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「仕事術」だけで未来は切り開けない

  • 常盤 文克

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2010年2月26日(金)

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 近頃、「仕事術」がブームです。書店に足を運べば、店頭には「仕事術」「仕事力」といったキーワードを冠した書籍がずらりと並んでいます。著者がメディアに登場するのを目にすることもあります。

 会社人が向上心を持つのはいいことです。しかし、正直に言って、仕事術という言葉には違和感を覚えます。なぜなら、あたかも健康法やダイエットのハウツー本と同じように仕事のやり方が語られ、それを人々が欲しているように感じるからです。

 やはり不況の影響なのでしょうか。景気がよいときは、誰もが忙しい、忙しいと言って、寸暇を惜しむように仕事に取り組みます。それが一転して景気がわるくなると、働くことの意味や仕事のあり方、仕事の方法になどについて、改めて考えたくなるのかもしれません。

 誰もが残業、残業で懸命に働いても、なかなか売り上げ、利益につながりません。現場は安売り競争やコスト削減に追われています。これでは虚しい気持ちになるばかりで元気も出てきません。これが本当に仕事と言えるのか――そんな疑問が湧いてきても仕方がありません。

 先行きに対する不安もあるでしょう。不況で会社の業績が悪化し、一方で産業の構造転換も急速に進んでいます。そんな中で、仕事に夢や希望が持てず、将来に対する不安を覚えるのも当然のことです。だからこそ、どこに行っても通用する仕事術を身につけよう、という意識が生まれるのではないでしょうか。

正解は天からも本からも降ってこない

 もう1つの背景は教育にあります。何事にも正解があると教えられ、仕事にもあるはずだと、その解をすぐに求めたがる人が多いのです。ある大学の先生は、「最近の学生は、すぐに答えを求めたがる。まるで正解が天から降ってくるように思っている」と苦笑していました。

 また、与えられた問題の答えを最短の道のりで出そうと近道を探すので、答えが見つからない問題には、はじめから手を出さない。そのため、○○術を覚えようとする、とも言っていました。仕事をゲーム感覚で、これだけやれば勝てる「シンプルな仕事術」といったタイトルの本まで出てきました。

 人とは本来、自分なりの考えや哲学を持って行動するものです。仕事の目標を自分なりに決めて、悩みながらまた幾度となく壁にぶつかりながら、自分の目指すものに挑戦を重ねていく。そこから仕事の知恵を体得し、次のステップに進んでいくのです。そのプロセスを省略して一気に答えにたどりつこうとしては、「なぜそうなのか」と自力で考える力が養われません。そもそも最初から答えがある仕事は、仕事ではなく作業です。仕事とは、自ら問題を見つけ出し、その解を探し求めていくものです。

 企業にも同じことが言えます。最近は、誰かに頼めば答えを出してくれる、という幻想を持っているところがあります。例えば、業務改革です。当然、自分たち自身の問題で、自ら考え、実行しなければならないことなのに、それをコンサルタントに“丸投げ”して、自分たちの進むべき道筋を見つけてもらっています。こんなことで、業務改革などできると思えません。自分たちの問題には、自分たちで解を出さねばなりません。

 短絡的に結果だけを求めることは、見かけ上の利益の追求にすぎません。また、企業が合理化や効率化ばかりを追い求めていると、ものの見方がどんどん短期的、表層的になってしまいます。自ずと社員も小手先の術を覚えて、数字さえ出せばいいという発想に陥りがちです。

 そうならないためにも、改めて「仕事」とは何かを問うべきです。仕事を語るとき、まず「人」に目を向けることが重要です。今から114年前、蚕糸事業を創業した「グンゼ」の波多野鶴吉さんの言葉に、「善い人が良い糸をつくる」というものがあります。私は、この言葉が仕事の本質を表していると思います。繭から高品質な糸をつくり出すには、しっかりとした繭や糸の知識を持つだけでなく、まず「善い人」でなければならない、という意味です。つまり、よい仕事をしようと思うなら、自分自身を磨かねばならないのです。

 さらに大事なのは、生きることと仕事の喜びとを重ね合わせることです。仕事に悩んだり挑戦したり、苦闘したり、その過程で生きる喜びや仕事を達成する喜びが湧いてくるのです。言い換えれば、仕事とは人の生き様です。それは決して小手先のテクニックである「仕事術」ではなく、「仕事学」さらには「仕事哲学」と呼んでもいいでしょう。人も企業も、それを忘れてはなりません。

 では具体的にどうすればいいのか。

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