「ソニーのジレンマ」

「映画」「音楽」持つ強みを発揮

アップルにもサムスンにもないモデルを創る

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2010年3月10日(水)

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 「なぜエレクトロニクス企業がコンテンツを持っているのか」。ソニーの経営を語るときに、常に挙げられる疑問の1つだ。かつて東芝やパナソニックといった電機メーカーは、かつていずれも音楽や映画などのコンテンツ事業会社を傘下に収めていた。だが、企業文化の違いや経営の難しさなどから、映画や音楽事業を次々と切り離していった。

 気がつけば、コンテンツとエレクトロニクスを事業に持つ大手企業は世界でソニーだけとなった。「インターネット時代こそ、両事業の相乗効果を発揮できる」というソニーの信念が正しかったかどうかが試される時がやってきた。

 最終回に登場するのはソニーのコンテンツ事業のトップ2人。ソニー・ピクチャーズエンタテインメントのマイケル・リントンCEO(最高経営責任者)。そして国内音楽事業を率いるソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)の北川直樹コーポレイト・エグゼクティブCEOだ。


(聞き手は広岡 延隆=日経ビジネス記者)

映画があるから迅速なプロモーションができる
――ソニー・ピクチャーズエンタテインメント マイケル・リントン会長兼CEO(最高経営責任者)

 ―― ソニーは今やエレクトロニクス事業とサービス、コンテンツを持った唯一の大手企業です。米アップルとも韓国サムスン電子とも異なるユニークな事業形態には、どんなメリットがあるのでしょうか。

マイケル・リントン氏
1982年クレディ・スイス・ファースト・ボストン入社。米ウォルト・ディズニー・カンパニー映画製作部門のハリウッド・ピクチャーズ社長、英ピアソンPLCのペンギングループ会長兼CEO、米タイム・ワーナー・インターナショナル社長、AOLインターナショナル社長、AOLヨーロッパCEOなどを経て2004年から現職
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 リントン まず重要なのは、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)がソニーグループの一員としての責任をきちんと果たすことです。映画スタジオとして予算数字を達成して、収益に貢献します。

 ソニーのエレクトロニクス事業にとっては、SPEの映画を製品プロモーションやマーケティングに自在に活用できます。もしグループ内で映画事業や音楽事業などを手がけていなかったとしましょう。その場合、コンテンツを持つ企業と個別に交渉することになります。契約を交わすのに時間を費やした挙句、契約金を支払う必要も出てきます。

 ですが、ソニーにはグループ内で映画事業や音楽事業を手がけています。ですからハワード・ストリンガー会長兼社長が、事業会社に電話1本かければすむのです。これはエレクトロニクスで競合する企業に対して、大きなアドバンテージになります。

テレビ向けに映画を先行配信

 ―― それが具体的に効果を発揮した事例を教えてください。

 リントン 2009年秋に液晶テレビ「ブラビア」の新製品を発売した時は、当社の映画「くもりときどきミートボール」が販促に役立ちました。ブラビアのインターネット接続機能を使って、映画をブラビア向けに先行配信したのです。

 近く始まるソニーグループのコンテンツ配信事業「ソニーオンラインサービス」に対しても、同様にコンテンツ供給で協力します。ゲーム機「プレイステーション3」を発売した時や、「ブルーレイ・ディスク(BD)」が新世代DVDの規格争いで勝利するのにもSPEの映画が貢献しました。

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著者プロフィール

広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)

日経ビジネス記者。



このコラムについて

ソニーのジレンマ

2009年3月期に巨額赤字に陥ったソニーの業績が回復傾向にある。工場閉鎖や人員削減などの構造改革が奏功しているからだ。今年からは3D(3次元)液晶テレビや、映画やゲーム、音楽といった他社にない豊富なコンテンツ資源を活かした総合オンラインサービスも展開する。攻めに転じるソニーは完全復活を果たすことができるのか――。今後の成長戦略を託されたソニーの経営陣に、その狙いと勝算を聞く。

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