• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

デミング博士の教えが色濃く反映されていた姿はどこへ

「トヨタよ原点へ帰れ」――愛用する一消費者としての願い

  • 吉田 耕作

バックナンバー

2010年3月16日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 過去何回かにわたって、統計的手法を用いて、職場や組織体の効率を上げるお話をしてきたが、こういう考え方は一般的にいうと統計的品質管理を源とするTQC(Total Quality Control)とかTQM(Total Quality Management)と呼ばれるものである。

 この分野で、日本で、もしかしたら世界で、最も進んでいるとみなされている企業がトヨタ自動車である。事実、トヨタグループは日本では最も多くのデミング賞を取ったグループである。それではなぜトヨタが今大きな問題に巻き込まれているのだろうか。

 私は過去5、6年、「あと数年の内にトヨタはピークを過ぎるだろう」と予想をしてきた。現在、これが現実になる可能性が出てきている。このことは青山学院の大学院で私のクオリテイ・マネジメントのクラスや私が行った企業内での多くのセミナー、またはその他の公開のセミナーなどで公言してきたことなので、これらのクラスやセミナーに参加した数多くの方々は記憶しておられる事と思う。

 また、日産のゴーンさんがV字回復を指導して、日本中がゴーンさんの経営手腕を称賛していたころ、「ゴーンさんのやり方はもうじき行き詰まり、大幅な修正を迫られるであろう」と予測した事も、私のクラスやセミナーを受講した方達は覚えておられる事だろう。

 その後、日産では、かの有名な「コミットメント」(必達目標)は撤回された。デミング哲学をまとめたデミング14ポイントには「数値目標による管理を止める事」というのがあるが、数値目標を強いられれば、その目標を達成するためには必ず質は犠牲にされる事になる。質を犠牲にした企業が発展することは決してない。

 それでは、なぜ、私が「あと数年の内にトヨタはピークを過ぎる」と考えたのか。その理由が、今回の問題として露見してきた根源であると思われる。メディアでは、急速な規模拡大とか電子制御システムの不具合が取り上げられているが、私はその根幹にある問題を、質を中心として分析してみたい。しかし、その前に、私とトヨタのかかわりについて少々述べておきたい。

トヨタの役員の前や工場で複数回講演

 私は1965年に米国に渡り1997年に帰国するまで、その間ほとんど日本との関係はなかったのだが、1993年にデミング先生が亡くなられた時、日科技連(日本科学技術連盟)が品質管理誌でデミング追悼号を出版し私が寄稿したのが唯一のかかわりであった。

 1997年に日本の品質管理を学ぶべく早稲田大学に客員教授として1年滞在した。その時に日本の品質管理学会に入り、品質管理誌に9回連載で米国における品質管理及び、デミング・セミナーを中心とするこの方面の活動を紹介する小論文を書いた。それがトヨタの当時の高橋朗副社長の関心を引き、トヨタで講演する事になった。それから静岡県の三ケ日にある研修所でトヨタ12社の役員に対して、3回講演をし、田原工場でも講演し、98年11月には名古屋の国際会議場センチュリーホールで行われた第33回オールトヨタTQMマネジメント大会で講演をした。

 その時、トヨタ元会長の豊田章一郎氏と食事をする機会を得た。このほかにも2、3回トヨタグループには講演やセミナーを行った。その後もこの分野の人々との交流からトヨタに関する諸々の情報が入って来た。現在のこの一文はそういう情報に基づいて、書かれている。

トヨタのTQM活動はほとんど工場内だけである

 トヨタはQCサークル活動をはじめとしたTQM(Total Quality Management)が最も盛んな企業の一つで、品質改善を中心とした小集団活動はすべての工場で行われているようである。しかしながら、それはあくまで工場の製造部門が主で、間接部門ではあまり浸透せず、工場を出てからはほとんど行われていないのが実情のようだ。

コメント3件コメント/レビュー

吉田耕作教授のトヨタのピンチの分析・論評をベースにした日本企業経営(特に世界展開する巨大企業)、さらには日米関係分析まで含む素晴らしい課題提起と思います(すべての政治家も必読・参考にすべきと思います)。トヨタのピンチの本質は、‘和魂洋才’で米国デミング博士の理論を世界で最高に実現(世界の手本化)した中で、なお不徹底であった非製造部門への応用・展開およびデ‘ミング14ポイントの「数値目標による管理を止めること」’の ご指摘にあるのではないでしょうか。例えば、営業部門への応用展開があれば、利益至上主義投資銀行による最先端金融工学活用から生み出された住宅バブルを背景とする米国の過剰・異常消費に‘悪乗り’した過剰な販売製造に流れ急激な経営悪化に陥ることもなかったのではないでしょうか。ただ、デミング理論の非製造部門への展開応用は看板方式の‘発明’実践と比し結果・成果の数値化(単純費用対コスト比)がはるかに困難であるため課題或いは不徹底として残っているのではないでしょうか。(2010/03/16)

「統計学者吉田耕作教授の統計学的思考術」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

吉田耕作教授のトヨタのピンチの分析・論評をベースにした日本企業経営(特に世界展開する巨大企業)、さらには日米関係分析まで含む素晴らしい課題提起と思います(すべての政治家も必読・参考にすべきと思います)。トヨタのピンチの本質は、‘和魂洋才’で米国デミング博士の理論を世界で最高に実現(世界の手本化)した中で、なお不徹底であった非製造部門への応用・展開およびデ‘ミング14ポイントの「数値目標による管理を止めること」’の ご指摘にあるのではないでしょうか。例えば、営業部門への応用展開があれば、利益至上主義投資銀行による最先端金融工学活用から生み出された住宅バブルを背景とする米国の過剰・異常消費に‘悪乗り’した過剰な販売製造に流れ急激な経営悪化に陥ることもなかったのではないでしょうか。ただ、デミング理論の非製造部門への展開応用は看板方式の‘発明’実践と比し結果・成果の数値化(単純費用対コスト比)がはるかに困難であるため課題或いは不徹底として残っているのではないでしょうか。(2010/03/16)

申し訳ありませんが、私はこの種の論調は嫌いです。なぜなら、ピークを迎えたもの全ては、近いうちに峠を過ぎるという論は、統計学者でなくとも単なる”占い師”でも言えそうなことです。形あるもの、しかもピークにあるものはいずれは下降するのは世の常です。しかし、優れた人材が揃ってさえいれば、いずれは立ち直り成長は続きます。試乗などの機会で経験しますが、営業の現場であるトヨタ販売店の社員(特に女性社員)の車の知識や顧客に対する誠意、熱意はすばらしいものがあります。今回の種々の出来事は一過性の風邪のようなものと私は考えます。その風邪をネタにして騒ぎすぎているように見えるのは私だけでしょうか?(2010/03/16)

トヨタ主義が単なる数値目標に固執する硬直化した経営手法ではないことはわかっていたが、国際化の中で数値に捉われて経営陣に現場の真実が見えなくなっていたことも確かだろう。車は文化だとも言われる。日本の車は個性がないのが特徴だとの批判もある。しかし、万人が満足出来る品質・コストを追い求め販売台数にこだわる経営には自ずと限界があったのかもしれない。(2010/03/16)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

組織を正しい方向に導き、 作り変えていける人が、優れたリーダーです。

ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長