ここ数年、1次産業への注目が急速に高まっている。「BRUTUS(ブルータス)」(マガジンハウス)、「週刊 ダイヤモンド」(ダイヤモンド)「AERA(アエラ)」(朝日新聞社)といった、ちょっと前までなら農業に見向きもしなかったであろう雑誌が農業特集を組むようになった。昨年6月には、若い農業従事者の季刊雑誌「Agrizm(アグリズム)」(農業技術通信社)が創刊され、新たな読者層をつかんでいる。
こうした「農業」への視線には、有機・無農薬、農的な暮らしといったことにとどまらず、楽しい農業、儲かる農業というように、新たな産業という視点が盛り込まれている。
こうした動きは、林業も例外ではない。林業への就労希望は拡大してきており、先日、東京、名古屋、大阪で開催された林業への新規就労への説明会には、会場を埋め尽くすほどの人が押し寄せ、相談ブースでは行列ができるほど盛況を極めた。
政府は2009年12月に発表した「新成長戦略」の1つとして、林業を成長産業として位置づけた。現行20%強にとどまっている木材自給率を「10年後に50%に拡大する」というものだ。そして、今年に入って、その実現に向けての基本方針を定める「森林・林業再生プラン」の本格的な検討がスタートした。
「安い外材が林業をダメにした」は本当か?
もっとも、現実には林業は大変厳しい状況が続いており、成長戦略といってもピンと来ない読者が多いだろう。
戦後復興期には6000万立方メートルにも達していた木材生産量は、今では1800万立方メートルに過ぎない。戦後9割を超えていた木材自給率も、現在は2割前後にまで落ち込んでいる。林業人口もわずか4万8000人で、平均年齢は50歳を超え、65歳以上の就業者の割合も30%に迫るほど高齢化が進展している。
日本林業はなぜここまで衰退してしまったのだろうか?
その理由として必ず指摘されるのが、安い輸入材(外材)である。曰く、賃金水準がもともと高いうえ、地形が急峻なことや、森林の所有規模が小さく分散的であることなどから、日本林業のコストはどうしても高くならざるをえず、安い外材には敵わないというわけだ。これは、マスコミも含め、林業に関わるすべての人が当たり前のように思い込み、だから「日本で林業は成立しない」とする諦めが長年にわたり支配してきた。
「外材犯人説」は本当なのだろうか。その事実関係を明らかにすることは、森林・林業政策を考えるうえで、決定的に重要なポイントである。外材には敵わないとする前提に立てば、農業と同様、日本ではどんなに努力しても林業は無理ということになり、産業政策とは別の理論武装でこれを支える政策を考えなければならなくなる。
他方、日本で林業は成立しうるとの前提に立てば、可能性は大きく広がる。林業はそのことだけを見れば、生産額など、たかがしれている。しかし、木材を加工・利用する産業はすそ野が広く、林業再生は疲弊きわまる地域経済復興の切り札となりうるからである。
「安い外材」はともかく、日本林業が、外材の動向に大きく翻弄されてきたことは事実である。
日本は戦後、木材需要の急増によって高騰した国産材の価格を安定化させようと、1960年に木材輸入の段階的な自由化をスタートし、1964年に木材輸入は、完全自由化されていた。これに伴い、大量に安定供給できる外材が市場を席巻するようになり、国産材の供給量は低下の一途をたどった。

つまり輸入自由化によって大量に入ってきた外材に、国産材がコストで到底かなうはずもなく、だからこそ林業は壊滅的な打撃を受けたのであり、外材こそが日本林業衰退の最大の理由であるとするのが、誰もが疑わない従来からの見方である。
ところが、日本のスギ、ヒノキと競合する針葉樹の外材は、欧州や北米産のものがほとんどである。そもそも、世界の木材生産や製材などの木材加工の3分の2は先進国におけるものであり、実は林業は先進国型産業なのである。しかも、これら先進国林業は、必ずしも日本より条件が恵まれているわけではない。
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