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彼女は追いつめられ、“命”を削るまで働いた

過労死だけでなく、過労自殺まで招く職場

2010年3月18日(木)

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 「お父さん眠れてる?」
 そう聞かれて、あなたなら何と答えるだろうか。

 今月は、内閣府が取り組んでいる「自殺対策100プラン」のひとつである「自殺対策強化月間」。新橋の駅前でサラリーマンに、「お父さん眠れてる?」と書かれたチラシ入りのティッシュを配る福島瑞穂内閣府特命担当大臣の映像をニュース番組などで見た人も多かったことだろう。

 「眠れてますか?」
 「いやぁ、最近寝つきが悪くて…」
 「何か心配ごとがあるんですか?」
 「まぁ、いろいろとね……」
 「ひとりで考え込まないで、相談してください。24時間受け付けています。もし、資金繰りに関する相談でしたら、債務相談ダイヤルもありますから、かけてくださいね」

 「眠れてますか?」というフレーズは、自殺者の多くがうつ病を事前に発症し、眠れないことがうつのサインであることから考えられた。

 眠れないときには、うつ病の疑いを。
 眠れないほど悩んでいるときには、相談を。
 そんな思いを込めて、政府はこんなキャンペーンを行っているのだろう。

 悪くない…。率直な意見である。

 「悩んでいますか?」だと、夕飯何を食べるかを悩んでいても、「はい」になってしまうし、「大切にしよう。あなたの命」なんて言われたところで、追い詰められている人には釈迦に説法。「人間辞めますか? 覚せい剤やめますか?」なんかに比べると百倍いい。

 ただ、どんなに「眠れてますか?」と聞かれたところで、自殺対策の意味を持たないケースが存在する。

数字には反映されない“過労自殺”

 「お父さん眠れてますか?」と聞かれれば、
 「いやぁ、なかなか満足いく睡眠時間がとれないね」と答え、
 「何か、心配ごとあるんですか?」と心配されても、
 「一つひとつ解決していくしかないから、がんばってますよ!」と答える責任感の強い人。

 眠りたくとも、眠る時間すらとれない長時間労働に喘いでいる“過労自殺”予備軍の人たちである。

 年間少なくとも1000人以上の人が、仕事上のことが原因で自殺している。過労自殺のほとんどは、長時間労働と密接に関連し、過労死と同様、ここ数年、問題は深刻化している。

 つい先日も「NECの元技術部長の男性(当時52歳)の過労自殺が認められた。「男性は仕事の心理的負担と長時間の時間外労働でうつ病を発症し、自殺した」とし、労災を認めなかった労働基準監督署の処分を取り消し、労災と認定する判決が下っている。

 ソフトウエア開発関連部署の部長だったこの男性は、うつ病を発症し、2000年2月、「万策尽きました。会社へ 責任をとります」との遺書を残し自殺した。

 報道によると、旧防衛庁調達実施本部の背任事件(1998年)の影響で99年3月期、約2200億円の赤字を計上したNECは当時、収益の見込めない部署を整理する方針だったという。男性の部署は検討対象とされ、判決は「責任者だった男性に、うつ病を発症するほど重い心理的負荷を与えた。(残業時間が月平均約100時間を超え)極度の長時間労働だった」と指摘している。

 判決では、発症前の8カ月間の時間外労働が毎月100時間前後に達していたと認定し、同社が経営危機を乗り切るために収益性重視を強める中で、男性の担当事業が目標を達成できなかったことが心理的負担を与えたと判断している。

 過労自殺に詳しい川人博弁護士によれば、会社側には「ほかにも似たような環境の中で働いている人はいる。個人の資質だ」とばかりに自殺を“個人の問題”として片付ける傾向があるという。加えて、自殺した人たちのほとんどが、「会社に迷惑をかけて申し訳ない」「期待に応えられず、すみません」といった遺書を会社や上司に残すことが多いため、それを逆手にとった企業が責任を回避するのだという。

コメント29

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「彼女は追いつめられ、“命”を削るまで働いた」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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