「COLD JAPAN(コールド・ジャパン)」

6億から60億市場。「多極化市場」の登場で起きる産業革命

高性能志向を捨て、ローエンドからの企業経営

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2010年3月10日(水)

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 批判も激しかったが、連載趣旨への賛同も“群を抜いていた”連載「COLD JAPAN」。他誌・テレビも取り上げるなど話題となったこの連載に対しては、各業界の専門家からもアドバイスをいただいてきた。

 アクセンチュアの西村裕二氏からは「環境分野でも、同じ現象が起きている」と指摘する。「日本の環境技術は進んでいる、といわれながらも実際には世界のプロジェクトの受注がとれてない」現象などがそうだ。

 厳しい現実は分かった。が、どうすればいいのか。今回は特別編として処方箋の話を編集部が聞いた。


(聞き手はNBO編集部)

西村 裕二(にしむら・ゆうじ)氏

アクセンチュア株式会社 執行役員 経営コンサルティング本部 統括本部長。
東京大学工学部機械工学科、東京大学工学系大学院修了。大手化学会社を経て1990年アクセンチュア入社。米国での経営コンサルティング経験を経て、帰国後、日本にて製造流通業、通信ハイテク業界を中心に数多くのコンサルティングに従事。特に、多極化世界に対応した日本企業のグローバルでのM&Aを含めた成長戦略を得意領域としている。アジア・パシフィックヘルスケア業界統括、戦略グループ統括を経て2006年経営コンサルティング本部統括に就任、2009年から戦略グループ アジア・パシフィック統括を兼任し、現在に至る。著書に『アクセンチュア流 逆転のグローバル戦略――ローエンドから攻め上がれ』(2009年11月 英治出版)。

 西村 最近、日本の経営者とお話させていただくと、多極化した世界での市場の大きな変化を的確にとらえきれていないのではないか?と感じることがあります。

 例えば、一昨年に登場した「ネットブック」。それまで10数万円以上の価格帯にあったノートパソコン市場に、CPUの性能は相対的に低いものの3〜5万円の低価格パソコンが出てきました。当時、日本の経営陣の方々の反応はどうだったか。「あんな低価格な製品は我々がやるべきものじゃない」と相手にしてなかったのです。しかし、ネットブックは世界市場で売れに売れ、いまや1つのジャンルを確立してしまいました。

 自動車メーカーもそうです。インドのタタモーターが発表した「ナノ」。この超低価格自動車も、このコンセプトが発表された当初、日本の自動車メーカーの経営陣、技術者の中からは「あんなの自動車じゃない」という声も聞かれました。

60億市場では、ハイエンド志向は通用しない

 確かに、あのクルマが先進国でそのまま売れるとは思いません。しかし、新興市場では違うのです。あのクルマこそが、新興国の国民所得で実際に買うことができる「新車」です。日本メーカーは、「自分たちのクルマの方がまだ優れている」と考え、この市場に対して出遅れています。パソコンやナノは一例に過ぎませんが、市場変化を的確に捉えていないのではないでしょうか?

 ―― なるほど。ただ、こうした話をすると「あんなインドのクルマになんて技術的に見習うものはない。我々に性能を落としたものを作れというのか」といったご意見が出てきます。そうした意見の背景には「より高性能なパソコンを、より燃費も環境にもいいクルマを目指してこそ進歩」との考え方もあるからだと思います。こうした考え方に対して、どう答えますか。

 西村 これまではハイエンド製品が技術開発や市場開拓を推し進めてきましたが、もはや「それだけは通用しない」と答えます。仮に、今も日本はハイエンドだけを目指せばいいと考えている方がいるとすれば、世界で起きていることがきちんと見えていますか?と問いかけたいと思います。

 というのも 世界市場は欧米と日本という三極から、いまや多極化世界にシフトしています。従来型の先進国に加え、中国、インド、韓国、ブラジル、メキシコなど新興国も“一市場”として成り立っていきました。ここ数年の大きな変化は、こうした新興国に加え、いわゆる“貧しい国”も「市場」になってきたことです。 それどころか、今後は彼らが市場の主役になります。

 これまでの6億人市場から60億人市場へ、一気に10倍に拡大してきました。この60億市場では、これまでのハイエンド志向の商品、マーケティングだけではまったく対応できません。というのも、今までのハイエンド商品は市場全体の数%に過ぎないのです。

 これまでの先進国市場だけに閉じていればまだいいのですが、60億市場ではまったくプレゼンスを示すことができなくなってきます。新市場では新しいルールのものづくり、新しいマーケティングが必要になってきます。「あんなのは本物でない」といっているうちに、この超メガ市場に対応できなくなるのではないか、と思うのです。

 ―― なるほど。電化製品、自動車の他にはどんな分野で変化がみられますか。

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著者プロフィール

瀬川 明秀(せがわ・あきひで)

日経ビジネス副編集長。



このコラムについて

COLD JAPAN(コールド・ジャパン)

新たな政権を迎え、気分も新たに成長を進めようとしているニッポン。しかし、一方で停滞する国内市場のもと喘いでいる企業も多く景気の先行きが不安視されている。つまり、「クール=カッコいい」ジャパンと自己満足的に呼んでいるわりには内情は冷え切っており、なにか新しい世界との関係や突出したビジネスを誰もが渇望してやまない状況となっているようだ。本連載では、最新の事例やケース=症例を豊富に取り上げながら、「巣ごもり」「ガラパゴス」等と揶揄される「コールド」なニッポンの現状を理論的な切り口で分析、《コールド・ジャパン》脱却と新たな成長のための〈処方箋〉を提言していく。本連載が、国内市場の凋落を前に、気分新たにこれからの成長を模索している企業の経営幹部やキーパーソンの方々のヒントになれば望外の喜びである。

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