最近、米国のある会社の幹部にこんな話を聞きました。その会社では、会議をする前に、参加者の中で誰がディシジョンメーカーなのか、つまり決定権を持つリーダーなのか、決めなければ会議は開催しない、というルールになっているというのです。
私は議長と呼んでいるのですが、会議のリーダーが決まっていない会議は開いてはいけないということです。リーダーの重要性はよく語られますが、実は会議においてもリーダーシップは極めて重要です。
「仕事には限りがある」というのはウソ
前回の「してほしい仕事を、部下がしてくれます」では、「緊急度は低いが重要度は高い」仕事に社員の目を向けさせることこそ、会議の役割だ、と書きました。では、どうすればいいのか。
実は、それほど難しいことではありません。日々、新たに発生してくる問題について、議長を務める会議のリーダーが問いただしていけばいいのです。私が第2回の「会社の悩みを解決してくれる早朝会議とは?」で紹介した、会議のテーマを思い出してください。あれこそ、日々、新たに発生してくる課題や問題であったり、それに対する疑問です。こういう課題や問題は、リーダーなら、間違いなく数多く気がついているはずです。
そして、個々の社員の近くには、実は膨大な量の「緊急度は低いが重要度は高い」仕事があるのです。それは無限にあるといってもいい。「仕事には限りがある」という考え方は、緊急度ばかりを見ているからです。重要度の高い仕事はそれこそいくらでもあります。そして、これを会議であぶり出して、デッドラインを付けて解決に向かわせる。これが、会議を主導するリーダーの役割になります。
と、こう書くと、なんだか難しそうだな、と思われるかもしれません。しかし、すでに触れたように、私だけではなく、かつての私の部下も同じ会議を行っていました。それぞれの部や課で、新たに発生してくる課題や問題について担当者に問いただす「吉越式会議」を実現させればいいのです。
問題や疑問をぶつけていくと、課題が顕在化する
例えば、営業担当者なら、営業の状況や担当の取引先について。財務部門は、担当する銀行とのやりとりについて。システム部門は、担当しているシステム開発の進捗状況について……。そして、担当者に、浮かんだ問題や疑問点をぶつけているうちに、実は新たな課題が顕在化してくるのです。その解決について考えてこい、とデッドラインを引けばいいのです。
この「考えてこい」がポイントです。解決策が出てきた時にこそ、上司にはツッコミどころがたくさん見えてきます。単なる状況報告を聞いているだけでは怒るか励ますくらいしかありません。しかし、部下が具体的に解決策を提示してくれれば、あれやこれやと確認したいことが浮かんでくるのです。そして、その解決策こそ多くの場合「仕組み化」につながっていくのです。
暗黙知のみが存在意義になっている人は、マニュアルができると、自分がクビになると思っている、もしくは、新しい仕事にチャレンジするのがめんどくさい、などネガティブな負け組根性一色に染まっていたりするので、そこらへんの不安を解消しないと、暗黙知を吐き出させるのが、なかなか難しかったり。より重要度が高い、生産性が高い仕事、をする能力がなかったりするし。正社員は精鋭で、コンピューターによる自動化と、マニュアルによる、パート、アルバイト。格差は広がるよね。(2010/01/20)