「ねー、見て見て! 買っちゃったあ!」。ダイニングカフェに入るなり、中津川あやが、嬉しそうに新品のバッグをカウンターに置いた。「前から欲しがっていたアレね」と、藤野香織がグラス片手ににっこりと微笑む。「いつものお店で買ったの?」。
「う、うーん。あそこは正規のブランドショップでしょ? 今さらだけど、ちょっとでもお安くて、お得なほうがいいかも、って・・・。つい、量販店で買っちゃいました」と、あやは少しばかりきまり悪そう。「あら、『私はこのブランドが大好きだから、私はあの正規のショップで買う。それがブランドの価値を守るって言うことよ!』って宣言していたじゃない?」と香織は追い打ちをかける。「だ、だって・・・」とあやは言い訳しようとすると・・・。
黙って2人の会話を聞いていた榊理恵が、突然叫ぶ。「だから嫌なのよ! 商品の良さを理解してもらおう、ブランドに愛着を持ってもらおうと私なりに一生懸命に頑張って通販サイトで説明しているのに!! 『初めてだから知らない』とか『こだわりはない』とか『似ている商品ならお得なサイトで』とか、浮遊層にはあっさり振られちゃうのよ――そう、あやみたいな人に!」。
「ご機嫌斜めだね。会社でトラブルでもあったのかい?」とダイニングカフェのマスターは少し心配そうだ。「私はそんな浮遊層じゃないけど・・・(汗)。でも、これだけショップがあると必ずしも正規店でないと、というのも・・・」。必死に抵抗しようとするあやに、香織が口を挟む。「2人の言うことは、それぞれ、もっともだわ。どこかに接点がないかしら。それが突破口になるはず」。
「うーん」と眉をひそめる3人。「逆転の発想だよ」。マスターが助け舟を出す。「どう売り込むかを考えるのではなく、なぜ買われるのか、だよ」。
「あっ!」。香織が手を叩く。何かひらめいたようだ。「商品力やブランドに頼っているだけでは不十分なのよ。お買い物の楽しさを体験できる工夫を考えないといけないのよ」。
出店数が3万を超えるネット上の巨大ショッピングモール、それが「楽天市場」です(出店数は2009年9月時点)。これだけの店舗があれば、消費者にしてみれば、お目当ての商品はほとんど見つかるはず。実際、日本通信販売協会「インターネット通信販売利用実態調査報告書2009年」によれば、回答者の75.7%が「利用経験のあるサイト」としており、堂々の第1位です。
しかし、出店者側にしてみると、競争相手の多い場となります。「激安」「産直」「ブランド」といったキャッチーなキーワードを打ち出せなければ、なかなか人目を引きそうにありません。しかし、そんな分かりやすい魅力を持つ商材ばかりではないのも現実です。
購入希望者の目線に合わせる
売り込みが難しい商材の一例に、オフィス家具が挙げられるでしょう。必要に応じて購入するので、普段はあまり馴染みがありません。デザイン家具のように、こだわりを持っている人が多いわけでもありません。さて、どうすればいいのでしょうか。
通販業界でユニークな取り組みで注目を集めているのが、楽天市場に出店しているシー・グラス(茨城県結城市)が運営するオフィス家具通販サイト「The・会社生活」です。
サイトにアクセスすると、目に飛び込んでくるのが画面左にある「座る」「机に向かう」「片付ける」「守る」「隠す」「接客する」といったカテゴリー分けです。椅子や机、棚といった商品カテゴリーでなく、購入希望者の目線に合わせようとしているわけです。
売る側にしてみれば椅子もいろいろ。細かい違いを説明して理解してもらいたくなってしまいます。が、消費者に分かるはずもなく・・・。それよりも、カテゴリーを一般人が目的に応じた表現にしておけば、クリックするうち、必要な何かに行き着くはず。
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