「資源ウォーズの世界地図」

アフガンで米国は戦争、中国は銅鉱山を取得

資源開発といつも隣り合わせの政治腐敗

バックナンバー

2009年12月17日(木)

1/3ページ

印刷ページ

 今、アフガニスタンは権益・公益・サービスなどに絡む政府高官の贈収賄が蔓延し、世界第2位の腐敗国とランク付けされている。第1位は内戦に明け暮れるソマリアである。第3位はミャンマー、第4位がスーダンそして第5位はイラクとなっている(腐敗や汚職の防止を目的に活動するNGO=非政府組織=であるトランスペアレンシー・インターナショナルのTransparency International's rankingによる)。

 ちなみに、最も腐敗が少ない国は、第1位ニュージーランド、第2位デンマーク、第3位シンガポール並びにスウェーデン、そして日本は第17位となっている。

 腐敗の状況が悪くなる一方のアフガニスタンでは、人々の間でささやかれている次のようなジョークがあるそうだ。

 「ある公務員のグループが、ハーミド・カルザイ大統領に面会を求めて次のような質問をした。『腐敗と戦うための大統領のプランを聞かせていただきたい』。すると、カルザイ氏は『私のプランを申し上げよう。しかし、その前にいくらか金をくれなきゃ』と答えた」(Ben Arnoldy: Staff writer of The Christian Science Monitor)

アフガンに世界最大級の銅鉱山

 2009年8月に行われた大統領選挙の不正行為も取り沙汰されたこともあり、米国はじめ西側諸国は、引き続きカルザイ政権をサポートするためには、カルザイ氏が腐敗問題に真剣に取り組まなければならないと警告を発した。

 このような国際社会の強いプレッシャーに対して、11月16日になって、新たに腐敗防止チームを発足させることが発表された。そのチームは米国とインターポール(Interpol=国際刑事警察機構)の助けを借りて活動するというものだ。

 ヒラリー・クリントン米国務長官は、11月15日にアフガン政府は米国の新たな要求を実行することによって、「腐敗した人間を決して野放しにしないことを証明しなければならない」と述べた。

 証明する1つの方法として、イシャク・アラカオ法務長官は、通常の司法手続きでは裁判できない政府高官を、憲法に基づいて裁く特別法廷を設置すると発表した。そして、「アフガニスタンは腐敗のピークにあることを皆が知っている。収賄が疑われている政府首脳陣のリストも持っている。6カ月以内に腐敗を止めることを約束する」と語った。

 さて、このような腐敗にまみれたアフガニスタンにおいて、11月17日のAFP通信(Agence France Pressee)は、2007年11月に中国の国営企業(MCC=China Metallurgical Group Corp)が8億ドルで落札した銅鉱山の探鉱・開発権益取得に当たって、3000万ドルの賄賂をアフガニスタン鉱山大臣(Minister of Mines)モハメッド・イブラヒム・アデル氏(Mohamed Ibrahim Adel)が受け取ったと報じた。その情報源は、米軍の情報部のレポートによるもので、「情報の確度は高い」ということだ。

 アイナク鉱山(Aynak mine)と呼ばれるこの銅鉱山は、首都カブールの南部、ロガール県アイナクにある。確認されている埋蔵量が6億9000万トンで、鉱石の品位が1.65%と高く(大規模露天掘り銅鉱山の一般的な品位は0.5%)、1130万トンの銅が取れるので300億ドルの価値があり、世界最大級と言われる。

 投資額は28億7000万ドルで、アフガニスタンの歴史上最大の外資による直接投資である。しかし、開発地域には電力を供給する発電所はなく、採掘した鉱石を運搬する鉄道もない。従って、投資額の中には400メガワットの石炭火力発電所と鉄道建設などインフラ整備も含まれている。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント7 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

谷口 正次(たにぐち まさつぐ)

谷口 正次

資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。



このコラムについて

資源ウォーズの世界地図

産業を支える資源に対するリスクが高まっている。銅やアルミなどの非鉄金属はもちろん、自動車の触媒に必須なプラチナ、次世代電気自動車に使われるリチウムなどのレアメタルも、“資源メジャー”や新興国の国家戦略とも絡み始めている。これまでカネさえ出せば入手できたさまざまな産業のキーとなる鉱物資源の囲い込みが始まっている。このコラムでは、鉱山技術者として世界の現場を踏破してきた筆者が、これからの資源リスクについて解説する。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン