「武田斉紀の「よく生きるために働く」」

第8回 あなたはオンリーワンの自分に気づいていない

キャリアを業界や職種だけで判断しない

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2010年3月8日(月)

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たとえば「営業経験」というキャリアをどう見るか

 第5回のコラムでは、「あなたの替わりならいくらでもいる」という話をした。今回は「あなたのキャリアは、すでにオンリーワンですよ」という話をしたい。矛盾しているようだが、実は矛盾していない。

 自分のこととして読まれる方には、「そうか、自分のキャリアも捨てたものではないのだな」と思っていただけると思う。経営者や人事の方には、社員のキャリアをどのように生かせばいいかのヒントとなるだろうか。

 大手企業を中心に、社員の過去のキャリアをD/B(データベース)化して、人事データとして活用しようとしているところもあると聞く。だが、本当に社員のキャリアを有効活用できているだろうか。

 わかりやすい例を挙げよう。ある社員が営業経験者だとする。会社としては、彼(彼女)のキャリアをどのように認識し、D/B化しているだろうか。

 「営業」経験があるという認識(D/B)だけでは、彼を生かすことはできない。シンガポールで海外営業を3年経験していたとすれば、国名と年数、職種くらいはD/Bに登録されているだろうか。

 彼の営業キャリアを生かしたいのは、本人にとっても人事部や経営にとっても、次なる人事においての話だ。たとえば経営の意向を受けて、かつて経験したことのない新しい分野での新規事業立ち上げメンバーを社内で探したいとする。その際に彼のキャリアへの認識(D/B化)が生かせなければ意味がない。

 「営業」「シンガポール」「3年」という情報だけで、彼が適任かどうかを判断できるだろうか。

 一人ひとりの職務経歴と働きぶりの評価書類を、一枚一枚繰りながら探していった方が、よほど適任者は見つかるだろう。もっと早いのは、各部署のメンバーの力をよく知るトップに、「こんな経験者はいませんか」と聞くことだ。

 優秀な部下を人事に出されたくないので、部署トップは適任者がいても教えないかもしれないが、その懸念は別の形で阻止することができる(機会があればまたお話ししたい)。

 社員が把握できない人数になると、会社として人事としては、どうしてもデータとして管理したくなる。だがそれは、一人ひとりに経験させたせっかくのキャリアを見えなくしている可能性も高い。高いお金と時間をかけて人事D/Bを作ることに意味がないとは言わないが、もったいないと思う。

 個人のキャリアをどう認識するかという点では、採用時も同じである。先ほどの人事D/Bのような面接をしている担当者はいらっしゃらないとは思うが、スペックだけで判断していては本当の適任者を見逃すことになる。

キャリアは一人ひとり異なるから面白い

 私は過去に、1万人以上の「人生理念の整理」に関わらせていただいた。最近は企業理念コンサルティングという仕事柄、経営者の「人生理念の整理」をお手伝いすることが多い。その昔、転職相談などのキャリアカウンセリングまでしていた時代は、その方の「人生理念の整理」に、その方のキャリアを組み合わせて次のステップをアドバイスしていた。

 「転職を考えているのですが、武田さんに相談してもいいですか」。私の経験を知る友人から、まじめなキャリア相談を持ちかけられることも少なくない。

 私が彼(彼女)に最初に求めるのは、職務経歴書を書いてもらうこと。これまで経験してきた仕事を客観的に見直すいい機会となる。「転職こそがステップアップ」と考えたり、しょっちゅう転職をしている人を除けば、日本人は普段こうした作業をしていない。

 私が数多くの職務経歴書を見ながら、実際に本人のキャリアをじっくり聞いて一番に感じることは、「ほとんどの人は、自分自身のキャリアの魅力について、実はよくわかっていない」ということだ。

 実際、素晴らしいキャリアをお持ちの方が多い。特別なキャリアを持っている人では必ずしもない。「私は営業しか知らなくて・・・」あるいは「経理畑一筋です」という人のキャリアを掘り下げて聞いていけばいくほど、私は毎回ある真実に突き当たる。

 「キャリアは一人ひとり異なる」ということ。そして「一人のキャリアの生かせる先は一つではない」ということだ。

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著者プロフィール

武田 斉紀(たけだ・よしのり)
企業理念コンサルタント
ブライトサイド コーポレーション代表取締役社長

武田 斉紀1986年東京大学卒、同年リクルート入社。人事部を経てHR事業部へ。大手から中小まであらゆる規模、あらゆる業種の企業を対象に、採用・組織作りやブランド構築を支援する。全社表彰、MVPほか各賞を受賞。その後マーケティングの新規事業立ち上げに参画、軌道に乗せて2002年に退職。期間限定でベンチャーの立ち上げに参画した後、2003年9月に企業理念の共有浸透を専門とするコンサルティング会社、ブライトサイド コーポレーション(正式名称ブライトサイド株式会社)を設立、現在に至る。
日本一のコピーライター集団「TCC(東京コピーライターズクラブ)」会員。
著書『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(PHP研究所)、『新スペシャリストになろう!』(PHP研究所、海外でも発売)、『行きたくなる会社のつくり方』(Nanaブックス)。
全国で講演多数/一般企業、経営者交流会、官公庁、都道府県などの自治体、学校。
ホームページ:http://www.brightside.co.jp/
■過去のコラム
「社長の話がわかりやすい会社は伸びる」
「武田斉紀の「企業理念は会社のマニフェスト」」
「武田斉紀の「よく生きるために働く」」
「武田斉紀の「行きたくなる会社のつくり方」」



このコラムについて

武田斉紀の「よく生きるために働く」

今回のシリーズ『よく生きるために働く』は、社長も部長も課長もメンバーも関係なく、すべての働く人にとっての大切なテーマではないかと思う。
一人の大人として、社会人としては“義務だから働く、生活のために働く”のは言うまでもない。だがそれだけで、人は大人人生の半分以上を占める仕事の時間を幸せに過ごせるだろうか。
働く目的や意義を考えることは、人の集合体である会社を元気にする、元気を保つ上でも欠かせない。「働く目的や意義を同じくする人たちと一緒に働ければ、人はもっと幸せに働ける。人生をよく生きる、幸せに過ごすことができる」からだ。
このコラムシリーズが、読者のみなさんにとっての働く目的や意義を改めて考え、“よく生きる”ためのきっかけになりますように。
前回シリーズ「企業理念は会社のマニフェスト
前々回シリーズ「社長の話がわかりやすい会社はのびる

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