「すべては倉庫番が知っている」

派遣法改正で、労務管理は作り直し

非正規の直接雇用化で御用組合の基盤が崩れる

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2010年1月19日(火)

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 前回のコラムでは、トラック一辺倒だった日本の物流が歴史的な転換期を迎えていることを報告した。それに伴って物流業の労務管理のあり方も大きく変わろうとしている。

 物流業のコストの6割は人件費が占める。そのため、昔から物流業においては労務管理が最大の経営課題とされてきた。

 物流現場には、あらゆるタイプの労働組合が入り込んでいる。“労組のデパート”と言われるほどだ。

 そのうち主流派の労組を御用組合として手なずけて、戦闘的な組合の排除に成功した経営者が、これまでは優秀な経営者だと評価された。

 今でも中堅以上のトラック運送会社には、労組担当を経験していることが、社長レースに名乗りを上げる条件になっているところが多い。

『沈まぬ太陽』さながらの労組対策

 一方、中小零細の運送会社では、組合を作らせないことが経営を安定させる条件だった。

 労働組合のない中小運送会社の社長宛に、ある日突然、配達証明付郵便で「労働組合加入通知ならびに団体交渉申し入れ」が届く。

 その書面には、組合に加入した従業員の氏名と、要求事項が列記されている。会社のやり方に不満を持った従業員が1人でも加入できる産業別労組に駆け込んだのだ。

 その会社に本格的に組合組織を作ろうとしている場合には、通知が届く半年近く前から水面下で組織への勧誘、いわゆる“オルグ”が行われる。

 それを経営陣が察知すれば、アメとムチを駆使して露骨な組合潰しに走る。

 経営陣への忠誠を誓う従業員たちを優遇して囲い込む一方で、組合運動の中心人物たちには、あの手この手で個人攻撃を仕掛ける。

 時には会社側と対決する組合の幹部宅に動物の生首が送りつけられてきたなどといった生々しいエピソードが筆者の耳に入ることもある。

 昨年映画化されて話題になった山崎豊子氏の小説『沈まぬ太陽』はフィクションの体裁をとりながらも、日本航空の経営陣および経営陣と結託した第二組合による現実の“組合潰し”が主要なモチーフとなっていた。

 ただし、時代は1960年代後半から80年代にかけての労働運動華やかりし頃であり、今となっては昔の話だ。

 それ以降に社会に出た世代にとっては、映画に出てくる陰湿な労組対策や会社組織と社員との骨絡みの関係を、時代錯誤と感じた人も多かったのではないだろうか。

 ところが物流業界では、沈まぬ太陽さながらの労組対策が今日に至るまで綿々と続いている。

 組合潰しの最大の手口も今だに“反共攻撃”だ。

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著者プロフィール

大矢 昌浩(おおや・まさひろ)氏

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。2004年4月〜2007年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。



このコラムについて

すべては倉庫番が知っている

原材料の調達から工場での加工、店舗までの配送と、企業や産業のあらゆる活動を“裏方”として支える物流。ここからは、表層からはうかがい知れない経営や経済の動きが浮かび上がってくる。そこから見えてくる課題は、単なる物流改善に伴うコスト削減にとどまらず、企業に構造改革を促すテーマである。10年以上も物流業界を取材してきた筆者が、“倉庫番”だから知り得る日本企業の実像をリポートする。

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