「「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」」

第15話「とんだ“買い物”をしてしまったかもしれないんです!」

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2010年1月13日(水)

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これまでのあらすじ

 団達也は、会計士、西郷幸太の紹介で日野原工業を買い取ることを決めた。創業者の日野原五郎は、自らがガンに侵されていることもあり、会社を安楽死させたいと西郷に依頼していたのだった。

 達也と西郷は、翌日に手術を控えた日野原が入院する病院の特別室を訪れた。経理部長の間宮清二が作った株式譲渡契約書を見せられた達也は、内容に不満を覚えていったんは署名を拒否した。

 しかし、「平成21年12月25日の財務内容が貸借対照表の通りであり、簿外債務等が存在しないことを株式譲受人に対して保証する」という文言を入れるのは勘弁してほしいという日野原の願いを聞き入れ署名した。

 「お元気そうでなりよりです」

 達也は明日から始まる新しい自分のビジネスについて話を聞いてもらおうと、久しぶりに伊豆で隠居生活を送っている恩師、宇佐見の別荘を訪れた。

 宇佐見は愛弟子の達也を心から嬉しそうな表情で迎え、応接間に案内した。窓越しには真っ青な空を背景に、大室山がくっきりと浮かんでいた。

 「素晴らしい景色ですね」
 「正月にこんな美しい大室山を見るのは久しぶりだな」
 宇佐見は感慨深げに外の景色を眺めた。

 「今年はどんな年になるでしょうね」

 達也は唐突に聞いた。だが宇佐見は達也の質問には答えず、こんな質問を投げかけた。

 「おまえは“CRICサイクル”という言葉を覚えているか」

 達也は大学のゼミで宇佐見から教わったことを思い出した。モルガン・スタンレー証券のチーフ・エコノミストのロバート・フェルドマンが指摘した日本の経済対応のことだ。

 「問題があるのに何も対策を打たないでいると危機(crisis)になる。すると、あわてて応急処置(response)をする。それによって状況が少し改善(improve)すると、すぐに安心(complacency)してしまう。そして、再び危機を迎え、応急処置をとる。これらの頭文字をとってCRICサイクルと呼んでいるのだが、日本はずっとこのサイクルを繰り返している。問題は、なぜCRICサイクルから脱却できないのかということだ。達也、おまえはどう思う」

 宇佐見は大室山を見ながら聞いた。

 「これまで本気で脱却しようとしなかったからです」
 と達也が答えた。

 「その通り。危機が来ると急場しのぎの対策をとる。だが、世界景気が回復してくると、危機の根源を除去する努力を怠ってしまう。構造問題に手をつけないまま、CRICサイクルを繰り返してきた」

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦めで中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。達也は、当時専務の間中隆三らによる不正が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、間中らを追放した。
 経理部長になった達也は、ジェピーCFOとして会社の再建に着手した。その直後から隠れ負債が発覚し、工場には仕掛かり在庫の山。資金繰りに窮したジェピーは、銀行からも見放され倒産寸前だった。
 ジェピーを救ったのは、かつての級友、ジェームス。ジェピーは、同じく級友のリンダが勤めるアメリカの大手電子部品会社UEPCの傘下に入って新たな道を歩み出した。
 創業者未亡人の大株主、財部ふみの遺言で達也の手にはジェピーの株式が渡ることになったが、達也はそれを手放し、自分の手で会社を立ち上げようと決心した――。
 管理会計が専門の現役会計士である著者による、“読む管理会計”シリーズの第3弾。ストーリーを追いながら、経営に役立つ管理会計の最新の理念と実践的な知識が身につきます。
第一シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」
第二シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

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