「購買行動を創造する「通販のヒミツ」」

「買う」ではなく、「ねだる」という販路

財布の紐を握っているのは誰でしょう?

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2010年3月12日(金)

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 「ふーーっ」。ワイングラスを目の前に眉をひそめている榊理恵。「どうしたの? ため息なんかついちゃって」「いつもなら、お店に入るなり、気になる通販のネタを話し出して止まらないのに」。中津川あや、藤野香織も心配そうに声をかける。この3人は、各々が通販企業に勤め、通販ビジネスについて議論する仲だ。

 「あ、あのねー、聞いてくれる? きっと2人はそっち方面に詳しいと思うから・・・」。いつもと違う、はにかんだ顔の理恵。「実は・・・気になる人ができて、バレンタインのチョコ、なんてものを先月あげたんだよね。もうすぐホワイトデーでしょ? どうなるかな〜と思って」。

 「えええ〜っ!! よかったじゃない! で、どんな人?!」。興味津々ですっかりノリノリの2人。「それがねー、その人、ホワイトデーとか、お返し、とかほとんど気にしなそうなタイプなんだよね。どうなるのかなあ・・・」。励ますように、あやが理恵の背中をドン!と叩いた。「任せなさい! 相手にその気があろうがなかろうが(?!)、プレゼントしたくなる通販サイトがあるのよ!」。

 女性下着メーカーの大手であり、業界2位のマーケットシェアを誇るドイツ系下着メーカー、トリンプ・インターナショナル・ジャパン(東京都大田区)。着け心地を追求した「恋するブラ」、健康維持の観点から下着を考えた「骨盤のきもち」など、女性の隠れたニーズを衝いた個性的な商品展開で注目を集めています。

成功率79%のマジック

 20近くある商品ブランドの中で、ウェブ限定ブランドの「desire(デジール)」のサイトに搭載されているのが「おねだり機能」。これは、女性が欲しいと思う商品を自分で買うことなく、彼に「おねだり」をして、彼に買ってもらうことができる、というもの。

 まずは、具体的に購入の手順を見ていきましょう。

トリンプ・インターナショナル・ジャパンの女性向け下着販売サイト「desire(デジール)」のトップページ。「おねだり機能」の仕組みが成功率とともに示されている。
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カートの中を確認しつつ、「おねだり相手の情報」を入力。サイズを相手に知らせない設定が可能、という細かい気遣いも。
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おねだりしたい相手にメールが届く。そこに表示されているリンクをクリックすると購買画面に。有効期限は1週間。
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 ウェブページには「おねだり成功率79%」と謳われ、ギリギリのところでおねだりを迷う女性たちを後押ししています。

 一般的に、自分の欲しいものを誰かに買ってもらう、ということはなかなかうまくいかないもの。ですが、この場合は女性側がその商品を欲しい、という気持ちと、男性側の「今後」への期待の高さ、といったようなもの――つまり、双方のメリットが合致した結果と考えられます。

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著者プロフィール

藤野 香織(ふじの・かおり)

大学卒業後、大手量販店に入社。食器、キッチン用品、寝具、インテリア、玩具など住居関連の売り場責任者とバイヤーを経験。現在はカタログ・ネット通販企業に所属する現役バイヤー。著書は『製造業・小売業のバイヤーが教えるThe調達・仕入れの基本帳77』(日刊工業新聞社)、『ヒットする! PB商品 企画・開発・販売のしくみ』(同文舘出版)。

榊 理恵(さかき・りえ)

新卒で通信教育業界に入ったのを皮切りに、企画制作、販促、マーケティングなどと立場と会社を変えながら「通販」に十数年間、携わり続ける。

中津川 あや(なかつがわ・あや)

大学卒業後ネット通販企業に入社。コールセンターのスーパーバイザーとして、長らくクレーム対応に携わる。その後、バイヤー、データ分析など様々な業務に携わって今に至る。



このコラムについて

購買行動を創造する「通販のヒミツ」

モノあふれで生活する満ち足りた消費者に、どう購買意欲をわき立たせるかは、小売業にとって共通の課題だ。リアル店舗を持たない通販ビジネスでは、“見えない消費者”の心をつかむ絶え間ない努力や工夫が必要になってくる。通販ビジネスを解き明かすことは、消費者の購買行動を赤裸々にすることにほかならない。

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