「「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」」

第23話「購買部長が変わったとたん、この会社は変わりました」

バックナンバー

2010年3月10日(水)

1/4ページ

印刷ページ

これまでのあらすじ

 日野原工業の社長になった団達也と、取締役経理部長になった細谷真理は、会社のことを徹底的に勉強した。

 真理はその過程で、日野原工業が堅実な会社だったことを知り、意外な思いを抱いた。創業者である日野原五郎が、当時の経理部長の間宮清二と共謀して架空取引などによって粉飾を繰り返し、利益を水増ししていたことを知っていたからだ。

 日野原五郎の息子の太郎は、「これほど管理会計を使いこなしている会社はない」と真理に語った。

 一方、達也は会社の経営に欠かせない人材であるエンジニアの金子順平を取り戻すために、上海にいるUEPC社のリンダに電話を掛けた。リンダは交換条件を付けた上で、達也に力を貸すことに同意した。

日野原工業経理部

 この会社は予算管理を完璧にこなしてきた。そのことだけで、真理は日野原工業に対する見方が大きく変わった。真理はわくわくしながら太郎に質問した。

 「ほかにどのような管理会計の仕組みが動いているんですか」
 すると太郎は意外なことを口にした。

 「それだけですよ」
 「それだけ…。損益予算だけでも、売上予算も、材料の購入予算だってありますよね。それに、製品も標準原価以内で作らなくてはなりません。ほかに、ミニプロフィットセンターとか、アメーバ会計とか入れていないんですか?」

 太郎はきょとんとした表情で答えた。
 「それって何でしょうか。私は技術屋ですから経理のことは分かりません。父も同じだと思います。経理部長だった間宮もいわゆる金庫番で、難しい会計理論は知らなかったと思います。会計士の今川先生の言う通りにしてきただけです」

 「今川先生ですか…」
 「入るを図って出ずるを制する、です」

 これは中国の古典「礼記」に書かれた言葉で、どれだけ収入があるかを慎重に見積もり、支出をその範囲内に収めるようにしなさい、という意味だ。「入る」を売上予算、「出ずる」を費用予算に置き換えれば分かりやすい。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。


関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦めで中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。達也は、当時専務の間中隆三らによる不正が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、間中らを追放した。
 経理部長になった達也は、ジェピーCFOとして会社の再建に着手した。その直後から隠れ負債が発覚し、工場には仕掛かり在庫の山。資金繰りに窮したジェピーは、銀行からも見放され倒産寸前だった。
 ジェピーを救ったのは、かつての級友、ジェームス。ジェピーは、同じく級友のリンダが勤めるアメリカの大手電子部品会社UEPCの傘下に入って新たな道を歩み出した。
 創業者未亡人の大株主、財部ふみの遺言で達也の手にはジェピーの株式が渡ることになったが、達也はそれを手放し、自分の手で会社を立ち上げようと決心した――。
 管理会計が専門の現役会計士である著者による、“読む管理会計”シリーズの第3弾。ストーリーを追いながら、経営に役立つ管理会計の最新の理念と実践的な知識が身につきます。
第一シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」
第二シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内