「「成果主義もどき」から「貢献度主義」へ」

キャリア作りは「会社任せ」にしない、させない

「独立・自律」の社員を育てる人材マネジメントとは

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2009年12月28日(月)

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 古井 成果主義と成果主義もどきの違いもだいぶわかってきたし、貢献度主義の評価や報酬についてもイメージできるようになった。しかし、貢献度主義を採用から退職までのトータルな人材マネジメントのなかで実現するには、どうすればいいのかまだよくわからない。手っ取り早く導入できる出来合いの制度パッケージみたいなものはないのかな。

 新田 パッケージ的な導入もできるかもしれませんが、あまりお勧めできません。むしろ、業種や自社の特性に即した仕組みとして、現場の当事者を巻き込みながら創っていくことが大事だと思います。一般的な制度をパッケージ的に導入しても、現場の当事者意識やオーナーシップが醸成されず、うまく運用できないでしょう。

社員に自律求める〈自己責任型〉人材マネジメント

 古井 現場を巻き込むのはいいんだが、議論を主導する我々としては、今後の人材マネジメントのあり方として理解しておくべき方向性もあると思う。それはどんなものだろう。

 新田 できるだけ会社と社員の関係を対等の関係にしていくという方向性にはこだわるべきかもしれませんね。従来の日本型雇用慣行のように異動も育成も「会社任せ」では、自律的に考え行動する風土は醸成しにくいでしょうし。

 また、長く勤めないと賃金が上がらず、若い頃は貢献度に比べて安い賃金で我慢しなければならない「後払い賃金」では、ずっとその会社にいないと帳尻が合わず、結局会社に縛られてしまうことにもなります。

 社員もポストも増え続けた右肩上がりの高度成長の時代には、なんとか後払い賃金の約束も果たせて、弊害もあまり顕在化せずに成り立っていたのかもしれませんが、もうそんな時代でもないと思います。

 今後は、社員の異動、育成、キャリア形成などを「会社任せ」にしない、させない、つまり社員の自律性と自己責任を基本にしたものにしていくべきでしょう。貢献度に対する報酬も、金銭的・非金銭的なものを含めて、都度リアルタイムで報いることで、納得性を担保しておく方がいいと思います。

 企業が激動の経営環境を生き抜くためには、自ら考えて行動する自律的な社員が、柔軟かつ俊敏に行動していくことが必要となっています。

 そのような風土作りのためにも、社員を〈会社依存症〉にしてきた〈会社主導人材マネジメント〉を脱し、社員一人ひとりが自律的にキャリア形成していく〈自己責任型〉の人材マネジメントへの移行を目指すべきでしょう。

キャリア形成の支援こそ、引き留め策になる

 古井 〈会社主導〉から〈自己責任型〉の人材マネジメントへの移行か…。具体的には個人と会社の関係はどう変わると考えたらいいのか、まだ今一つイメージできないが。

 新田 競争力のある人材が集まる会社、辞めない会社は強い会社です。横並びでも会社が成長できた高度成長の時代に比べて、今や人材の質が会社の競争力に与える影響はきわめて強くなっています。つまり会社にとって、競争力のある人材を引きつけ、引きとめることは死活問題でもあるわけです。

 もはや競争力のある人材は、会社に対して一方的な劣位にあるものではなく、対等、あるいは優位性さえ持つ存在となっているのです。独立・自律の存在として考えなければなりません。

 また、社員が独立・自律の存在であるためには、一人ひとりに自分の競争力を高めていく努力も求められます。会社は、そのような人材に対して、チャレンジングな仕事をさせることで競争力の向上を積極的にサポートするというわけです。

 チャレンジングな仕事を達成することはすなわち直接に大きな貢献を実現することであり、また結果として、競争力を高めた社員は企業業績に対する貢献力をさらに高めることになります。そこからまたチャレンジングな仕事の機会を与えれば、貢献度主義における報酬の重要な一要素にもなるわけです。

 古井 しかしそうやって競争力をつけた社員はさっさと転職してしまうんじゃないのかな。

 新田 ごく自然な心配ですよね。よく分かります。しかしそのジレンマは、一人ひとりの有能な社員にとって、「この会社にいたら、もっと自分が成長する」と思わせることでしか解決できないんじゃないでしょうか。

 引き留め策のために、高額の報酬を提示し続ける会社もあるようですが、本質的な解決にはならないようです。今日の報酬は明日の自分の力を保証するものではないことを有能な社員ほどよく分かるからでしょう。結局は、自己責任のキャリア形成を支援することが、有能な人材の引き留め策になるんだと思います。

〈就社〉から〈就職〉へ、つまり職種別に採用する

 古井 自己責任型の人材マネジメントを徹底しようとすると、まず人材フローの入り口から変える必要があると思うんだが、自己責任型の採用というのはどうすればいいんだろう。

 新田 一言でいえば、〈就社〉から〈就職〉にする、つまり、職種別に採用するということでしょうね。

 従来の日本では、中途採用を除いては職種別に募集し採用するという形でなく、職種を決めずに採用した後、会社の裁量で職種別に配属されるのが一般的でした。つまり、会社でのキャリア形成のスタートから自己責任ではなかったわけです。

 古井 自己責任のキャリア形成は職種別採用から、ということか…。具体的にはどんな感じになるんだろう。

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著者プロフィール

桑畑 英紀(くわはた・ひでき)

桑畑 英紀夫株式会社イマージェンス代表取締役社長
83年〜99年、日本及び米国の大手事業会社で、人事企画、組織改革、グループ経営、子会社立ち上げ・再建、M&A後の組織統合などのプロジェクトに従事。
99年マーサージャパンへ移り、組織・人事改革コンサルティングに従事。内外の企業や自治体に対し、組織改革、企業再生、組織文化・風土改革、リーダーシップ開発、人材マネジメントシステム改革、M&A後の組織・人事統合支援など数多くのプロジェクトを主導。
2003年より組織・人事改革コンサルティング部門代表。取締役。
2008年4月より、組織・人事改革のコンサルティング会社、イマージェンスの代表として経営にあたる。
りそな銀行社外取締役、電通アライアンスパートナー、MSCエグゼクティブアドバイザーなどを兼務。
著書に『強い組織をつくる』(PHPビジネス選書)、『「死に至る病」から会社を救う―企業統治・風土改革の実践手法』(日本経済新聞社)、監修に『アニマル・シンキング〜「思考グセ」からの脱却法』(英治出版)など。



このコラムについて

「成果主義もどき」から「貢献度主義」へ

 成果主義は本当に悪なのだろうか――。最近、成果主義に否定的な議論が目立つようになったが、“では、どうすればいいのか”という点では明解な答えを見いだせていないのが現状のようだ。そもそも、成果主義否定論を見てみると、本来の成果主義ではない〈成果主義もどき〉、つまり誤った認識に基づく制度や運用の失敗例を成果主義として論じられていることが多い。
 そこでこの連載では、まず、不幸にして世の中に蔓延してしまった成果主義にまつわる誤解を解くことを企図する。その上で、成果主義本来の目的を実現するにはどのような方策が考えられるかを検討する。

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