「資源ウォーズの世界地図」

米中にインドの思惑が入り乱れるパキスタン

地政学的に複雑な利害関係が貧困を助長する

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2010年2月10日(水)

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 政治とカネといえば、民主党・小沢一郎幹事長のゼネコン献金疑惑。

 本コラムでは、国際政治のパワーゲームとビジネスゲームの話。資源豊富なアフリカ、中・南米、そしてアジアの発展途上国でのこと。資源争奪のためにスーパーパワーと新興国の国益に多国籍資源メジャーのカネが絡み、腐敗と地域紛争が絶えない。

 今、そのホットスポットの1つがパキスタン。アメリカとその同盟国だけでなく、イラン、インド、中国、ロシアにイスラエルが絡み、地政学的に複雑な利害関係にある。その背後にあるのが石油・天然ガスそして金属鉱物資源である。

 2009年12月17日のコラム(「アフガンで米国は戦争、中国は銅鉱山を取得」)でも、パキスタンの隣国、アフガンにおける銅鉱山にかかわる権益と腐敗の問題について紹介した。アフガンの銅鉱山開発権益をアメリカ、カナダ、オーストラリア、インド、ロシアなどの企業9社を出し抜いて、中国国営鉱山会社がアフガン政府の鉱山大臣に3000万ドルの賄賂を払って取得してしまったとされている一件だ。

「資源収奪は許さない、権益をよこせ」

 今回は、パキスタンでの話。パキスタン南西部、アフガンとイランとの国境近くのバロチスタン州(Balochistan province)、レコ・ディク(Reko Diq)というところに世界最大級の未開発銅・金鉱床がある。そこを35億ドルかけて探鉱・開発しようというプロジェクトが注目されている。

 バロチスタンは、パキスタン国土の43.5%を占め、石油・天然ガスもあり、パキスタンにとっては国益上重要な地域だ。人口はわずか4%だが、人々は最貧状態にある。

 レコ・ディク銅・金鉱床には、495万トンの銅と288トンの金それにプラチナなどの貴金属が眠っており、その価値は推定埋蔵量を含めると1000億ドルになるという。その探鉱権益は、2006年からカナダの産金世界一、ユダヤ資本のバリック・ゴールド(Barrick Gold)とチリの銅鉱山会社アントファーガスタ(Antofagasta)が保有している。権益の割合は両社、各37.5%で合計75%、残り25%をバロチスタン州政府が持っている。

 両社は、開発のためのフィージビリティ・スタディを2010年半ばまでに終了する予定であった。

 ところが、2010年1月12日、バロチスタン州政府の鉱山局長、ムシュタク・アーメド氏(Mushtaq Ahmed)がロイターの記者に語ったところによると、「州政府は、まだ最終決定ではないが、レコ・ディク銅・金鉱床の探鉱ライセンスをキャンセルしようと計画している」という。理由は、今のライセンス契約では、パキスタンでも最も貧しい地域において、莫大な価値がある資源を投げ売りして、そこから得られる利潤の大半75%を外国企業に持っていかれることになるので到底容認できないとのこと。

 1月15日のパキスタン・トリビューンによると、昨年12月には、バロチスタン州政府から中央政府に契約をキャンセルするように働きかけており、財務大臣のシャカット・タリーン氏(Shaukat Tareen)も、「今のままの契約では重要な国益を損ねることになる」という見解を述べている。それは、外資が我々の原鉱石を採掘して第三国へ搬出して製錬することによって莫大な利益が得られるわけだからあまりに不公平だというわけだ。バロチスタン側は「資源収奪は許さない、権益は80%よこせ」と強硬だ。

 アシフ・アリ・ザルダリ大統領は、バロチスタン州の武装勢力鎮圧攻勢に出る一方で、社会福祉予算を増やすとともに、国政に参加する州代表者の人数を増やして彼らの政治的地位を上げるなどインセンティブを与えてきた。しかし、バロチスタンをめぐっては重要な問題がもう1つある。

 パルベーズ・ムシャラフ前政権下で、中国の2億4800万ドルの援助で建設されたバロチスタン州南部のグワダール(Gwadar)港だ。グワダ−ルは、アラビア海に面した貧しい漁村だったところだ。ペルシャ湾入り口近くに位置し、港は水深が深く大型船舶が入港可能で、2008年3月に操業を開始した。

 バロチスタンの強硬派は、この大規模港湾施設から得られる膨大な収入を中央政府と分け合うのでなく、「すべてよこせ」と繰り返し要求をしていることだ。

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著者プロフィール

谷口 正次(たにぐち まさつぐ)

谷口 正次

資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。



このコラムについて

資源ウォーズの世界地図

産業を支える資源に対するリスクが高まっている。銅やアルミなどの非鉄金属はもちろん、自動車の触媒に必須なプラチナ、次世代電気自動車に使われるリチウムなどのレアメタルも、“資源メジャー”や新興国の国家戦略とも絡み始めている。これまでカネさえ出せば入手できたさまざまな産業のキーとなる鉱物資源の囲い込みが始まっている。このコラムでは、鉱山技術者として世界の現場を踏破してきた筆者が、これからの資源リスクについて解説する。

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