「鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」」

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

2010年1月28日(木)

プロより儲かる大学スポーツ(下)

稼ぎまくるアメフト部

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前回から読む)

 前回のコラムでは、大学スポーツがプロ顔負けの規模のビジネスとして成長しており、とくにアメリカンフットボール(アメフト)部が大学運動部からの全収入の大半を稼ぎ出している構造を解説しました。

 例えば、今年、学生アメフトで全米チャンピオンになったアラバマ大学を例に挙げると、19ある運動部からの収入(2007〜08年シーズン)は約8890万ドル(約80億円)でしたが、そのうちアメフト部からの収入はその3分の2に当たる約5740万ドル(約52億円)にも及びます。同部のニック・セイバン監督の年俸400万ドル(約3億6000万円)も、こうした巨額の収入があるから可能になっているわけです。

 たかだか大学運動部の監督に、8年総額3200万ドル(約28億8000万円)もの巨額の長期契約を提示する…。日本では、まずあり得ない出来事でしょう。しかし、米大学アメフト界では、こうした巨額のプロコーチ契約が大きなリターンをもたらすため、多くの強豪大学が「収益の高い投資」として乗り出しています。

 今回のコラムでは、アメフトという「カネのなる木」を使って、大学がどのようにビジネスを展開しているのか、見ていくことにしましょう。

名コーチ招聘で巨大スタジアム建設へ

 2007年1月3日、アラバマ大学のキャンパスのあるアラバマ州タスカルーサは歓喜の渦に包まれました。セイバン氏のヘッドコーチ就任が決まったためです。

 アラバマ大学では、1992年の創立100周年に照準を合わせて、アメフト部が全米中から優秀な選手をかき集め、全米チャンピオンを手にしました。当時は、ちょうど私が大学に入学してアメフトを始めた年でした。アラバマ大学の「クリムゾンタイド」(Crimson Tide=深紅の潮)というチーム名は、私が所属していた大学アメフト部の名前(クリムゾン)と似ていたのでよく覚えています。しかし、100周年が終わるとともに低迷していき、全米チャンピオンの座から遠ざかっていました。

 セイバン氏といえば、2000年に長期低迷に苦しんでいた古豪ルイジアナ州立大学に監督として迎えられ、短期間でチームを立て直して2003年に全米制覇を遂げました。その手腕が高く評価され、全米プロフットボールリーグ(NFL)のマイアミ・ドルフィンズでもヘッドコーチとして采配を振るいました。米アメフト界では知らぬ者がいない「辣腕コーチ」です。

 そのセイバン氏が、再び大学チームに舞い戻ってくるということで、アラバマ州の地元住民は、「これでまた全米制覇を達成するかもしれない」と狂喜したわけです。

 そして、「セイバン効果」はてきめんに表れました。

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著者プロフィール

鈴木 友也 (すずき・ともや)

鈴木 友也 ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。世界中に眠る現場の“知(インサイト)”を発掘し、日本のスポーツビジネス発展のために“提供(トランス)”する――。そんな理念で会社を設立し、日本のスポーツ組織、民間企業、メディア、自治体などに対してコンサルティング活動を展開している。ほかにも講演、執筆でも活躍中。著書に『スポーツ経営学ガイドBOOK』(ベースボール・マガジン社、2003年)、訳書に『60億を投資できるMLBのからくり』(同、2006年)がある。中央大学商学部非常勤講師(スポーツマネジメント)。ブログ『スポーツビジネス from NY』も好評連載中。

(写真 丸本 孝彦)


このコラムについて

鈴木友也の「米国スポーツビジネス最前線」

「スポーツビジネス先進国」と言われる米国。その市場規模や人気などで日本を凌駕する。そこでは、日本にいては思いつきもしない先進経営が繰り広げられている。だが、進みすぎたが故の問題も内包する。米在住のスポーツマーケティングコンサルタントが、米国スポーツビジネスの現場を歩き、最新トレンドを解説していく。
果たして、米国は日本スポーツ界の「模範解答」となるのだろうか?

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