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新卒“一括”採用は、やめられない?

敗者復活を阻む、私たちの価値観

2010年3月11日(木)

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 “新卒一括採用信仰”なるものが、高校生にまで影響を及ぼしているらしい。

 先日、高校3年生のA子さんから進路に関する相談を受けた。彼女は大学3年生の時に海外の大学と半年間の交換留学プログラムのある某大学を第1志望にしようとしたところ、担任の先生から、「3年生のときに留学していては、就職活動に支障がでる。もっと就職に力を入れている他の4年制大学に進んだほうがいい。就活が遅くなればなるほど、大変な思いをする」と言われたそうだ。

 数年前から、「就職まで責任をもって面倒をみて、いい就職先を斡旋する」ことを“売り”にする大学も増えてきた。その背景には、少子化の影響がある。それに加えて、バブル崩壊後の就職氷河期に始まり一昨年のリーマンショックと、世の中の経済状況の影響をもろに受ける新卒一括採用に対して学生や親御さんたちが抱く不安感を逆手にとった、大学側の生き残りをかけた営業方針も見え隠れする。

 厚生労働省と文部科学省の共同調査によると、2010年3月大学卒業予定者の就職内定率は62.5%(2009年10月1日時点)で、これは“就職氷河期”と言われた2003年の60.2%、2004年の61.3%に次ぐ低い水準だった(関連記事「会社はヒマつぶし?」)。また、日本経済新聞社が独自に実施した主要企業の2010年度採用状況調査(10月1日時点)では、大卒の採用内定者数が2009年春入社実績に比べて28.6%も低下。つい先日も、企業の47.5%が2010年度に正社員の採用を予定していないという報道や、大卒求人を採用途中で撤回する企業が相次いでいるとの報道があり、新卒社会人の就職戦線に明るい話題がない。

 こういった状況をうけ、学生側は例年にも増して就活への不安感を増幅させている。

 11月中旬時点で企業に「エントリーした」学生は全体の95%で、1人当たりの平均エントリー社数は44.3社。これは前年同期の33.5社と比べ10社以上も多く、就活に早くから取り組む傾向が認められている(2011年3月卒業予定者対象・ディスコ調べ)。さらに、2年生のときからセミナーに参加する“就活予備軍”も現れている。

 学生の間には「受かる秘訣」マニュアルなるものも存在する。どんな仕事が世の中にあって、自分がどんな仕事をやってみたくて、どんな世界で自分の可能性に懸けてみたいか、などとキャリア意識を高めるのではなく、とにかく就活で失敗しないようにとテクニック磨きにプライオリティーをおく学生が急増しているという。

“ハローワーク”化する大学、“始発電車”を目指す学生

 私たちの時代にも、将来を見据えて進学を決める傾向はあった。だが、今や大学は就職するための“予備校”だ。学問の場であるはずの大学は、もはや“ハローワーク”化しているのだ。

 新卒発の始発電車に乗れないと、二度といい電車には乗れない、といった曖昧な不安感。電車の行き先が本当に“しあわせ行き”かどうか確かめることもなく、「いい電車に乗るためには、早くからなるべくいいポジションにいた方がいいでしょう」とばかりに、“受験戦争”も過熱する。すべては、新卒一括採用という“一発勝負”への恐怖感。「早いうちから、前に前に、少しでもいい場所に陣取らなきゃ、苦労するよ!」。そんな目に見えない重圧が、大学生ばかりか高校生にまでのしかかっている。

 そもそも新卒一括採用は、終身雇用とセットで「日本的雇用慣行」を支えてきた制度。終身雇用が崩壊した今、新卒一括採用だけが残っているというのも妙な話だ。終身雇用をやめるのであれば、企業は通年採用を選択すべきだし、新卒一括採用にするのなら終身雇用を貫けばいい。

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「新卒“一括”採用は、やめられない?」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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