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【特別対談】“天地人”火坂雅志氏と語る戦国リーダー論(前編)

  • 鈴木義幸

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2009年12月24日(木)

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 コーチングのトッププロである鈴木義幸氏が、各界で活躍するリーダーやリーダー論者と語り合う。今回はNHK大河ドラマ「天地人」の原作者・火坂雅志氏とともに時代を超えて求められるリーダーシップについて論を展開した。

 60冊以上もの歴史小説を書き続けてきた火坂氏は、戦国武将が実践してきた数々の心得を紹介する。武将たちにとっても確固たるリーダーシップをもつことは、乱世を生き抜く上で不可欠だったようだ。武田信玄や上杉謙信ら、名将が遺した言葉は、現代の乱世において、より一層の輝きを増している。

 この記事は、2009年10月21日に都内で行われたコーチA、ジャパンタイムズ共催イベント「経営者のための 乱世を生き抜く“リーダー”とは」の内容の一部を再構成したものです(進行は、ジャパンタイムズ編集局次長の大門小百合さん)。

(写真:三浦義昭、以下同)

火坂雅志(ひさか・まさし)

小説家。新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業。『別冊歴史読本』副編集長をつとめた後、『花月秘拳行』で作家デビュー。上杉謙信の義の心を受け継いだ直江兼続の生涯を描いた『天地人』上・下(NHK出版)のほか、主な著書に『黒衣の宰相』(文藝春秋)、『黄金の華』(文藝春秋)、『沢彦(たくげん)』(小学館)、『全宗』(小学館)、『家康と権之丞』(文藝春秋)、『虎の城』上・下(祥伝社)、『覇商の門』(祥伝社)、『壮心の夢』(文藝春秋)、『骨董屋征次郎手控』(実業之日本社)、『臥竜の天』上・下(祥伝社)などがある。

鈴木義幸(すずき・よしゆき)

コーチ・エィ取締役社長。慶應義塾大学文学部卒。マッキャンエリクソン博報堂勤務を経て、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、コーチ・トゥエンティワンの設立に参画。延べ200社以上の企業において管理職を対象とするコーチング研修を行う。また200人を超える経営者、管理職のマンツーマンコーチングを実施。著書に『職場スイッチ』(ダイヤモンド社)、『リーダーが身につけたい25のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『エグゼクティブ・コーチング入門 』(日本実業出版社)など。

――「リーダー」のタイプは、よく戦国時代の武将に当てはめて語られます。熟慮型は家康で、野心型は秀吉といった具合に。『天地人』で知れわたった直江兼続のように「愛」を重んじるタイプのリーダー像も考えられます。火坂さんが戦国武将の中で、私たちのモデルとなるような人物を挙げるとしたら誰でしょうか?

火坂:戦国武将はとにかくたくさんいますが、まず、紹介したいのは武田信玄。私が座右の銘の一番目にしているのは武田信玄の言葉なんです。

 私は上杉謙信が本拠としていた新潟の出身なので、ライバルの武田信玄には違和感があったんですけれどもね。あるとき、出版社から「信玄の生き方を雑誌に書いてほしい」と依頼があって、「なんか嫌だな」と思いながら書いているうちに驚いた。この武将は大変な人間通ではないか、と。私は信玄に惚れ込んでしまいました。

信玄が喝破した勝ち負けの法則

――座右の銘にしている言葉はどのようなものですか?

火坂:「勝負の事、十分を六分七分の勝は十分の勝なり。子細は八分の勝はあやふし。九分十分の勝は、味方大負の下地なり」です。

 勝負というものは、60%や70%の勝ちで十分なのだというわけです。80%勝てば更によさそうだけれど、そこまで勝つと逆に危うくなる。90%以上の勝ちとなれば完全勝利に近いですが、これは味方が大負けをする環境づくりにしかならないということです。

 武田信玄は、勝利を六分、七分にとどめておけば、慢心せず、修正点を改めながら勝負を続けていけるということを、自らの経験から導き出したんです。

 期せずして私自身も、六分七分の勝ちだったんです。本を世に出してもなかなか売れないという時期が続いて、書いた数は60冊ぐらいなりました。小ヒットした本もあれば、売れなかった本もあります。それを繰り返してきたことが、後から考えれば自分を鍛えることになりました。いまは、慢心させてもらえなかったことを、神様に感謝しています。

――武田信玄はとても教訓的な言葉を遺したのですね。戦国の武将は人材が豊富だった。鈴木さんに尋ねます。現代のリーダーにもタイプがあると思われますが。

鈴木:ええ。リーダーのタイプの分け方はいろいろとありますが、その一つとして、ケン・ブランチャードというアメリカの行動心理学者が、1970年代に「SL理論」(Situational Leadership Theory)を発表しています。彼は部下の成熟度のレベルに合わせて、リーダーシップを4つの型に分けました。

 最初は「指示型」で、すべてについて「こうしなさい」「ああしなさい」と指図するリーダーシップです。次に「説得型」。これは、部下などを突き放さず、自分のやりたいことを説得して、その気にさせるタイプです。自分もいっしょになって取り組むタイプは「参加型」。方向だけ定めて、あとは部下に任せるタイプを「委任型」としました。

 現場サイドから見ると、これとは別に大きく二つのタイプに分けられるのではないでしょうか。「オーナー経営者」と「サラリーマン社長」です。やはりこの二つは違うと思うんですよね。

 オーナー経営者は絶対的な権限をもっています。でも、サラリーマン社長の場合は、自分の上のポジションに副会長、会長だけでなく、名誉会長や相談役までいます。後者は、“権限”でなく“影響力”をどう使って人を動かすかということが大切になるのだと思います。

謙信が5文字で示した大将の心得

――リーダーシップ論という点で戦国武将の話に戻しますと、彼らが大切にしていた指針や原則のようなものは?

火坂:原則は人それぞれ違いますが、次に上杉謙信を紹介しましょう。武田信玄とは互いに力を認め合う関係で、二人は「竜虎」と呼ばれていました。

 上杉謙信は、『北越軍談 謙信公語類』という語録の中に残しています。じつは、この第一カ条に、偶然ですが「天地人」という言葉が出てきます。

 謙信はこう言いました。「天の時」「地の利」「人の和」という三つがすべて完璧に整った武将は、昔も今もほとんどいない。しかし、この三つを整えていけば、もはや敵対できる者はいなくなるし、争いもなくなるのだ、と。

 そして謙信は、大将の心得のようなものを第四カ条で述べています。

 大将は強くなければならないけれど、ただ強いというだけではまことの大将とはいえない。では、何が必要なのか。謙信は次の5つの漢字で示しました。「仁、義、礼、智、信」です。

 最近、テレビでも同じタイトルの『JIN-仁』というドラマが放映されていますね。「医は仁術なり」という言葉もあります。医者というものは、ただ金儲けをするだけでなく、弱い人を助けるという精神がなければなりません。

 この「仁」は、大将の心得としても一番目になります。上に立つ人間は、弱い存在の者の暮らしが成り立つよう考え、守り、庇わなければならないということです。

 次の「義」は、謙信が大事にした「正義」の「義」です。私利私欲だけでなく、公のために自分は何ができるのかを念頭に置きながら行動をする。これが義の精神です。

 国民のため、国家のために何ができるかを考えてこそ、上に立つ資格があるということです。謙信ははっきりとそう言っています。

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