「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

「松井MVP」はカネで買った?(下)

うわべだけの戦力均衡策

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2009年12月24日(木)

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 これまでのコラム【「松井MVP」はカネで買った?(上)(中)】で、金持ちチームがプレーオフ進出を独占するMLBの現状を解説してきました。「持てるチーム(金持ちチーム)」と「持たざるチーム(貧乏チーム)」の格差を解消するはずだった収益分配制度が、逆に格差を固定化している現実があります。リーグから受け取る分配金という「不労所得」を当てにしてしまうために、結果として球団経営に甘えの構造を生み、そのカネが選手補強に使われていないわけです。

 今回は、これまで解説してきた収益分配制度と並び、戦力均衡を実現する柱として設置された課徴金制度のメカニズムや問題点について解説してみようと思います。

なぜMLBは戦力均衡しないのか

 米国プロスポーツには、「サラリーキャップ制度」と呼ばれるルールがあります。これは、各球団の戦力補強のための予算を一定レベルで均衡させるために、選手年俸(サラリー)に上限(キャップ)を設けるものです。各チームの年俸予算を一定に保つためのもので、1984年に米プロバスケットボール協会(NBA)が初めて導入しました。その後は、1994年に米プロフットボールリーグ(NFL)、2005年には米プロアイスホッケーリーグ(NHL)が導入しています。後述する理由により、MLBはサラリーキャップ制度を導入していませんが、それに代わるものとして課徴金制度を1997年から試験運用して、2003年に本格的に導入しました。

 米国では、戦力均衡を実現するためには、収益分配制度とサラリーキャップ制度を同時に運用する必要があると考えられています。サラリーキャップだけを導入しても、チーム間に大きな収入格差があれば、うまく機能しないからです。

 例えば、収入が200億円のチームXと50億円のチームYがあった場合、理論的にはサラリーキャップを50億円以上に設定することは出来ません。しかし、収益分配制度の結果、チームXとYの収入が150億円、100億円に補正されれば、例えばサラリーキャップを70億円に設定することが出来るので、より戦力均衡が実現しやすくなるわけです。

 この2つの制度を究極的なレベルで運営しているのが、NFLです。例えば、2006年のNFLのチーム平均収入は2億400万ドル(約184億円)でしたが、その約64%に当たる1億3000万ドル(約117億円)は分配金からの収入でした。そして、驚くことにサラリーキャップで定められている年俸総額の上限は1億200万ドル(約92億円)です。つまり、年俸総額(キャップ)を上回る額がリーグから分配金として各チームにあてがわれているのです。見方を変えれば、各チームの選手獲得予算をリーグが全額負担しているようなイメージです。

大リーガーは球団を信用していない

 サラリーキャップは、理論的に計算された「リーグ収入」に一定の「配分比率」を乗じ、それを「球団数」で割ることで算出されます。例えば、リーグ収入を1000億円、配分比率を50%、球団数を10とした場合、「1000億円×50%÷10球団=50億円」がチーム年俸上限額(サラリーキャップ)となります。リーグ収入をどう算出するか、まだ、配分比率をいくらに設定するかは労使交渉で協議されます。そして、上限額を超えてしまったチームに対しては、罰金やドラフト指名権の没収などのペナルティーが課せられます。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。Twitterのアカウントはtomoyasuzuki

(写真 丸本 孝彦)



このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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