「資源ウォーズの世界地図」

「資源枯渇」悲観・楽観それぞれの根拠

持続可能な文明へパラダイム転換、ここ10〜20年が正念場

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2010年3月11日(木)

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 世の中、あらゆることに関してペシミスト(悲観論者)とオプティミスト(楽観論者)がいるものだ。経済の先行き、地球温暖化、企業を取り巻く環境といった、社会全体のことから個人的なことまで常に悲観・楽観が交錯する。

 そして、両者にはそれぞれ2種類、計4種類の人がいる。
 (1)不健康なペシミスト、(2)健康なるペシミスト、(3)不健康なオプティミスト、(4)健康なるオプティミストである。

 本コラムでは、資源枯渇についての悲観論・楽観論を考えてみたい。

埋蔵量評価の時は「健康なるペシミストたれ」

 資源はいずれ枯渇してしまう、あるいは果たして枯渇するのか、枯渇するとすればいつごろかといったことについて論じるときも、4種類の人がいるわけだ。

 資源の埋蔵量について、筆者が鉱山技術者として教育を受けた時に教えられたことがある。埋蔵量を評価するときには、「健康なるペシミストたれ」ということである。

 それは、巨費を投じて鉱山を開発したけれど、埋蔵量が掘ってみたら思ったより少なかったとなれば大変だからである。したがって、楽観的評価は禁物。予想よりたくさんあれば儲けものというのがよいわけだ。これは鉱山経営というミクロ的な問題だ。しかし、地球規模のマクロの資源枯渇についても「健康なるペシミスト」が望ましい。

 資源の枯渇性について語る人の発言を聞いていると、「不健康なオプティミスト」がマクロ経済学者に多いことに気付く。

 つまり、資源枯渇の問題すなわち地球の資源が有限であるという明らかな事実を無視し、競争者間の資源配分という2次的な問題にのみ目を向けているのである。これは、経済学という学問の重大な欠陥である。

 最近ある雑誌で、経済学者の対談記事を読んでいて確信したわけである。

不健康な「技術的楽観主義」に立っている

 一部を要約すると…、
 「鉄の消費量が増えると価格が上昇するが、消費量を抑えようとする何らかの対応が出てくるはず。歴史はまさにそうなっている。需要はほかの資源にシフトする」
 「過去を振り返れば、資源枯渇の可能性は、やはり行き過ぎた懸念だ」
 「ポイントは技術。近代化が進む中国の13億人は、より先へ、より未知なるものへ、学術的にいろんなことをやっていく」
 「今の資源採掘は地殻に限られている。さらに深く掘ったり、宇宙空間に求めたりできないか。要するにコストと技術の問題」

 以上の発言を、「不健康なオプティミスト」と呼ばないで、なんと呼べばよいのだろうか。「健康なるオプティミスト」とは言いがたい。そして、どんな不都合もやがて技術が解決してくれるだろうという不健康な「技術的楽観主義」に立っているのである。

19世紀のカウボーイ経済学

 人口が10億人程度であった時代ならいざ知らず、すでに68億人になり、2050年には93億人になると予測されている時代にである。どうして成長の恐ろしさを認めようとしないのか。

 生態系や生物多様性のような、人工資本に換えられてどんどん減耗していっている人類共通の自然資本の有限性についてもまったく無視した論議。資源と環境を経済のサブシステムとしてしか考えていないとそのような議論になるわけだ。

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著者プロフィール

谷口 正次(たにぐち まさつぐ)

谷口 正次

資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。



このコラムについて

資源ウォーズの世界地図

産業を支える資源に対するリスクが高まっている。銅やアルミなどの非鉄金属はもちろん、自動車の触媒に必須なプラチナ、次世代電気自動車に使われるリチウムなどのレアメタルも、“資源メジャー”や新興国の国家戦略とも絡み始めている。これまでカネさえ出せば入手できたさまざまな産業のキーとなる鉱物資源の囲い込みが始まっている。このコラムでは、鉱山技術者として世界の現場を踏破してきた筆者が、これからの資源リスクについて解説する。

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