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episode:42
「だから会社は小さくなければならない」

  • 阿川 大樹

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2010年2月2日(火)

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前回までのあらすじ

老舗 大日本鉄鋼の3人だけの部署、第三企画室は新会社、オルタナティブ・ゼロとして独立した。旭山隆児(あさひやまりゅうじ)は社長、風間麻美(かざまあさみ)は第三企画室室長、楠原弘毅(くすはらこうき)は次長だ。休止していた高炉が再稼動するというニュースに、旭山は日本の来し方行く末を思った。

「コーキくん、なんだかうれしそうじゃない」

 あたふたとオフィスにもどって来た楠原を風間が茶化した。

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 この二人、先輩後輩、上司と部下だが、時々、女子学級委員とクラスの男子くらいの関係に見える。

 小学校6年生では早熟の女子の方が身長も精神年齢も高くて、学校で何ごとにも主導権を取ったりする。ちょうどそんな感じなのだ。

「だって、久々に明るいニュースじゃないですか。操業停止が解けて高炉の火入れになるなんて」

 たしかにそうだが、実際に出荷が始まるのは3月に入ってからだ。

 需要が急速に落ち込み、スケジュールに入っていた倉敷第2高炉の整備予定を半年早めて火を落としたのが昨年の春だった。他の製鉄所の稼働率が十分回復したわけではない。世界的にもまだ景気は悪いが、伸び盛りの中国では自動車も売れている。

「韓国では現代製鉄も初めての高炉の火入れを済ませている。来年には2基目も予定されている。第3高炉の計画も伝えられている。景気のいいニュースだが、現代グループ内で自動車用の高級鋼材がまかなえてしまうということになれば、日本からの輸出には打撃になる。韓国の自動車メーカーからの需要が見えなくなると、世界の需給関係を読みにくくなるという問題も出てくる。そんな複雑な環境の中での決断だけどな」

 旭山は楠原弘毅にそう答えながら、我ながら湿気た話をしてしまったと後悔した。今日はどうも頭がネガティブな方向へ行ってしまう。

 少なくとも、自分のことを変革を好む前向きな人間だと思っていたはずなのだが。

 おそらく高炉稼働の早いリリースは、ヒッタイト・スチールに大日本鉄鋼の株を買い込まれないようにするための株価対策だ。

 プレスリリースを出したことについて、旭山はそう理解していた。わざわざこの時期にニュースにするように早めの発表をしている。株価の回復も実体経済の回復も、日本が一番遅れている。もし、その意図があるのなら、今は日本の会社を買収する絶好機なのだ。

 大日本鉄鋼は株主対策などとは無縁の会社だった。基幹産業として、小さな会社を買うことはあっても、自分が買われてしまうことなど、考えられなかった。そんな大日本鉄鋼も、今ではしっかりとした株価対策をしなければならなくなっている。

 部下たちにはヒッタイトの話はしないでおこう。ひとり旭山は思った。

「でも、コーキくんがうれしそうなのは、本当は高炉が稼働することになったからじゃないでしょう?」

 風間の明るさに、旭山は勝手に救われた気がした。

「いやあ、まるっきり関係ないってわけじゃないですよ」

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