すごいことになっている。「ゆとり世代」に合わせて、新人教育のやり方まで変えている企業があるという。
前々回のコラム「会社はヒマつぶし?」で、「企業は『いい人材を!』と言っていながら、自分たちにもない能力を新卒社会人に求めているのではないだろうか」との私的見解を述べたばかりだが、その番組を見ていて、企業の求める「いい人材」の意味がますますわからなくなってしまった。
先週の金曜日にNHKで放送された『“ゆとり”と言われる若者たち』(番組HPはこちらから)という番組である。
「ゆとり世代」は、1987年4月2日生まれ以降で「ゆとり教育(=2003年度学習指導要綱による高校教育)」を受けた世代を「ゆとり第一世代」と位置づける場合と、1984年度生まれで土曜日の休みを経験している世代を指すことがあるようだが、この番組では後者を取り上げているようだった。
番組ではある大手企業を取り上げ、その企業内の取り組みを報じていた。新人教育の期間を大きく伸ばし、30代半ばの中堅社員を指導係にし、「褒めて育てる」から、「叱って育てる」という、ゆとり世代に合わせた新人教育を徹底しているという。
ゆとり世代は、叱られることに慣れていないとみられている。そこで、「叱る」→「叱る理由を説明する」を一連の教育方針として、社会人としてのマナーを覚えさせる。ちょっと先輩社員に叱られただけで、「自分は否定された」と自尊心を低下させ、会社を辞めてしまう新人も多いので、それを防ぐのが目的だそうだ。叱られる経験を積んで免疫をつけさせる、ということなのだろう。
名刺の渡し方や電話の応対の仕方まで細かく指導し、そして「叱る理由」を事細かに説明している風景が放映されていた。新人に求められているのは、仕事の内容や提出書類の内容ではなく、「決められた期限内に提出する」ということのみ。まるで“学校”である。
そして、指導する側のレベルも上げるために、「キミのおかげで助かったよ」というような一言を付け加えると教育効果が高まる、といった教育のノウハウを教えている様子も合わせて報じられていた。
新人教育をする側も受ける側も大変
非常に大変そうである。教育される側も教育する側も、ひどく大変そうだ。期間中、行動をチェックしチェックされ、叱り叱られ、その都度、理由を話し理由を聞かされる。親にだって、そこまで見張られたことはない。私だったら多分、その時点でイヤになり、出社拒否をしてしまう。1週間でうんざりする。耐えられない。
と、色々と思うところはあるのだが、実際に私が取材したものではないし、テレビで放映されている場合にはディレクターやプロデューサーなど制作陣の狙いによって取材内容が選択されていることがあるので、この研修そのものについて意見するのはやめておく。
ただ、教育カリキュラムや教育期間を変えなくてはならないほど、働きざかりの中堅どころを新人教育だけに集中させないといけないほど、若手に手をやいている実情がある、ということはよくわかった。そして、それに前向きに取り組んでいる健全な会社がある、ということも制作者の意図に関係なくよくわかった。
それに、入社直後に行われる研修は“組織の一員”になるための重要な儀式であるため、新人教育に力を入れるのは悪いことではない。
新人の研修プログラムは、オリエンテーションと呼ばれることがあるが、「オリエント(Orient)」とは「東方」。反対語は「オクシデント(Occident)」で「西方」だが、もともとはラテン語の「太陽が落ちる所」。
つまり、オリエンテーションとは、昇ってきた太陽(=新入社員)が、「周りの状況や立場を正しく把握し、正しい方向に向かう」ためのもの。正しい方向とは、企業が求める働き方であり人材である。すなわち、ただ単にスキルやマナーを教えるだけの新人研修プログラムが、本来のオリエンテーションの目的を果たすことはない。
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博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『







