業利益(粗利)                   (単位:億円)

  2005 2006 2007 2008 2009 5年計・平均
JAL 4442 3602 4167 4534 2633 19378
ANA 3349 3517 3749 3737 2678 17030
JAL(%) 20.9 16.4 18.1 20.3 13.5 17.9
ANA(%) 25.9 25.7 25.2 25.1 19.2 24.2

 当期純利益率を比較してみましょう(図3と表2)。ANAは2009年3月期だけがわずかに赤字ですがそれ以外の4年間はずっと黒字です。一方、JALは過去5年のうちの3年が赤字で、それもかなりの額の赤字を計上しています。

表2 JALとANAの当期純利益比較表
                          (単位:億円)

  2005 2006 2007 2008 2009 5年計・平均
JAL 301 -472 -163 169 -632 -797
ANA 270 267 327 641 -43 1462
JAL(%) 1.4 -2.1 -0.7 0.8 -3.2 -0.7
ANA(%) 2.1 2.0 2.2 4.3 -0.3 2.1

 JALとANAのPLを見比べた時にすぐに気が付くことがあります。それはJALの人件費率の高さです。表3を見てください。JALの売上高に占める人件費は最近の5年間平均で4.7%であり、ANAは2.7%しかありません。JALとANAのPLを比較すれば、JALはANAより高コスト体質の企業であることがわかります。

表3 JALとANAの人件費率比較表
                            (単位:%)

  2005 2006 2007 2008 2009 5年計・平均
JAL 5.5 5.1 4.6 4.1 4.1 4.7
ANA 2.8 2.7 2.6 2.6 2.5 2.7

PLとBSはつながっている

 次はPLとBS(貸借対照表)の図解分析をするのですが、まだPLとBSのつながりについて説明していなかったので次ページで説明しておきましょう。

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著者プロフィール

國貞 克則(くにさだ・かつのり)

1961年生まれ。1983年東北大学工学部卒業後、神戸製鋼入社。海外プラント輸出、人事、企画などを経て、96年米クレアモント大ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年、ボナ・ヴィータ コーポレーション設立。中小企業を中心にコンサルティング活動を行っている。主な著書に『財務3表一体理解法 』、『財務3表一体分析法 』、『家計3表生活防衛術 』、『財務マネジメントの基本と原則 』、『20代に考えるべきこと、すべきこと』ほか多数。最新刊は『決算書でよむ企業と業界力



このコラムについて

財務3表で読み解くニュースな企業

このコラムは、会計に苦手意識を持つ人のためのものです。会計の素人のための財務分析講座です。財務分析といっても流動比率や自己資本比率などの財務分析指標を説明するものではありません。財務諸表から会社の状態を読み解くコツを説明するものです。つまり、財務諸表のどこを見れば何がわかるのかを説明していきます。会計分野に深い知識がなくても財務諸表を読み解くことは可能です。このコラムを執筆する私自身が元々機械エンジニアですし、いままでに仕訳の勉強をしたこともありません。そんな会計の素人でも財務分析のポイントさえわかっていれば、財務諸表から会社の状態を読み解くことができます。

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