温暖化ガスを1990年比で25%削減する――。その目標を日本が達成できるのかどうかを論ずる前に、直視しなければならない現実がある。それは日本が環境分野で先進国どころか、欧米勢や中国勢の後塵を拝していることだ。
実態を明らかにするため、日経ビジネスでは2010年3月1日号で「環境後進国ニッポン」と題した特集を企画した。日経ビジネスオンラインでは、今まさに環境分野で起きているパラダイムシフトの現場をリポートする。
次世代電力網「スマートグリッド」の整備に総額45億ドル(約4000億円)を投資する――。米国政府が2009年に方針を打ち出して以来、米国のIT(情報技術)業界がスマートグリッド一色になっている。
マイクロソフトやグーグル、シスコシステムズなど、ソフトからハードまで多種多様なIT企業が名乗りを上げ、シリコンバレーでは人、カネ、技術がスマートグリッドになだれ込んでいる。クリーンテック(環境・エネルギー)と共に、スマートグリッドに沸く状況は、さながらバブルと形容できるような状況だ。
だからと言って、単なる一過性の「バズワード(定義が曖昧な流行語)」として捉えると、本質を見誤る。
インターネットの再来
スマートグリッドの最大の特徴は、家庭や事業所といった利用者と電力網との間で、電力を双方向にやり取りできることだ。現在の電力網は、電力会社の大規模な施設で発電した電力を、利用者に一方通行で送る。つまり、一極集中型で片方向の送電システムである。
それがスマートグリッドでは、家庭や事業所に置いた太陽光発電や風力発電など、発電量が小さく不安定な設備も電力網に接続する。つまり、家庭や事業所が電力を消費するだけでなく、電力網に供給することが可能になる。発電施設は分散化され、電力が双方向で送電システムを行き交う仕組みなので、従来型の電力網とは全く概念が異なる。
分散型で双方向の送電を実現するには、施設ごとの発電状況や電力の消費状況のデータを、ネットワーク越しにリアルタイムでやり取りする必要がある。こうして電力とデータが相互に行き交い、状況に応じて臨機応変に電力の流れが変化する。そんな「賢い電力網」が、スマートグリッドの本質だ。まさに電力網のパラダイムシフトと言っていい。米国は古くて停電も多い旧来の老朽化した送電網から、一足飛びに次世代のインフラへと移行しようとしている。
そのパラダイムシフトにシリコンバレーが沸き立つのは、インターネットの成功体験を再現できると考えているからだ。
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